英語リーディングの学習法【読解のコアスキルを鍛える3つの柱】
Illustration by Natasha Remarchuk from Icons8
「いろんな方法があるみたいだし、それぞれの『使い分け』や『学習の全体像』も含めて理解しておきたい。」
今回はこのような疑問に答える内容になっています。
本記事の内容
- 1. どんな英語のリーディング力を目指すか?
- 2. 英語リーディングの上達を支える3つの柱
- 3. その①:英文を「正しく」読んで理解するための学習
- 4. その②:英文を「素早く」読んで理解するための学習
- 5. その③:「正確さ+流暢さ」をさらに伸ばすための学習
なお、過去に私が大学院で英語教授法(TESOL)を学んでおり、これまで実際に英語の指導にも携わってきました。そのあたりの経験や応用言語系の文献等も参考にしつつ、書いて行きたいと思います。
少々長めになりますが、リーディング学習の全体像や、大事なポイントについて理解できると思います。
では行きましょう。
1. どんな英語のリーディング力を目指すか?

英語の文章を「正確に」かつ「素早く」読み進められる力。
本記事では、「リーディング力」をこのように定義し、そのために必要な学習法や勉強法について書いて行きたいと思います。
正確さと流暢さのバランスが大事
仕事場や英語の試験などで、スピーディーに英語を読むことが求められる場面は多いと思います。
また一方でただ速く読むだけではなく、読み終えた時にしっかり正確に内容をつかめているということも大切です。
「正確に意味を取ろうとはしてるけど、どうしても時間がかかる。1文ずつ読んで行くのが大変で、すぐ疲れる..」
このような悩みを解決するために、バランスのとれた学習を進めていきましょう。
ある程度の文量を「正確さ」と「流暢性」をもって読み進められる。
以下では、このために必要な学習の進め方についてまとめていきます。
(なお、今回はスキミングやスキャニングといった、特定の目的で利用していくリーディング技術については除外したいと思います。)
2. 英語リーディングの上達を支える3つの柱

はじめに結論的にまとめておきます。
リーディングの学習でやるべきことは、以下の通りです。
- その①:英文を「正しく」読んで理解するための学習 →
単語学習・文法学習・精読で
- その②:英文を「素早く」読んで理解するための学習 →
音読系の反復練習で
- その③:「正確さ+流暢さ」をさらに伸ばすための学習 →
多読で
おそらく、それぞれの勉強法については、特に目新しいものはないと思います。
ですが「それぞれどんな目的のためにやるのか?」「それを達成するために、何を気をつけて取り組むのか?」ということが大切です。
そのあたりも踏まえつつ、以下順に解説していきます。
3. その①:英文を「正しく」読んで理解するための学習

