役に立たない英語学習blog awareness without action will be useless

リスニングの学習法まとめ【理解のしくみ〜具体的な学習法まで】

リスニング

Designed by pch.vector / Freepik

リスニングの学習法についてまとめました。

もくじ

リスニングに悩んでいる方は多いと思います。

最近リスニングの学習をはじめた方、リスニング学習について理解を深めたい方、学習しているが思うように上達しない方など、ぜひ参考にされてみてください。

(私について:大学院で英語教授法(TESOL)を学んだ後、これまでマンツーマンをメインに英語指導に携わっています。指導歴は7年目です。)

それでは、まずはリスニングの仕組みから見ていきましょう。

1. まずは仕組みを理解する:リスニング中に脳内でやっていること

 

リスニングとは、一言で「聞いて理解する」ことです。

このように、耳から入ってきた音を脳内で情報処理することで、理解に至っています。

では具体的に、頭の中でどのようなことが行われているのでしょうか?

音を聞いてから意味をつかむまで

おおよそ、以下の①〜④のようになります。

①〜④の詳細は以下のとおりです。

  • ①:耳から入ってきた音が、どんな音であるかを知覚する
  • ②:①をもとに、どんな語彙が使われているかを認識する
  • ③:文構造や時制など、文法的に聞こえた内容を分析する
  • ④:③までの情報を基に、どのような意味内容かをつかむ

具体例で見てみましょう。

It is so hot. という文を聞いた場合

まずはじめに、耳から物理的な音(空気の振動)が入って来ます。

①では、それがどんな言語音なのかを知覚します。
たとえば、それが /ɪtɪzsóʊhάt/ という音だと認識します。

②では、そこにどんな語が使われているかをつかみます。
たとえば、/ɪtɪzsóʊhάt/ という音のカタマリが、「it + is + so + hot」という語であることをつかみます。同時に、それぞれの語がどんな意味かといったこともつかんでいきます。

③では、文法的な観点で分析を行います。
たとえば、「it is so hot」という語の並びが「主語(S)+ 動詞(V)+ 補語(C)」という構造をもっている、といったことをつかみます。

④では、③までの情報をもとに、文があらわす事柄や意味内容をつかみます。
たとえば、太陽の強い日差しや、暑さで汗をかいている状況がイメージとして思い浮かぶかもしれません。
(何を思い浮かべるかは、会話の状況や文脈などによっても変わります。)

ボトム・アップ処理とは?

このように1つ1つの音や語の認識からはじまり、最終的に文の意味までつかんでいきます。
1個ずつブロックを積み上げて、大きな家をつくっていくようなイメージです。

このような、1つ1つのパーツからより大きな情報をつかんでいくような理解の仕方は、学術的に「ボトム・アップ処理」と呼ばれます。

ボトム・アップ処理はリスニングを支える、情報の処理方法の1つになります。
ただし、リスニングで行なっているのは、このような処理だけではありません。

予測や推測もリスニングのうち

英語・日本語を問わず、「自分がよく知っている内容ほど楽に理解しやすい」という感覚をお持ちの方は、多いのではないでしょうか。

これは、自分がすでに持っている知識をもとに、予想をきかせやすいためです。

このような「聞き手の方で予測しながら聞く」というのも、リスニングでは大事な要素です。

一般に、予測や推測がうまく働くほど、リスニングが有利になることが多いです。
少し具体例でも見てみましょう。

その1:予測であいまいな箇所をおぎなう例

イメージしてみましょう。ここはとあるレストランです。
注文したパスタが来て、それを食べようとしているお客さんがスタッフに言いました。

*xcuse me, can I *ave a fork, please?

仮に * の部分が聞こえなかったとします。
さてお客さんは何と言っているでしょうか?

まず前半ですが、「Excuse me」と補うことができます。「Excuse me」は馴染みのある表現だと思いますが、あらかじめこういった語彙知識を知っていることで、またスタッフへの呼びかけの第一声などということも考えると、そのように予測しやすいと思います。

後半は「can I have a fork」です。こちらも「can I have 〜」が何かをもらいたいときの定番の表現であること、また「パスタを食べるにはフォークが必要」という常識や状況なども相まって、ある程度「can I have」だと予想を立てられるかと思います。

(ちなみに実際にその場にいれば、お客さんのジェスチャーなども手がかりになるかもしれません。)

このように多少あいまいな箇所があったとしても、実際は理解していくことが可能です。自分がすでに持っている知識から、「ここはこう言っているはず」といった予測が働くことで、問題なく理解が進むという面があります。

その2:予測が深い理解を助ける例

こちらも重要なポイントです。
このことを知るために、まずは以下の文章を理解するつもりで読んでみましょう。

新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなもの である。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである。

西林(2006, p.45)より引用

さて、どれくらい理解できたでしょうか?

日本語ということもあり、語彙や文法といった面では問題はなかったと思います。が、何のことかいまいちピンこない文章だったのではないでしょうか。

実はこれは「凧を作ってあげること」についての文です。
それを押さえた上で、もう一度、文を読んでみましょう。

するとさっきよりも「深く理解できた感覚」を持てるのではないでしょうか。1つ1つの文の内容をイメージしやすくなり、納得感も増したのではないかと思います。

これは、自分がもともと知っていた「凧」についての知識を使えるようになったことで、各文が表している状況を、読み手の側でうまく予測できるようになったためです。

このように、自分が持っている背景知識を活用することも、理解を進めるにはとても重要です。

上記は日本語のリーディングの例でしたが、基本的には英語のリスニングでも同じことが言えます。

トップ・ダウン処理とは?

