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リスニングの「音の聞き取り」を鍛える方法【英語の耳づくり】

リーディング リスニング

Illustration by Pablo Marquez from Ouch!

リスニング中、、、

  • 英語の音がうまく聞き取れない…
  • 音がわからないので、どんな単語が話されているのかも掴めない…
  • どうやったら音が聞けるようになるのか、その訓練法を知りたい。

今回はこのような疑問に答えます。
いろいろと重要なポイントがありますので、詳しく見ていきましょう。

本記事の内容

  • リスニングの音の聞き取りを克服する方法【まずは基本方針から】
  • リスニングの音の聞き取りを克服する方法【具体的な訓練法とは】

リスニングの音の聞き取りを克服する方法【まずは基本方針から】

まずは学習にあたり、大枠の方針から見ていきましょう。
音の聞き取りを訓練していくには、以下を押さえることがポイントです。

  • ポイント①:音が聞き取れる = 英語の音を覚えること
  • ポイント②:発音の知識を用いて音を分析すること
  • ポイント③:音をよく聴き、自分でもそっくりマネすること
  • ポイント④:反復練習を基本とすること
  • ポイント⑤:「単語レベルの音」+「文レベルの音」の両方を鍛えること

順に見ていきましょう。

ポイント①:音が聞き取れる = 英語の音を覚えること

まず、「そもそもなぜ音が聞き取れないのか?」ということですが、以下が根本的な原因として考えられます。

「自分が記憶している音」と「実際に聞こえてくる英語の音」に違いやズレがある。

上記の通りです。

やはり「自分が知らない音」「自分の想定にはない音」というのは、いざそれを耳にしてもすぐにピンと来なかったり、雑音としてスルーしやすいものです。

ズレの具体例

個々の子音・母音から、一単語を超えたものまでいろいろなレベルが考えられますが、たとえば以下のようなものです。

  • 本来 right( / r / ) や thought ( / θ / )は日本語の「ラ」や「ソ」とは違う音。
  • しかし、両方とも「ラ」や「ソ」のように覚えてしまっている。
  • 本来 spring は1個しか母音がない語( i の部分のみ)。
  • しかし、s, p, g の直後にも余分な「ウ」をつけて覚えてしまっている。
  • 本来 flood は / flˈʌd / で発音される語(フラドに近い音)。
  • しかし、ローマ字読みで「フロード」のように覚えてしまっている。
  • 本来 will は弱形でボソッと発音( / wəl /, / əl / など)されることがほとんど。
  • しかし、強い発音( / wíl / )だけで覚えてしまっている。
  • apartment の2つの t はよく破裂されないことがある(アパーッメンッのような音になる)。
  • しかし、t がきちんと発音される音だけで覚えてしまっている。
  • list of items は「リストヴァイテムズ」のように音がつながることが多い。
  • しかし、「リスト オヴ アイテムズ」と1語ずつ区切った発音だけで覚えてしまっている。
  • 例えば上記です。

    実際には、どれか1つというより、複数の要因が絡むことで、全体として聞き取りが困難になる場合が多くなります。

    このようなズレが多いほど、いざ英語の生の音を聞いても、自分が想定している音の印象とかけ離れてしまい、どの語が話されているのかをとっさに判断しずらくなってしまいます。

    こういったズレを少しでも埋めてくことが大切です。

    発想の転換が大切

    ただし、普段何気なく英語の音を聞いていると、「いま自分が覚えている音が違っている」という意識は持ちずらいものです。

    人は自分がすでに慣れているものを「当たり前」と感じてしまいがちです。
    どうしてもそのフィルターを通してしか、外からの刺激を感じられないものです。

    そういった状況を脱するには、いま覚えている音(自分がスタンダードとしている音)が本当に正しいものかを問いつつ、英語の音を「新しく覚え直していく」というくらいの意識で取り組んでいくことが大切です。

    このように、新たな英語の音のデータベースを頭の中につくりあげていくことが、音の聞き取りを克服するための鍵になります。

    ただ、まだ自分が知らない音なんて、どのようにすれば認識できるようになるのでしょうか?