ここでの目標は、「英語を読み進める上で必要な知識を入れ、英文の正しい読み方を身につける」ことです。
ここをしっかり固めておくことで、
- 自力で英文の意味を正しく理解できる力
- 過度に推測に頼らなくても良いような力
を身につけて行きます。
また、リーディング学習全体の観点では、次の「学習その②」では素早く理解する練習に入っていきます。
そこでは、あくまで「正確な読み」をスピードアップしていくからこそ意味があります。
そういった速い読みを支える土台としても、ここのステップはとても大切です。
やることは以下の3つ
- その(1):単語の知識を仕入れる
- その(2):文法の知識を仕入れる
- その(3):上記2つを使いながら精読の練習をする
その(1)と(2)は、要は単語学習、文法学習のことです。
正確な読みのためには、正確な単語と文法の知識が土台となります。
▽ その(3)でその知識を使いながら、実際に英文を読んでいく
という流れです。
その(1):単語の知識を仕入れる
リーディングは、「その英文にどんな単語があるのか?」を認識することからはじまります。これを「単語認知」と言います。
やはりこんな状況だと、英文を理解していくのはとても大変です。
もちろん知らない単語というのはいつになっても出くわすものです(日本語を読むときでさえです)。そのため、「前後の文脈から意味を推測する」というストラテジーも大切です。
ただ、そうするためにも、不明な単語以外の部分はしっかり理解できている必要があります。
「そこで使われている単語をあまり知らない → 一通り知っている」という状態にするだけでも、英文を見たときの印象がガラッと変わり、格段に読み進めやすくなったりします。
リーディングを支える主な要素として、長期的に増やしていくようにしましょう。
基本的には単語帳を使いながら、まとめて学習していくのがやはり効率的なやり方です。
スペル・発音・意味の3つをセットで覚える
単語を覚える際、特にやるべきことは以下の2つです。
- スペルを読み上げて、正確かつスムーズに発音できるようにする
- その上で意味も想起できるようにする
2つ目の意味を覚えるのは当然として、意外に見落とされがちなのが1つ目ではないかと思います。
「読み進めていても、その単語が何の単語か、1つ1つ認識していくだけでもストレスに感じてしまう…」
このようなことはないでしょうか?
つまりリーディングでは、「文字(スペル)を捉えつつそれがどの単語なのかを認知する」だけでも、そうとう頭に負荷がかかっているということです。
これでは、より大きな範囲で文構造をとらえたり、文意を理解したりということに集中しずらくなり、スムーズな読みが阻害されてしまいます。
またもう1つ大事なポイントは、人は見た単語の意味を認識する際に、一度頭の中で音声化(発音)しているということです(門田, 2015)。
門田(2015)によると、人は単語の意味を認識する際「単語を視覚でとらえる → 一旦音声に変える → その音をもとに意味を想起する」という流れを踏むとされています。
たとえば以下は “coffee” という単語の例です。
上記太い矢印のようなルートが、意味への自然なアクセスルートとして知られています。
いざリーディングになったときに、並んでいるそれぞれの単語について、このような「見る → 音声化 → 意味想起」ということをストレスなくできることが、スムーズな読みを支える一番の基礎となります。
単語帳で学習するときから、しっかりと文字を目で捉え、それを口で発音し、意味も想起できるようにしましょう。反復して繰り返すことで、その3つを瞬時にこなせるようにしていきましょう。
その(2):文法の知識を仕入れる
単語と並んで重要なのが「文法」です。
単語は「そもそも知ってないとリーディングで太刀打ちできない」というのが比較的わかりやすいと思います。
一方、文法は英文を眺めていてもあまりわかりやすい形で表に出てこないため、「なぜ必要か?」ということがつかみにくいかもしれません。
ですが、やはり文法も「英文の意味を決定する」際の非常に大事なファクターの1つです。「英文を正しく理解できる or できない」ということを大きく左右します。
文法が意味に影響を与えていることがわかる例
たとえば下記は、ただ単語を羅列している状態です。
おそらくこの時点では、ほとんど意味が見えてこないと思います。ですが、以下のように文法的な要素を順に加えていくと、意味の輪郭がだんだんとハッキリしてくるのがわかります。
↓「語順」を並べ替えます。
[1]よりも少しだけ意味がつかみやすいと思います。
↓さらに冠詞と時制といった情報も足してみます。
↓前置詞で「位置関係」を追加。
↓関係詞で「修飾関係」を追加。
↓接続詞で「2つの出来事の関係性」を追加。
完成です!
(なお以上の例はGrabe(2009, p.202-203)を参考にしています。)
もし仮に、文法(語順や、文法的な機能を果たすat, the, who, whenなど)をまったく知らなかったり無視して読んでしまうと、[1]〜[5]のように書かれた文を読もうとするのと近い状態になってしまいます。
これでは書き手がその文に込めた意味を、きちんとつかむことはできません。
このように文法は、リーディングで正確に意味を理解するために必須の情報です。
文法は英語を扱えるようになるための近道
あらかじめ一通り文法を学んでおくと、学習がかなり効率化します。
幸い文法は単語と違って、覚えないといけない数も多くありません。
英語の基本的な仕組みについて、「少ない知識をもっているだけで、あらゆる文を正確に理解できる」というのが文法です。学習の効率を上げてくれます。
特に、文法が苦手な人に向けて
もしかするとどこかのタイミングで「文法は苦手…」となった人も少なくないかもしれません。
そのような場合の1つ大事なポイントとしては以下です。
- まずは基本の文法事項から順番に学んでいく。
- 仮に中学文法ができていない場合は、まずはそこだけを中心にやればOK。
- そこが固まってきたら、高校文法の基礎事項くらいまでを学習。
- マニアックな文法用語や例外事項は覚える必要はなし(or 後回し)。
1つずつ丁寧に段階を飛ばさずに押さえて行けば、文法はそこまで難しいものではありません。
英語の基本的な仕組みを知り、スッキリと意味をとりながら読み進められるようにしていきましょう。
その(3):精読の練習をする
ここからは実際に英文を読んでいく学習に入ります。
覚えた単語や文法の知識を使いながら、英文の意味を正確に取っていく練習をします。
単語や文法の学習では、学ぶべき単語、文法項目があらかじめ決まっています。
ですが精読では、目の前の英文にどの単語、どの文法が使われているかを「自分で判断」し、正確に理解できるように訓練していきます。その中で英文を見るときの分析眼を養っていきましょう。
文構造を注意して文を見てみる例
たとえば以下のような英文を精読する場合。
「語順や文構造」を正しく把握することは、正確な意味の理解に大きく影響します。
以下はその観点で英文を見てみた例です。