以上2つの例が示しているのは、「リスニングはたんに受け身の行為ではない」ということです。

つまり「耳で聞く → 音・語彙・文法的に処理する → 意味をつかむ」というボトム・アップ処理だけで理解が進んでいるわけではありません。

もともと自分が持っている知識や、会話が起きている状況、文脈といった情報も駆使しながら、聞き手の側でも予測を立てつつ理解が進んでいきます。

それにより、あいまいな部分を補ったり、より深いレベルで効率よく文を理解していくことができます。

このような理解の仕方は、学術的に「トップ・ダウン処理」と呼ばれます。

ここまでを踏まえたリスニングのイメージ


上記のとおりです。

相手の言ったことを音・語彙・文法的に処理しながら意味をつかんでいくボトム・アップ処理がある一方で、それをサポートするかたちでトップ・ダウン処理が働いています。

このように、2つの処理が噛み合いながら、全体として理解が進んで行くのがリスニングであり、2つをうまく活かせることが大切です。

以上のように、一言にリスニングといっても、いろいろな脳内処理が組み合わさっています。このことがわかっていると、なぜリスニングがうまくできないのかや、その対策も考えてやすくなっていきます。

ではそれを押さえた上で、次にリスニングができない原因や、学習のポイントについて見ていきましょう。

2. できない原因から考える:リスニング学習のポイント

 

リスニングがうまくできない原因として、以下のようなことが挙げられます。

  • できない原因1:音が聞き取れない
  • できない原因2:語彙知識が不足している
  • できない原因3:文法的な処理ができていない
  • できない原因4:スキルが自動化していない
  • できない原因5:日本語に訳して理解している
  • できない原因6:英語の語順どおりに理解できていない
  • できない原因7:予測力をうまく使えていない

主に原因1~6はボトム・アップ処理に、原因7はトップ・ダウン処理に関わるものになっています。

順に見ていきましょう。

できない原因1:音が聞き取れない

多くの学習者が、リスニングで苦労する部分だと思います。

先ほど見たとおり、脳内でまず行うのが「①音声知覚」です。
知覚できない(聞き取れない)音が多いと、語や文構造などの認識も難しくなり、内容の理解に支障が出てきてしまいます。

いわばリスニングの「入口」にあたる大事な処理です。

問題は音のギャップ

聞き取れない理由の1つとして、「自分が記憶している英語の音と、実際に聞こえてくる英語の音にズレがある」ということが挙げられます。

つまり、自分が想定している音のイメージと、実際に聞こえてくる音の間に乖離があるような状態です。

たとえば以下の音を聞いてみましょう。

   
こちらは何の単語でしょうか?[1]

***

こちらは rhythm(発音記号:/ríðm/) という語です。
カタカナの「リズム」という発音とは、だいぶ印象が異なると思います。

日本語では一般的ではない /r/ や /ð/ といった子音が含まれていますし、母音の数も、日本語の「リズム」が3つなのに対し、 rhythm は /í/ の1つだけです。

また、英語には日本語にはない独特なリズムがあります。

日本語では1つ1つの音を均等に発音していく傾向があります。それに対し英語では、ストレスを置いてたっぷり発音する部分と、急ぎ足でボソッとだけ発音する部分のメリハリがはっきりしています。

とくに前置詞、代名詞、助動詞といった「機能語」は弱く発音されることが多いですが、これらを明瞭に発音される想定で聞いていると、かなり聞き取りに苦労します。

さらに、リスニングではたくさんの語が「つらなって」聞こえてきます。

たとえば「set up appointment」という表現。
この表現は(あえてカタカナで表すとすれば)、「セタパナポインッメンッ」のように音がつながったり、あるはずの音が消えて発音される場合が多いです。 

これには「連結」や「脱落」などの、「音声変化」という現象が関わっています。

音のギャップを埋める

「文字で見ると知っている語ばかり。でも音で聞くとわからない、、」

このようなことを感じたことはないでしょうか?

これは、自分が文字を見てイメージする音(つまり自分が覚えている英語の音)と、実際に話されている英語の音にギャップがあるような状態と考えられます。

とくに、音を使わない文字主体の学習をつづけて来た場合によく見られる症状です。

正確に音を聞き取れるようになるには、先ほどの例なども含め、英語の正しい音のイメージやパターンを、頭の中につくっておくことが大切です。

できない原因2:語彙知識が不足している

こちらは「②語彙処理」に関わるものです。

やはり「語彙を知っている」というのは、リスニングでとても重要です。
聞いた文の中にいくつも知らない語彙があると、理解度を大きく下げる原因になってしまいます。

なお、ある程度うまく理解を進めるには、出てくる語のうち95%くらいを知っていることが望ましいとする研究もあります。[2]

つまり100語あれば、うち95語くらいはわかっている状態です。

いま取り組んでいるリスニングのスクリプトを確認してみましょう。
仮に上記の数字を基準においた場合、今のご自身の語彙力はいかがでしょうか?