    ポイント②:発音の知識を用いて音を分析する

    そこで、発音の知識も使いつつ分析して、具体的に音を特定して行くようにします。

    「発音の知識」とは、例えば以下のようなものです。

    上記の通りです。

    感覚的に聞いているだけではわかりにくいので、このような知識も手がかりに「今耳にした音がどのような音で発されたものなのか?」を具体的に特定していきます。

    つまり、それが「新しく覚える音」になります。

    分析を通じて、まずは「自分が身につけるべき音」を明確にしていきましょう。

    ではそれが明確になったとして、どのような方法でそれを自分のもにして行けばいいのでしょうか?

    ポイント③:音をよく聴き、自分でもそっくりマネできるように

    分析した音を「自分の口でも同じように言える」ように練習して行きます。

    「自分の口から出せる音は、耳で聞いてもわかる」というのは何となくイメージできると思いますが、それを目指していきましょう。[1]

    • 分析して正しい音を特定したら、モデルスピーカーがどのように発音しているかを、あらためてよく耳で確認するようにしましょう。
    • その上で、自分でもそっくりマネして言えるように練習していきます。

    「しっかり聴く → そっくりマネする」ということを繰り返すことで、英語の音を少しずつ頭に刷り込んでいきましょう。

    音のすり替えに注意

    ですが、特にはじめは、マネしようとしても「自己流の発音で言ってしまう」ということが少なくありません。

    たとえば 、先ほどあげた apartment という語があります。
    この語は、もともと子音 / t / の音が2つ含まれている語です。

    ただ実際の会話では、この / t / を「トゥッ」と破裂せずに発音されることがよくあります。
    (あえてカタカナで表すとすれば、「アパーッメンッ」のような音になります。)

    ですが、この語を / t / を含む正式な発音のみで覚えている場合、耳から「アパーッメンッ」のような音が入ってきたとしても、とっさに / t / をともなう発音に脳内ですり替えてしまうことがあります。

    こういった「すり替え」が起きやすくなります。

    このように、自分のもともとの発音に引っ張られてしまうと、apartment という語についての新しい音声知識が蓄積されていきません。

    できるだけ「聞いたまま」を言う意識で

    そこで、音をしっかり聴いたら、それを「そのまま言う」ことが肝心です。

    apartment で言えば、/ t / が破裂しないことで生じる一瞬の間(マ)も意識的に聴き取るようにし、それを自分でもマネしていくようにします。

    このようにして、apartment という語と「アパーッメンッ」という音をリンクさせつつ、頭に刷り込んでいくようにします。

    もし難しいようであれば、モデル音を反復して再生し、聴くことだけ(図中の①と②だけ)に集中的に取り組むのも有効です。まずは聞いた音のイメージをしっかり頭に焼きつけましょう。

    その上で自分でも言う(③)ことで、正しい音を覚えられるようにしましょう。

    他の例

    apartment 以外にも、いろいろな音で上記のようなすり替えは起こり得ます。

    たとえば、will が弱形( / wəl /, / əl / など)で聞こえてきているのにアクセントを置いて / wíl / と強く言ってしまったり、list of items が実際はつながって発音されているのに「リスト オヴ アイテムズ」と一語ずつ区切って言ってしまったりしてしまいます。