・The researchがS
・publishedはVではなくSを修飾(詳しく説明)しているだけ。理由:これをVとすると、後ろにsayも出てきてVが2つになってしまうから。
・sayはうしろによくOをとり、今回は「that〜文尾」がO
・thatの中身はまた「S’V’〜の文の形」が来る
・関係詞 whichの部分は、前の名詞(S’)を修飾する
etc.
例えばこのような分析の結果、以下のような文意を導くことになります。
このようにあらかじめ身につけた文法知識も使いながら、正しく文意を取れるように練習していきます。
この時点では日本語の訳を利用もOKです。
最終的には「英語を英語のまま理解していく」ということを目指して行きますが、この時点ではそれについては二の次で良いと思います。
英語と日本語を対応させた方が、より深く英文の意味の取り方をつかめることも少なくありません。
ただ、あくまで「英文の理解の仕方」を学ぶのが本筋なので、ルールに則り意味の本質がきちんとつかめているなら、細かい和訳の言い回しなどにこだわる必要はありません。
また必ず訳を書いてみないといけない、ということもありません。
じっくり時間をかけてもOKです。
また読み全体のスピードも別途上げていく部分になります。
なので、正確な意味の把握を阻害するくらいであれば、スピードにこだわる必要はありません。
多少時間がかかったとしても、ここの段階では「自力で正確に意味が取れる」ということを目指しましょう。
4. その②:英文を「素早く」読んで理解するための学習

ここでの目標は、「素早く読んで理解するスキル」を身につけることです。
「素早く読める」ことのメリット1
なお「そもそもなぜ速く読めた方が良いのか?」ということですが、もちろん「読む時間が少なくて済む」というのは言うまでもないと思います。
仕事でも英語の試験でも、時間制限がある中で、あるまとまった量の英文を理解することが求められます。
正確に理解できても、時間がかかりすぎていては、なかなか「実戦で通用するリーディング力」とはいえないでしょう。
「素早く読める」ことのメリット2
また、実は素早く読めること自体が「理解力を上げてくれる」という重要なメリットもあります。
たとえば長文を読んでいて、
「ここの文構造はこうなってるから…」
と1つ1つ意識的に考える必要があり、1つの文でさえ意味を取るのに多くの労力と時間がかかってしまう場合。
このような読みが基本になっているケースでは、
最後まで読んだけど、どんな内容だったかあんまり覚えていない…
ずっと頭を使っている感じで、すぐヘトヘトになる…
etc.
ということがよく起きてしまいます。
ワーキングメモリには容量の限界がある
言語の処理を含め、人のあらゆる情報処理を司っている脳内の部位を「ワーキングメモリ」と言います。
上記のような問題が起きてしまうのは、もともとワーキングメモリの容量に限りがあるからです。
本来のスムーズなリーディングでは、
▽ さらにそれを忘れないうちに、次の文も素早く理解する
▽ さらにそれを忘れないうちに、次の文も素早く理解する
▽ 上記の繰り返し・・・
と、いわばサーフィンの波乗りのように、それぞれの文をどんどん処理しつつ、互いに結びけながら、うまく文章全体での内容把握につなげて行かなければいけません。
ただしこれが、「この単語は..」「この文法は..」などと、常に細部の処理に手間取ってしまう場合は、毎回1文ごとの理解に多くの時間と心的エネルギーが消費されてしまいます。
そうこうしているうちに、それまで理解した内容も忘れてしまいます。結果、あとで振り返ったときに、「1文ずつ一生懸命意味を取ったけど、結局なんについての文章なのかよくかわからない」という、木を見て森を見ずのようなリーディングになってしまいます。
ワーキングメモリを効率的に使う
このため「各文を速く読み進められる」ということが、リーディングの前提条件として非常に重要です。
ワーキングメモリには時間制限があるので、ゆっくりじっくり読んでいてはいけない。速く読めるようになるほど、ワーキングメモリの負担が減り、そのぶん深く理解できたり、多くのことを最後まで覚えていることができる。速く読むことが英文理解を促し、そしてより良く理解できるようになれば、また速度も上がる、いわば正の連鎖を繰り返し、読解力は全体的に向上して行く。
(湯舟, 2011, p.9)