また原因1とも関係しますが、それぞれの語彙について「正しい音で覚えている」「音で聞いたときに瞬時にそれと分かる」ということも、大事な点でしょう。

できない原因3:文法的な処理ができていない

こちらは「③文法処理」に関わるものです。
文法もリスニングでは大事な要素の1つです。

「それぞれの単語がどうつながっているか分からない。」
「知っている語ばかりだけど、なんだか意味が釈然としない。」 など

こういった症状がある人は、文法面がネックで理解度を下げているかもしれません。
文法は「文意を正確につかむ」のに重要な役割を果たします。

少し例で見てみましょう。

I bought my kid a new cap.

さて、この文はどういった意味でしょうか?
とくに難しい語は含まれていないと思います。

この文は、単純に「bought ~ = ~を買った」と当てはめてしまうと意味を取ることができません。「子どもを買った」では意味が不自然ですし、後ろの a new cap はなに?となってしまいますね。

ですが、もし buy がとれる文型についての知識があれば、「私は自分の子どもに新しいキャップを買ってあげた。」と正しく意味を取ることができます。

次に以下はどうでしょう?

Was the woman you were talking to yesterday Sara?

さて、こちらも特に難しい語は含まれていないと思います。が、意味どりに困ってしまう方もいらっしゃるかもしれません。

この文を正しく理解するには、関係代名詞のことがわかっている必要があります。
(ここではyouの前にwhoが省略されています。)

また、文全体の構造が見えることも大切です。実はこの文は、「Was she Sara?」と根本的には同じ構造をしています。
(つまり、the woman 〜 yesterday までが1カタマリの主語です。)

そういったことがつかめることで、「あなたが昨日しゃべっていた女性がサラですか?」と正しく意味を取ることができます。

もう1つ、応用ですが見てみましょう。

以下は、ある対談でのエマ・ワトソンのセリフです。

(以前から『美女と野獣』のベル役を演じたかったのかを尋ねられて…)

If you had told me, when I was five, which is probably around the age that I was watching it on repeat, that I would one day get to be Bell, I don’t know what I would have done.

TheEllenShow より一部省略して抜粋

かなり複雑そうですね。
一目では少しわかりづらいかもしれません。

ただこの文も、tell が取れる文型、if, when, which, that のカタマリがどこまで続くのか、そのカタマリが文の中でどんな役割をしているのか、といった文法的なことを追っていけると、意味を取りやすくなります。
(なお実際にはイントネーションなどの音声面も、文構造をつかむ手がかりになります。)

意味は、「もし私が5歳だった頃に、それはたぶん私が繰り返しそれ(=美女と野獣)を観ていたくらいの年齢なのですが、いつかベルになれると自分に伝えていたら、私はどうしていたかわかりません。」といった内容です。
ベル役を演じることがそれくらい念願だったと伝えています。

文法面も磨きつつ、リスニングを有利に

上記の例は、おもに文構造に関わるものでした。

他にも時制や仮定法などの文法がありますが、そういったものもつかんでいけると、話し手が伝えようとしている意図やニュアンス、事実関係をより正確に把握しやすくなります。

このように文法も、リスニングで意味をつかむ上で重要な要素です。

できない原因4:スキルが自動化していない

ここまで、音・語彙・文法の重要性を書いてきました。
ですが中には、「すでにそういった知識は勉強してきた」という方もいらっしゃるかもしれません。

「知識はあるのにリスニングができない…」という場合は、以下のことも考えてみましょう。

スピードという壁

リスニングでは、とにかくスピードが求められます。

聞いているときに、「今なんて言ったんだろう?」「この単語の意味はたしか…」「これが主語でこれが目的語で…」などと、じっくり考えている暇はありません。

またリーディングとは違い、一度逃してしまうと、前に戻って英文を確認しなおすこともできません。

このようにリスニングでは、音・語彙・文法について「知っている」というだけでは、なかなか太刀打ちできません。
そういった知識を「瞬時に使いこなせる」という状態をつくっておく必要があります。

リスニングに欠かせないスキルの自動化

たとえばピアノの演奏者は、あれだけの指の動きを、じっくり頭で考えなくても自然に行うことができます。またサッカー選手も、いちいちすべて頭で意識しなくても、スムーズに足を動かしながらドリブルすることができます。

これらは、スキルが自分の身体に染みついており、自然に実践できるようになっている例です。
英語にもこれと似たところがあります。

リスニングで問題なくついて行こうと思えば、英語のインプットを受けた瞬間に、耳や頭が自然と反応できるようにしておく必要があります。

  • 正確かつ、スピーディーに
  • 考え込まなくても楽にできる

このような「自動化されたスキル」を身につけることが大切です。

自動化で、リスニングに有利な状況をつくる

ちなみに、「正確さ」と「スピード」が大切なのはイメージしやすいと思いますが、「考え込まなくても楽にできる」というのも重要な点です。

人は、一度に使える脳のリソースや容量が限られています。

リスニング中に、「この音は…」「この語彙の意味は…」「この文法は…」などと考えてしまっていると、それだけで脳の容量が消費されてしまいます。

これでは、終始余裕のない聞き方になってしまいますね。
肝心の話の内容そのものを追ったり、それを記憶に留めておくといったことまで、手が回らないような聞き方です。

ですがもし、音・語彙・文法などを頭で考えなくても無意的に扱えるようになれば、そのぶん脳に余裕が生まれます。
それにより、内容そのものに集中したり、それを記憶しておくといったこともやりやすくなっていきます。

目指したいバランス

  • リスニング中、音・語彙・文法面などは無意識的に処理できる(自動化)
  • それにより、内容を追ったりそれを記憶することにより多くの意識をさける

つまり、以下のような状況を目指すことが大切です。

自動化したスキルを得るために

では、どのようにすれば自動化したスキルを得られるのでしょうか?