    そういったものもやはり「聞こえたままを言う」ことが大切です。

    ポイント④:反復練習を基本とすること

    マネの精度を上げつつ、あとは場数です。

    やはり実際のリスニングでスピードについて行くには、音を耳にした瞬間に知覚し、今何の語を言ったのかを認識できる必要があります。

    しかも、基本はリスニングの「内容」の方に集中する必要があります。
    音について「今なんて言ったんだろう?」などと、立ち止まって考えている暇はありません。

    音については「頭で意識的に考えずとも、自動的に処理できる状態」をつくる必要があります。

    そのために「反復」が重要です。

    やはり1回や2回繰り返しただけでは、今まで馴染みのなかった音が自分のものにはなっていきません。

    その都度、繰り返し耳にし、自分でも発音していく必要があります。
    ある程度の期間もかかるでしょう。

    それでも、何度も繰り返して練習していると、徐々に新しい音が頭に定着していきます。

    はじめは馴染みのなかった英語の音
     ↓
    反復練習
     ↓
    それが自分にとっての「当たり前」の音になる

    あらゆる音で上記のような状況がつくれれば、リスニングでも瞬時に音の知覚ができ、頭で考えなくても音や語の認識ができるようになっていきます。

    「考えなくても」というのが大切です。
    そんな状況を目指して、繰り返し練習していきましょう。

    ポイント⑤:「単語レベルの音」+「文レベルの音」の両方を鍛えること

    元をたどれば、英文は1つ1つの単語で構成されています。
    そのため、「それぞれの単語について、正しい音を覚える」というのは大切なことです。

    たとえば、flood という語を 「フロード」のように不正確な発音で覚えていた場合、いざ / flˈʌd / という正しい音を耳にしたとしても、その音の印象の違いから flood「洪水」のことだと瞬時に理解しずらくなることが考えられます。

    それぞれの単語について、こういったズレを無くしていくことが大切です。

    • 子音
    • 母音
    • アクセントが置かれる位置

    これらに注目しながら、その語本来の正しい発音を身につけていくようにします。

    ただ、重要なのは単語レベルの音だけではありません。

    「文レベルの音」も重要

    リスニングで聞くのは、語の「つらなり」です。
    そういったつらなり全体で表される音の特徴もあります。

    たとえば以下です。

    • リズム:文全体で表される「音の強弱パターン」
    • 音声変化:上記にともない、それぞれの単語が省エネで発音されることで生じる「音の変化」
    • イントネーション:文全体をとおして表される「音の高低」

    人はリスニングをするとき、このような文レベルで表されるマクロな音の特徴にも頼りながら聞いています。聞き取りの明瞭度に大きく影響する部分です。

    逆にいうと、いくら1つ1つの単語や子音・母音を、それ単体で聞き取れるようにしたとしても、それだけでは限界があるということです。

    英語の音を聞き取れるようにして行くにあたっては、単語レベル(ミクロ)と文レベル(マクロ)の両面から、バランスよく鍛えていくことが大切です。

    まとめ:音の聞き取れるようにするためのポイント(再掲)

    • ①:音が聞き取れる = 英語の音を覚えること
    • ②:発音の知識を用いて音を分析すること
    • ③:音をよく聴き、自分でもそっくりマネすること
    • ④:反復練習を基本とすること
    • ⑤:「単語レベルの音」+「文レベルの音」の両方を鍛えること

    これらを基本にしつつ、学習を進めていきましょう。

    では次に、その具体的な方法を見ていきたいと思います。

    ポイント⑤で見た「単語レベル」と「文レベル」の2つに分け、それぞれの学習法を整理していきます。

    リスニングの音の聞き取りを克服する訓練法【単語レベル編】


    まずは普段の学習で、それぞれの単語の正しい音を覚えていくように心がけましょう。
    より具体的には以下の2つを行なっていきます。

    • その①:辞書を引くときは必ず発音もチェック
    • その②:各単語の意味を「音から」答えられるようにする

    その①:辞書を引くときは必ず発音もチェック

    単語を調べる時の一手間ですが、これがとても大切です。
    辞書を引いたら、合わせて発音も調べるようにし、自分で発音もするようにしましょう。

    その際「発音記号(IPA)」も活用しましょう。

    だいたいの辞書で、単語を引けば発音記号も知ることができます。

    たとえば、以下は weblio で flood を引いた例です。

    / flˈʌd / と載っています。
    まず / ˈ / はアクセントを表します。

    特に母音の / ʌ / の部分ですが、これはアに近い音です。そのため flood をローマ字読みで「フロード」のようにしては間違いということがわかります。

    (他にも、spring は / spríŋ / という発音ですが、/ s /, / p / , / ŋ / の後ろには日本語のウにあたるような母音がありません。なので、そういった余分な母音を入れてこの単語を発音すると間違いということもわかります。)

    音も聴いて確認しましょう。

    またこちらのネット辞書では、隣のスピーカーマークを押すと音が再生され、実際に発音を聞くこともできます。

    こちらも参考にしつつ、自分でそっくりマネできるよう練習していきましょう。
    特に間違えて覚えてしまっていた所については、注意深く行なっていきます。

    「再生を聴く → マネする → 再生を聴く → マネする → …」

    上記のように何度か繰り返し、モデル音と自分の発音が一致するように微調整しながら、正しい音を記憶していきましょう。

    発音記号(IPA)を学べるサイト

    なお、発音記号をあまり詳しくない人は、以下のサイトが参考になります。

    各子音と母音について発音の解説があり、実際に音を聞くこともできるので便利です。

    こちらも、モデルの音声を聞きつつ、自分でもマネしていくようにします。
    モデル音と自分の発音が近づくように、声を出しつつ練習していきましょう。

    音の練習 = 自分の口や舌の動きや、音を発見すること

    以上のように「音の擦り合わせ」をしながら、各子音や母音、単語の音を覚えていきます。

    練習をしていると、日本語をしゃべっているときにはやったことがない口や舌の動きや、これまでまったく意識してこなかった音に出会うこともあるでしょう。
    「えっ!こんな音で言ってたの?」などと驚くものもあるかもしれません。

    たとえば、子音の / r / は日本語の「ラリルレロ」と違ってより喉の奥から出る深い音だったり、/ θ / は空気がすれてつくられる何とも輪郭のハッキリしない音であることに気づいたりします。

    ですがそういった発見が、新たに音を覚える第一歩です。

    ある口や舌の形をしたときに、どんな音色が出てくるのかを自分の耳で確かめていきましょう。

    その②:各単語の意味を「音から」答えられるようにする

    これは、主に単語学習をしているときの訓練です。

    普段、単語帳で学習をしているときは、「英単語を文字で見る → 意味を想起する」といった文字をベースとしたパターンが多いかと思います。

    もちろんこれ自体はあっていい方法です。

    ただ「音を聞く」ことをどこにも挟んでいないため、もし不正確な音で単語を覚えていたとしても、それが修正されることはありません。
    間違った音と単語を結びつけたまま、頭にストックすることになってしまいます。

    このままでは、「文字だとわかるのに、音で聞くとどの単語かわからない…」という問題が解消されません。

    「音を聞く → 意味を答える」という学習も取り入れてみましょう。

    CDがついている単語帳を使えば、各単語の発音を聞くことができます。
    また最近では、スマホアプリの単語帳で、単語の発音を読み上げてくれるものも多いと思います。

    そういったものを利用しながら、各単語について「英単語の音を聞く → 意味を答える」と進めていきます。

    やってみると、文字だと答えられていたのに、意外に音だと答えられないものがあることに気づいたりします。

    なおこのとき、頭の中で文字を思い浮かべないように注意です。実際のリスニングを想定し、あくまで「音からダイレクトに、かつ瞬時に意味を想起できる」ようにしていきます。

    わからなかった単語は、音を覚え直していきましょう。

    すぐにピンとこなかった単語については、「その①」と同じような手順で、正しい単語の音を覚え直していくようにしましょう。

    発音記号(IPA)も参考にしつつ、またモデルスピーカーの発音も聴いて、自分でもそっくりマネできるようにしていきましょう。
    (発音記号もあらかじめ記載されている単語帳を使うと便利です。)

    リスニングの音の聞き取りを克服するための訓練法【文レベル編】


    記事の前半でも述べた通り、リスニングで音を聞き取れるようになるには、ここも合わせて取り組んでいくことが大切です。

    方法としては、以下を活用していきます。

    • その①:リピーティング
    • その②:オーバーラッピング
    • その③:シャドーイング

    以下、それぞれのやり方や注意点を見ていきましょう。

    その①:リピーティング

    やり方

    リピーティングは、モデル音を少し流して一旦停止し、そのポーズの間に自分でも同じように発音していく練習法です。

    リピーティングの進行イメージ

    このように、音を聴くときは聴くことだけに、自分が発音するときは発音することだけに集中できる練習法です。

    そのため、次の② オーバーラッピングや③シャドーイングに比べ、取り組みやすい方法です。

    文字スクリプトを見ながら行ってOKです

    文字スクリプトも補助として活用していきましょう。
    ただし、今回は音の聞き取りを鍛えるための練習なので「音をしっかりと聴く」ことを意識するようにしましょう。