1つ大事なことは、「できるようになりたい動作や行為を、継続的に、繰り返し練習する」ということです。

これは楽器やスポーツの練習などでも、一般に行われていることかと思います。

リスニングでいえば、「音を細かく聞き分ける」という動作であったり、「語や文法の組み合わせから、サッと頭の中に意味のイメージをつくりあげる」といった動作を、いろんな英文で繰り返し取り組んでいきます。

このように、リスニング中にできるようになりたい動作や頭の使い方を「実際に何度もやる」ことで身につけていきます。

その中で、時には自分の出来を振り返って修正したり、時にはタイムプレッシャーをかけてさらに鍛えていくということもあるでしょう。

このような練習を継続することで、いざ英文を耳にしたときに「いつでもとっさにその動作をとれる」という状態をつくっていくことが大切です。

できない原因5:日本語に訳して理解している

リスニング中、日本語に訳しながら理解している、もしくは、そうしないと理解できないというケースです。

  • (1) 英語を聞く → 日本語に訳す → 理解する
  • (2) 英語を聞く → 理解する

上記は、訳して理解する場合と、訳さないで理解する場合の流れです。
どちらのパターンでも、一定の範囲で理解していくことはできるでしょう。

ただやはり、(1)は「訳す」という作業が余分に挟まる分、より時間がかかったり、脳への負荷も高くなってしまうと考えられます。

スピードについて行けなくなったり、翻訳しているうちにそれまで理解した内容を忘れてしまう、といったことも起きやすくなってしまうでしょう。

また、日本語に変えることで、もともとの英語のニュアンスが消えてしまう、ということも考えられます。

またこの原因5は、次の「語順のあつかい」とも深く関わっています。

できない原因6:英語の語順どおりに理解できていない

日本語と英語の語順はかなり違います。
そのため、日本語に訳す感覚を持ち込んでしまうと、リスニングについていけない原因になってしまいます。

たとえば以下の文を考えてみましょう。

This is a mug my colleagues gave me for my birthday last year.

もしこの文を日本語的に理解しようとすれば、以下のように意味を追っていくことになります。

このようにある部分を飛び越えたり、語順を後ろから前に逆走しながら意味をつかんでいくことになります。

我々日本人にとっては、自然に受け入れやすい順番かもしれません。

しかし実際のリスニングでは、こういった理解の仕方は現実的ではありません。上記のような英文を右往左往するような聞き方では、どんどんと流れてくる英文に対応できなくなってしまいます。

少しずつ軸足を日本語から英語へ

できない原因5・6については、これまで「日本語に訳して理解する」という勉強法をとってきた方に多いケースかと思います。

もちろん学習の過程で、適宜日本語を使っていくことはまったく問題ありません。
むしろそういった勉強を通して、英語そのものへの理解や知識が深まるという面は、大いにあるでしょう。

ただ、実戦のリスニングでスムーズに理解していくことをゴールにおいた場合は、「英語を英語のまま、左→右に理解する」という頭の使い方にも十分慣れておく必要があります。

このようにストレートに理解していくイメージです。
こういった頭の使い方を自動化し、いつでもとっさに実践できるようにしておく必要があります。

はじめは慣れがいるかもしれませんが、こういった理解の仕方も、意識的に訓練していくことで少しずつできるようになっていきます。
このような「直聴直解」をぜひできるようにしていきましょう。

できない原因7:予測力をうまく使えていない

原因6までは、主にボトム・アップ処理に関わるものでした。

ですがリスニングでは、聞き手の方で「予測や推測をしながら聞く」という、トップ・ダウン処理が使えることも大切です。

ボトム・アップ処理の限界

ボトム・アップ処理を、できるだけ自動的にこなせるように訓練していくことは重要です。
ただそれだけでは、どうしてもスピードに限界があります。

「1つ1つの音・語彙・文法を捉える → 意味をつかむ」という、ある種、律儀にこなしていくタイプの理解だけでは、物理的に間に合わないのです。

さらに「あいまいな箇所を補えない」という問題もあります。

本来は、多少聞き取れなかったり不明な箇所があったとしても、そこを自分なりに補いながら会話についていくことが求められます。
ボトム・アップ処理だけに頼るような聞き方では、そういった補完がうまくできずに、理解が阻害されてしまいます。

最終的には2つのバランス

ただその一方で、予測や推測(トップ・ダウン処理)のみに頼りすぎるのも、やはり良くはありません。

実際の英文とはかけ離れた内容で理解してしまうこともあるためです。
たとえば「聞き取れた語をつなげて、自分独自のストーリーを作りあげてしまう」などはその1例でしょう。