    注意を向けるバランスとしては「音を聴く > 文字を見る」というイメージです。
    できるだけ音の細部まで聴き取って、マネするようにしましょう。

    リピート範囲の長さに注意

    一度にリピートする範囲が長すぎてしまうと、「ポーズで自分が言う頃には、聴き取った音を忘れてしまっている」ということが起きやすくなります。
    これでは、音の定着があまり期待できません。

    人は聞いた音をそのまま頭の中で保持できる時間が「約2秒」と言われています(Baddeley, 2002)。

    そのため、リピートする範囲は「1秒〜長くても2秒くらい」に収めるようにし、まだ聴いた音の残像が頭に残っているうちに、マネして言うようにしていきましょう。

    その②:オーバーラッピング

    やり方

    オーバーラッピングは、モデル音を再生し、それに被せて自分でも英文を言っていく方法です。

    オーバーラッピングの進行イメージ

    上記のように、自分の声がモデル音にピッタリ合うように発音していきます。

    ピッタリと言えない場合は、何か発音の問題があり、モデル音どおりの音で言えていない可能性が高いです。できるだけピッタリ合わせられるようにし、英語の音を身につけていきます。

    文字スクリプトを見ながら行ってOKです

    この練習も、文字を補助として使用してOKです。
    (むしろ使わないとかなり難しくなります。)

    ただやはりこのときも、「文字を読むだけ」にならないように注意しましょう。
    はじめは読むことだけに一生懸命になっても、繰り返していく中で余裕が出てきたら、少しずつ「音を聴く」方にも比重を置いていくようにしましょう。

    その③:シャドーイング

    やり方

    シャドーイングは、モデル音を再生し、2語くらい遅らせながら自分でも同じように言っていく練習法です。

    シャドーイングの進行イメージ

    上記のように、モデル音から少し遅らせながら発音していきます。

    「音を聴く+自分でも言う」といったことを、タイムプレッシャーがある中でこなさないといけないため、かなり負荷の高いトレーニングです。
    ただその分「音声知覚の自動化」を促すのに有効な方法とされています(門田, 2015)。
    » 参考:シャドーイングの効果とは?

    特にはじめは文字スクリプトも補助として使いましょう

    シャドーイングは①〜③の中でも、特に難易度が高い練習法です。

    文字スクリプトも補助として活用しつつ、繰り返し慣れていく中で、少しずつ「文字を見る → 音を聴く」方へと比重を移すようにして行きましょう。
    » 参考:文字を見てシャドーイングしてもいいの?【文字=悪ではない話】

    難易度の調整について

    ①〜③の練習をうまく進めるには、「難易度の調整」が1つ大きなポイントです。

    難し過ぎて、モデル音を聴く余裕がまったくない…
    自分がモデル音どおりに言えているのかわからない…

    こういった状況では、英語の音を自分のものにしていくことはできません。

    やはり脳がきちんと音の処理(音の知覚)に取り組むからこそ、その音の知識やスキルが定着するという面があります。
    いきなり100%でなくてもいいのですが、ある程度「音を聞けている感覚」や「モデル音どおりに言えている感覚」を、練習している最中に持てることが大切です。

    難易度をゆるやかに上げていく

    練習中の負荷が、自分に合った適切なものになるよう調整していきましょう。

    概して、①リピーティングや②オーバーラッピングの方が、③シャドーイングよりも取り組みやすい方法です。
    特に初期では、①②の方に比重をおき、慣れてきたら③の比重も少しずつ増やしていくというのは、1つ考えられる方法です。