そういった一か八かのリスニングにならないためにも、「聞いた英文をきちんと音・語彙・文法的に処理しながら意味をつかめる」ということも、やはり必要な力です。

そういったボトム・アップ処理がうまく働くからこそ、予測や推測の精度も高くなるという面があります。

  • リスニングの基礎力として、ボトム・アップ処理を鍛えていく
  • ただしそこで終わらず、トップ・ダウン処理を絡ませた理解の仕方にも慣れていく

このような2本立てが、リスニングの学習では大事になってきます。

以上のようなことも踏まえながら、学習に取り組んでいきましょう。

3. リスニングの学習法【基礎編】

 

ではここからは学習法について見ていきましょう。
まずは【基礎編】です。

ここでは主にボトム・アップ処理を鍛えていきます。

つまり「①音を知覚する → ②語彙・③文法を処理する → ④意味内容をつかむ」までの一連の処理をスムーズにできるよう訓練していきます。

ここはリスニングの基礎となる力です。
とくにリスニング学習の初~中期では重点的に鍛えていきましょう。

ではまず①の音声知覚から見ていきます。

①音声知覚を鍛える

リスニングにおいて「音の聞き取り」は非常に重要です。
重点ポイントとして、しっかり訓練していきましょう。

先ほど書いたとおり、音を聞き取れるようになるには、「自分が記憶している英語の音」⇄「実際の英語の音」のズレを埋めていく必要があります。

そのために以下を行っていきましょう。

やるべきこと

  • 英語の正しい音を特定する
  • その音をよく聴き込む
  • 自分でも同じ音で言えるようにする

これらが基本になります。

単語を覚えるときは、発音も一緒に覚えるようにしましょう。
その際、発音記号を見ながら正しい発音を確認します。モデル音があればそれを聴き込みましょう。頭の中で正しい音のイメージがつかめたら、自分でも同じように発音できるよう練習していきます。

また、語を超えた「文レベル」での音も大切です。
文レベルになると、強弱リズム・音声変化・イントネーションといった要素も絡んできます。こういった音の特徴も分析できるようにし、それをもとにモデル音を聴き込んだり、マネして言えるようにしていきましょう。
» 参考:英語の強弱リズムをつくる際のルール
» 参考:英語の音声変化のルール

自動化がゴール

「できない原因4」でも書いたとおり、頭でじっくり考えたり意識を集中しないと音を聞き取れないうちは、実際のリスニングではなかなか対応できません。

何度もモデル音を聴いたり、自分でも発音することをとおして、その英語の音が「自分の当たり前」になるまで、記憶に定着させていきましょう。

また、シャドーイングのように、あえて高い負荷をかけて音声知覚の自動化をしていく方法もあります。その分難しい練習法ですが、うまく学習にとり入れていけると効果的です。

以上のような音声知覚の学習法については、以下の記事により詳しくまとめていますので、ご覧ください。

②語彙を増やす

まとまった語数を効率的に覚えていには、単語帳の利用が1つの有効な方法です。

書店にいけば、いろんな切り口の単語帳があります。
(例:中学校用、大学受験用、英語試験用、高頻出語順の単語帳 など)

どれを使うかは、その時の自分の語彙レベルや、直近の目標などによって変わってくるところでしょう。

ただ、中学校卒業までに学ぶ単語は、あらゆる英文でよく出現するもっとも基礎となるものです。もし不安がある場合は、そこをまずは押さえるようにしましょう。

また、英検、TOEIC、TOEFL、IELTSなどといった、特定の試験向けの単語帳は、基本的にそのテストでよく出る語がまとめられている場合が多いと思います。もし目標とする試験が明確に決まっているのであれば、それらを選ぶのも1つでしょう。

各単語について、以下を目指しましょう。

  • それぞれの単語について、パッと瞬時に意味を想起できる
  • 文字だけではなく、「音」からもすぐに意味を想起できる

これらはリスニングをするにあたり、とくに重要になります。

もちろんいきなり完璧にできなくても大丈夫です。
単語帳をくり返し復習していく中で、徐々に上記のような状態を目指していきましょう。

単語は一旦覚え方をつかめれば、あとは継続することで、着実に増やしていくことができます。語彙はリスニングを支える土台になりますので、ぜひ頑張って身につけていきましょう。

③文法知識を身につける

文法についても、もし中学校レベルがあやふやな場合は、まずはそこからおさえて行くようにしましょう。その後、高校レベルの知識までカバーできると良いです。

文法テキストを使いながら、以下のように進めていきましょう。

文法学習のステップ

  • 1:文法の解説を読んで、ルールをよく理解する
  • 2:それを使った問題を解いて知識を定着させる

詳しく順に見ていきます。

1:文法の解説を読んで、ルールをよく理解する

基本的に文法学習では、「暗記する」というよりは「理解する」ことが大切です。
解説が丁寧で分かりやすいテキストを選び、英語の仕組みについて納得しながら読み進めていきましょう。

なお初学者であるほど、例外も含めあらゆる文法事項が網羅されている参考書というよりは、まず押さえるべき基本的なポイントに絞って解説しているテキストから入ると良いと思います。

2:それを使った問題を解いて知識を定着させる

また、解説を読むだけでは、知識の定着度が弱かったり、自分の理解の穴にも気づきにくくなります。

穴埋め問題や、並べ替え問題、簡単な英作文といった問題にも取り組みながら、そこで、理解した文法ルールの知識を使っていくようにしましょう。古典的なようですが、文法学習のファーストステップとしては非常に有効です。

なお、定着させるにはやはり反復が重要です。
「もうこれは大丈夫」と自信が持てるくらいを目指して、何回か解くようにしましょう。

その際、正解や出来上がった文をただ暗記するのではなく、「なぜそれが答えになるのか?(もしくはならないのか?)」をつかみながら復習することが大切です。

「英語にはこういった仕組みやルールがある。だからこの形で表せば、こんな意味になる」といった部分を押さえていくようにしましょう。

1つテキストの例を挙げておきます。以下は、解説+問題で復習できるものになっており、中学文法からポイントをおさらいしたい方にはおすすめです。

④すばやく文意をつかむ力を鍛える

この練習の狙い

さてここまでは、音・語彙・文法の学習法を「別々に」見てきました。

ですが実際のリスニングでは、音・語彙・文法が個別にわかるだけでは不十分です。
それらの知識を使って「文の意味内容をつかむ」というところまでやっていく必要があります。

その意味で、音・語彙・文法というは、意味をつかむための「手段」でしかありません。

  • 意味内容をつかもうとする(目的)
  • そのために音・語彙・文法的な処理をする(手段)

このような頭の使い方を、練習を通して身につけていく必要があります。

意味を中心に

そのように書くと難しく聞こえるかもしれませんが、やることはシンプルです。

しっかりと意味を考えながら英文に触れていきましょう。
つまり、以下の④まで取り組むつもりで、頭を働かせるようにします。

意味内容をクリアにつかもうと思えば、結局、その手前の処理にも取り組む必要があります。
(たとえば、それぞれの語彙の意味を瞬時に想起したり、文構造を捉えてそれに沿った意味内容を見出すことが必要になります。)

ぜひ「意味をつかむ」ことを念頭に、たくさんの英文に触れていきましょう。その中で、「語や文法の組み合わせから、サッと意味イメージをつくりあげる」という一連の脳内処理を自動化していきましょう。

練習の形態

「音読」は、上記のようなことを取り組みやすい練習法の1つです。
» 参考:音読のリスニングへの効果について

リスニングの文字スクリプトを使い、各英文があらわす意味内容やイメージをつかみながら読んでいきましょう。

使用する英文

  • 語彙レベル:全体の95%以上が知っている語彙で構成されているもの
  • 文法レベル:基本的に知っている文法事項だけで構成されているもの
  • トピック:自分との関わりがあり、内容をイメージしやすいもの
  • 文の長さ:1パラグラフ分(例:50~100語)など長すぎないもの

たとえば上記が目安になります。

前述のとおり、ここでは「意味をつかむ」ことが前提の練習になるため、それができないような難しい英文は避けるようにします。

新しく知識を得るというよりは、「すでに持っている語彙や文法知識を素早く使いこなせるようにする」ことに主眼がありますので、基本的には辞書や文法書を引く必要がほとんどない英文を使っていきましょう。

できるだけ英語の語順で

またここでは、「英語の語順どおりに意味をつかむ」ということにも慣れていきましょう。
コツとしては、「扱いやすいサイズに小分けしながら意味をつかむ」ということです。

以下のように、意味のカタマリごとに、左→右へ順に意味をつかんでいくようにしましょう。

一文丸ごと意味を取っていこうとすると、日本語の語順の感覚が入り込み、すぐに[4]あたりに意識を飛ばしたくなるところです。ですがそうではなく、意味のカタマリごとに、あくまで[1]→[2]→[3]→[4]と順に意味をつかんでいくようにしましょう。

以下のようなイメージです。

[1] This is a mug /
 これはマグカップです
 ▽
どんなマグカップかというと…
 ▽
[2] my colleagues gave me /
 同僚が私にくれた
 ▽
なんのためにかというと…
 ▽
[3] for my birthday /
 私の誕生日に
 ▽
いつかというと…
 ▽
[4] last year. //
 去年。
 ▽
理解終了

このように、[1]→[2]→[3]→[4]とストレートに意味をつかんでいきます。
とくに後置修飾が多用される文などでは、上記のような、あとから補足情報が足されていくような感覚が重要になります。

なお慣れるまでは、スラッシュも補助的に使って音読の練習をしていくと良いでしょう。上記のような頭の使い方を意識しやすくなります。

できるだけ英語のままで

また、日本語に訳さず、英文から意味内容を直接つかむことも練習しましょう。
日本語を思い浮かべる代わりに、その英文が表す状況を頭の中にイメージしていきます。

たとえば先ほどのマグカップの例文では、具体的にマグカップを1つ思い浮かべたり、それを同僚から手渡されている場面を思い浮かべたりしてもよいでしょう。

あとは反復練習で

以上のような頭の使い方を、反復練習を通して慣れていきましょう。

たとえば、1つの英文につき、10回×3日などと決めて取り組んでいくのも良いと思います。

ただし、目的は回数をこなすことではなく、ここまで見てきたような脳内処理を自動化していくことになります。

口だけが動いているようにならないよう、しっかり意味を考えたり、英語の語順で意味をつかむことなどを意識しながら取り組んでいきましょう。

ここで身につけた頭の使い方が、リスニングでも自然に出るようにすることが一番の目的です。頭の中でどんな処理に取り組んでいるのかを意識しながら、練習に取り組むようにしましょう。