    また使用する英文についても、「これは繰り返してもできるようになりそうにない…」とまったく見込みがないものは避けるべきでしょう。

    • 英文のスピードは速過ぎないか
    • 未知の表現が多く含まれていないか
    • 文字で読んだとしても理解できない英文を選んでいないか

    このようなことも考慮し、「繰り返せば自分のものになりそう」と感じられるもので練習するようにしましょう。

    英語学習全般にいえますが、「今の自分よりも少しだけ上のもの」「少し頑張ればこなせるようになるもの」を中心に攻め続けることが重要です。

    (なお、③シャドーイングは特に難しいため、できない場合は無理をせず、積極的に難易度を調節していきましょう。» 参考:シャドーイングが難しくてできない理由と対処法

    まずは「音の聞き取り」だけに集中してOK

    特にはじめは、無理に文構造や意味まで理解しようとしなくてOKです。

    全部一気に意識しようとすると、難易度が上がり過ぎて練習の続行自体が難しくなってしまいますし、肝心の「音を聴く」ということへの注意も散漫になってしまう恐れがあるためです。

    選択と集中が大切

    今回は「音を聞き取る力」を達成することが、まず第一の目標です。
    そのため、いったん意味処理などは置いておき、その分、音をできるだけ細いところまで聴くようにしたり、そっくりマネすることにこだわっていきましょう。

    まずはしっかりと頭の中に音の情報を取り込むようにし、英語の音のデータベースを脳内につくって行くことに専念しましょう。

    (なお「意味の扱い」については過去記事でも詳しく書いています。興味のある方は、 シャドーイングは意味理解しながらやらなくていいの? も参考ください。)

    「言えない」「聞こえない」部分を中心に音を分析

    さて、それでも①〜③の練習をやっていると、なかなかうまく言えない箇所というのが出てきます。

    ・何回聞いても、モデルスピーカーがどう発音しているのか聞き取れない…
    ・必ずそこで詰まってしまう…
    ・文字で見ると知ってる語ばかりなのに、音だとそう言っているように聞こえない…
    etc.

    こういった所は「自分の覚えている音」と「実際の英語の音」にズレがある可能性が高いところです。

    記事前半でも書いた通り、そのまま繰り返していても改善されない場合が多いので、ネイティブがどのように発音しているのかを分析していきましょう。以下の通りです。

    基本的な手順

    • ▽手順①: 問題の箇所について、「英語の音声変化」や「英語の強弱リズム」などの知識を使いつつ正しい音を特定する。
    • ▽手順②: 正しい音のアテがついたら、その部分だけモデル音を再生。分析した結果と照らし合わせながら、自分の耳でも聞いて確認する。
    • ▽手順③: その部分だけ「モデル音を聴く → そっくりマネする」ことを繰り返し、頭に音を覚え込ませていく。

    具体例

    たとえば、「a list of items」の発音がよくわからなかったとします。
    このパターンでは、特に of まわりが聞こえずらくなります。

    ▽手順①:
    まず音声変化ですが、「子音と母音が隣り合うとき」は音がつながることが多くなります(「連結」と呼ばれます)。
    そのため以下のように音が変わります。

    list of: リスト オヴ ⇨ リスヴ
    
    of items: オヴ アイテムズ ⇨ オヴァイテムズ 
    
    (全体で)
    list of items: リスト オヴ アイテムズ ⇨ リストヴァイテムズ
    

    上記のように分析が可能です。

    またリズムですが、「名詞は基本ストレスが来て、冠詞や前置詞には来ず弱く発音」というのがルールになります。そこから以下のように発音されます。

    上記のように、大きい ● にストレスを置き、それ以外は気持ち程度にボソッと発音されます。

    ▽手順②:
    分析結果をもとに、「a list of items」の音をもう一度聞いてみましょう。

    特に「トヴァイ」に聞こえる部分が「t of i」の部分であること、また、大きい ● にはストレスが置かれ、逆に of はボソッと弱く発音されていることにも注目しつつ、自分の耳で確認します。
    (もし分析と聞いた音が違うようであれば、もう一度手順①に戻って別の音の可能性を探りましょう。)

    ▽手順③:
    手順②で確認した音のイメージを大切にして、自分でもマネして言っていきます。

    「音を聴き、聞こえたままを言う」ように心がけましょう。
    それによって、その音のイメージの方を自分の「当たり前」にしていきます。

    細部を磨きつつ、あとはやはり反復で

    以上のような手順を通して、特に「聞けない」「言えない」ところを克服していきます。
    そうやって細部を磨いていくようにしましょう。

    その上でまたリピーティング、オーバーラッピング、シャドーイングに戻りましょう。苦手だった箇所も含めて音をしっかり聴き、綺麗にモデル音をマネして言えるよう反復していきましょう。

    ここまで見てきたような点を意識して取り組むことで、音の情報処理が活発に行われ、脳にも相当な負荷がかかるはずです。かなりの集中力をもって、練習に取り組むことにもなるでしょう。

    そのような負荷がある状態で筋トレのように回数をこなし、少しずつ楽にできるようになっていくことが大切です。

    慣れるに従い、意識するポイントを変えてOK

    取り組んでいる英文について、はじめからすべて完璧である必要はありません。

    「今回は特に / r / の発音を意識しよう」
    「今回はここの音声変化を注意しよう」
    「今回は細かい発音というよりは、全体的なリズムやイントネーションを意識して取り組もう」
    etc.

    このように、自分の状況に応じ、テーマを変えながら取り組んでOKです。

    繰り返していると、段々と今注意しているポイントが余裕をもってできるようになるはずです。
    そうすれば、今まで意識していなかった別のポイントや、さらに細かい部分にも、意識を向けやすくなっていきます。

    同じ英文を繰り返していても、学ぶ観点はたくさんあります。

    特にはじめは「1つの文章を一週間くらいかけて仕上げていく」といったことも良いと思います。
    いろんな英語の音の特徴に注目し、練習を通して頭に蓄積していくようにしましょう。

    番外編:英語を聞き取りたいなら、それ以外の学習も大事


    最後にこちらも少し触れて終えたいと思います。

    音「だけ」では足りない

    ここまで「音」をあつかう学習法を中心に見てきました。
    「音の聞き取り」を鍛えるためなので当然なのですが、大事なのはそれだけではありません。

    意味内容からの判断も大切

    実はリスニングをしている中で、いま自分が耳にしたのはどんな英語だったかという判断は、物理的な音だけを頼りに行われるのではありません。

    文の意味内容や、前後の文脈、すでに知っている一般知識などから逆算して、「いま相手はこう言ったのだろう」と認識している部分も多くあります。

    その意味で、相手が発した音だけを手掛かりに理解していくのがリスニングではありません。聞き手の方でも積極的に予想を立てつつ、いま相手が何と言ったのかについて妥当な判断をしながら進んめていくものです。

    ということで、音の聞き取り以外のこともやっていきましょう。

    本記事のような、音の聞き取りに特化した訓練をしていく一方で、意味内容や文脈から細部を判断するような聞き方にもしっかり慣れていきましょう。

    英語学習はバランスが大事です。

    おわり


    ーーー
    【脚注】
    [1] なお学術的に、人は音が聞こえてくるとそれと同じ音を自分の頭でも発音し、その2つを照合することで音を知覚している(自分で発音できることが音を知覚するための前提になる)という考え方があり(cf. 門田, 2012; 門田, 2022; 廣瀬, 2017)、検証が進められています(cf. 柏野, 2006)。


    ーーー
    【参考文献】
    All in one basic. [Online] [Accessed 2 October 2022]. Available from: https://basic.linkage-club.com/hatuonkigo

     
    Baddeley, A. D. 2002. Is Working Memory Still Working?. European Psychologist, 7(2), pp. 85–97.
     
    ウェブリオ. [Online] [Accessed 2 October 2022]. Available from: https://ejje.weblio.jp/
     
    英語の会. [Online] [Accessed 2 October 2022]. Available from: https://eigonokai.jp/phonetics/0-発音記号3時間マスター/
     
    門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
     
    門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.
     
    門田修平. 2022. リスニングの学習. 中田達也, 鈴木祐一 (編)『英語学習の科学』 東京:研究社, pp. 73-90.
     
    柏野牧夫. 2006. 音声知覚の運動理論をめぐって. 日本音響学会誌, 62 (5), pp.391-396.
     
    廣瀬浩二. 2017. 音声知覚の運動理論に基づくリスニング指導. 明倫紀要, 20 (1), pp.57-60.
     
    森沢洋介. 2005. 『英語上達完全マップ』 東京:ベレ出版.