なお、とくにはじめは、文字を声に出して読むだけでいっぱいいっぱいになるかもしれません。
その場合は、繰り返す中で少しずつ楽にこなせるようになってきた段階で、しっかり意味などにも意識を向けていくようにしましょう。

4. リスニングの学習法【発展編】

 

前の【基礎編】では、リスニングの足腰となるような部分の訓練法を中心に見てきました。ここからは【発展編】ということで、もう少しやることの幅を広げていきましょう。

ある程度の長さのある英文でリスニングを行い、ボトム・アップ処理だけではなく、トップ・ダウン処理も含んだ学習を行なっていきます。その一例をここでは見ていきたいと思います。

手順は以下です。

  • 手順1:英文を選ぶ
  • 手順2:下準備する
  • 手順3:全体を聞く
  • 手順4:分析をする
  • 手順5:定着させる
  • 手順6:仕上げ聞き

順番に見ていきましょう。

手順1:英文を選ぶ

まずはリスニングに使用する英文を選びましょう。
選ぶ目安としては以下です。

  • 文字スクリプトがついているもの
  • トピック:自分との関わりがあり内容をイメージしやすいもの
  • 全文の長さ:たとえば2, 3分〜などある程度の分量があるもの
  • 英文レベル:1回目のリスニングで、7割くらいはわかるもの

たとえば上記のようなものです。

トピックは、自分に馴染みがあったり、関係、興味があるものを選ぶと良いでしょう。
ただ、もともとあまり馴染みがなくても、詳しく知っていくうちに興味が湧いてくるという面もあるため、少しでも気になる内容なら選んでみても良いでしょう。

全文の長さですが、ほんの数秒でおわってしまうような短いものだと、全体の話の流れを読んだり、情報を整理しながら聞くといった練習をしづらくなります。ここでは、ある程度の分量があるものを選んでいくと良いでしょう。

英文レベルですが、1回聞いた段階で「ところどころわからない箇所はあるが、大まかな内容はつかめる」くらいのものを選んでいきましょう。あまりにわからない英文だと、うまく学習につながりません。

もし語彙レベルや内容そのものが難しすぎる、スピードが速すぎるなどと感じれば、その時点で使う英文を変えてしまって大丈夫です。
(なおこの点については、実際は手順3で判断するようになります。)

手順2:下準備する

英文を聞く前に少し下準備をしましょう。
これから聞く内容を頭に受け入れやすくするための準備です。また、内容を積極的に聞こうという動機づけにもなります。

たとえば以下のようなことを行います。

  • タイトルを読む
  • 導入文、画像、図などもあれば確認し内容をイメージする
  • そのトピックについて自分が知っていることを考えてみる
  • そのトピックについての自分の経験を思い出す              など

このようにして、これから聞く話題について自分がすでに知っていることや背景知識をアクティブにしていきます。リスニング中、トップ・ダウン処理を使いながら、理解につなげやすくするための方法です。

具体例

1例として、BBC 6 Minute English より『Can AI have a mind of its own?』という題材を使った場合を見てみましょう。こちらのページには、以下のような情報が載っています。

これらの情報から、これから聞く内容について、以下のようなことを考えることができます。

  • メイントピックは「AIが意識や心を持てるかどうか」について
  • おそらく本文では、その問いに対するアンサー的な内容を聞くことができそう
  • 専門家が登場するが、どうやら否定的な見解をもっているようだ
  • その専門家的には、世間が勝手にAIに知性があると過剰評価しているということなのかな?   など

さらに以下のように、この話題を自分のことと結びつけて考えてみても良いでしょう。

  • 自分は今まで AIツール(chatbot など)を使ったことがあるかな?
  • ある場合、AIに意識や人格のようなものを感じたことがあるかな?
  • いま自分が思い浮かぶ、AIのポジティブな面/ネガティブな面ってなにかな?
  • もしAIが意識をもてるとしたら、それについて自分はどう感じるかな?(例:楽しみ, 不安 など)
  • なぜそのように感じるのか?  など

語彙からの推測も有効

また、あらかじめキーとなる表現の語彙リストが与えられている場合は、それを活用するのも1つです。

たとえば、先ほどのBBC 6 Minute English のサイトでは、「get/be taken in (by) someone」という表現が、Vocabulary リストの欄に挙げられています。

これは「誰かに騙される」という表現ですが、ここで「誰が誰に騙されるのだろう?」と少し考えてみます。すると、「AIが人間に騙される」というのはやや考えづらいので、たぶん「人間がAIに騙される」といった文脈なのかな?という予測が立ちます。

この段階では推測にすぎませんが、リスニングするときには、そういった推測が正しかったかどうかをチェックしながら聞いていくようにすると良いでしょう。

手順3:全体を聞く

いよいよリスニングに入っていきましょう。
その際、以下をポイントにしましょう。

「理解する」ことを第一に

英語学習となると、つい細部の表現ばかりに注意が行き過ぎたり、「理解する」というリスニング本来の目的を見失ってしまいがちです。

英語学習のために聞くというよりは(もちろんそうではあるのですが)、純粋に「新たに知らない情報を得る」「そのトピックについて自分の理解を深める」といったつもりで聞いていくようにしましょう。

あいまいな箇所があってもあきらめない

聞いていると、所々聞き取れないところや、意味をつかめないところも出てくると思います。ですが、この段階ではそういったところがあっても構いません。

自分なりに背景知識や予想も働かせながら(=トップ・ダウン処理も使いながら)、おおよそどんなことが話されていたかをつかんでいくようにしましょう。

実際のコミュニケーションを想定し、あいまいな箇所があっても、できるだけ予想しながら話についていけるように心がけましょう。
(細かい部分については、後ほどチェックしていきます。)

聞き流しにならないために

なお内容に積極的に関わっていく工夫として、「メモを取りながら聞く」というのも1つの方法です。
要点や大切な情報を、自分なりにまとめながら聞いてみましょう。

ただし、情報をきれいに整理しながらメモしていけると良いのですが、英語でそれを行うのは大変かもしれません。その場合は以下のように進めることもできます。

  • 聞いている最中は、キーワードだけに絞ってメモをとる
  • 聞き終わったらメモを見返し、内容を思い出しながら必要な情報をつけ足したり、整理し直す
  • その上で再度英文を聞き、さらにメモを仕上げていく

このように繰り返し英文を聞く中でメモを仕上げていきながら、少しずつ内容への理解を深めていきましょう。

手順4:分析をする

手順3で話の大枠はつかめた、もしくは、これ以上は理解度が増さないという段階で英文の分析に入りましょう。

英文を部分的に再生して聴いていきます。
文字スクリプトも見ながら、あらためて話の内容そのものや、不明だった箇所も含めて確認していきましょう。

不明だった箇所については、以下のような観点で分析していきます。

音の分析

音を聞き取れなかった箇所については、以下を考えるようにしましょう。

  • 各語を正しい音で覚えられていたか
  • 音声変化の音まで捉えられていたか

このような観点で、不明だった箇所が実際はどんな音で発音されていたのかをつかんでいきます。
文字スクリプトを見ながら、モデル音も聴いて確認しましょう。

語彙・文法などの分析

あわせて語彙や文法面も確認していきましょう。
知らない語彙は辞書で調べたり、文法的な視点でも文を眺めてみて、文意をクリアにしていきます。

また、各文だけではなく、パラグラフといったより広い範囲でも見てみるようにしましょう。各文がそれぞれ意味的にどのようにつながっているか、どんな論理構成や情報の流れになっているかといったこともチェックポイントです。

以上のような観点で分析していきましょう。

手順3まででだいたいの話の内容や文脈をつかめているため、「あっこの語彙・文法はこんな文脈でこんな風に使われるんだ!」という気づきが得られやすいのも、この手順4の重要なポイントです。

これまで学んできた単語や文法といった知識が、実際の生きた文脈の中でどのように使われているかをつかむ機会にしましょう。

手順5:定着させる

手順4で新たな気づきを得られたら、あとは定着のための学習をしましょう。

たとえば分析し終えたパラグラフを、文字スクリプトを見ながら、何度か繰り返し聞いていきます。
文字ありで理解がスムーズにできるようになれば、文字なしでも聞いてみましょう。

また他にも、「リスニングの学習法【基礎編】」で紹介したような方法で音声の強化を行ったり、音読に取り組むことでそこに含まれている英語表現を定着させていくのも良いでしょう。

手順4で得られた結果も意識しつつ繰り返し、頭になじませていきましょう。

手順6:仕上げ聞き

さいごの仕上げとして、英文全体を通して聞いてみましょう。

基本的には、手順3と同じく「理解すること」を第一にリスニングをしていきます。手順4, 5を通したことで、細かい部分も理解できるはずです。

あらためてそこで話されている内容に納得感をもちながら、聞き進めていきましょう。

さいごに


以上、リスニングの学習法について見てきました。

いろいろな側面について書いているうちに、かなりの長文になってしまいました。よければ日々の学習の参考にされてみてください。

また、おひとりでの学習に難しさを感じていらっしゃる方などに、個別でのレッスンとサポートも行っております。よければお気軽にお問い合わせください。

おわり

ーーー
【脚注】
[1] 音声は weblio より引用。
 

[2] van Zeeland and Schmitt (2013) を参照。
 

【参考文献】
BBC Learning English. [Online] [Accessed 1 May 2023]. Available from this link.
 

西林克彦. 2005. 『わかったつもり:読解力がつかない本当の原因』東京:光文社. 

TheEllenShow. [Online] [Accessed 27 April 2023]. Available from: https://youtu.be/PBCOgyPv-nM
 

van Zeeland, H. and Schmitt, N. 2013. Lexical coverage in L1 and L2 listening comprehension: the same or different from reading comprehension? Applied Linguistics, 34(4), pp.457–479.

 
weblio. [Online] [Accessed 1 May 2023]. Available from: https://ejje.weblio.jp/content/rhythm