「速く読める」ことで、上記のような好循環をつくることにつながっていきます。
速く読めるようにするための練習法
ではどのような学習して行けば良いか?
これには音読など、「英文を反復して読み込んで行く練習」が必要です。
ただし機械的にとにかく早口で読むのを繰り返せば良いか、というともちろんそうではありません。これでは早口は上達するかもしれませんが、本来のリーディングとはまったくかけはなれた練習になってしまいます。
以下の3つのポイントをしっかり意識することが大切です。
- ポイント(1):「内容を理解する」ことを念頭に置く
- ポイント(2):反復する中で脳内処理を「自動化」する
- ポイント(3):日本語を介さない「直読直解」を身につける
ポイント(1):「内容を理解する」ことを念頭に置く
「内容を理解すること」がリーディング本来の目的です。
すべての練習はこのために取り組んでいます。
「理解しよう!」と意識して英文を読むからこそ、「理解に必要な様々な脳内処理」に取り組むことになります。その結果として、それぞれの処理が鍛えられて行きます。
リーディングの処理メカニズム
ではリーディング中、脳内ではどんな処理が行われているのでしょうか?
さらに、1文ごとの意味をつかもうとすると、そこに含まれる単語や文法事項もきちんと処理しつつ読んでいく必要があります。
以下は、そういったリーディングの最中に行われる情報処理の流れを、簡単に表したものです。

- ① 単語認知:見たスペルから音声化もしながら何の単語かを特定 → 単語の意味やイメージを認識する
- ② 文法処理:文構造やその他文法を認識する
- ③ 意味処理:上記①②から、節や文単位での意味をつかむ
- ④ 要旨をつかむ:各文をまたいで、情報の取捨選択なども行いつつ、書かれている内容について全体的に把握していく
- ⑤ 解釈する:自分がすでに持っている一般常識的な知識も使い、書かれている内容に解釈を加える
大まかにですが、上記のような処理プロセスが関わっています。
「理解する」ということを意識することで、このように数多くの情報処理に取り組むことになります。
一方で、意味も考えずただ機械的に読み上げだけでは、そういったことに取り組むことはできません。
私たちは、実際に「やったこと、処理したこと」を学習します。[中略] 「やっていないこと、処理していないこと」は、学習も記憶形成もできません。
(門田, 2012, p.318)
「スピード」を追求していくのは大切です。
ただ、あくまで「理解する」ことを大切に、それに必要な処理に積極的に取り組んで鍛えていくことが重要です。
ポイント(2):反復する中で脳内処理を「自動化」する
「理解しながら読むことが重要とわかった。けど、ちゃんと意味をとりながら読もうとするとスピードが出ない…」
これを克服するには魔法はなく「繰り返し読む練習をする」しかありません。
やり方について、要点をまとめると以下です。
- 同じ文章を理解しようとしながら、何度も読みましょう。
- その中で、「単語・文法を認識しながら、パッと文意まで見出す」ということを各文を読み進めながら繰り返して行きます。
- はじめは、それぞれの単語の意味を思い出したり、文構造を認識して意味を見出すまでに多くの労力と時間がかかるかもしれません(かなり集中力も要り、きついと思います)。
- ですが、この「負荷」をかけた状態で繰り返し練習することが大切です。
- 上記のような練習を積んでいくと、徐々に同じことが、スムーズに楽にこなせるようになってきます(筋トレと同じです)。
「自動化」がスムーズな読みへのカギ。
このように、ターゲットとする動作やそれに伴う脳内の処理に練習を通して何度も取り組むことで、同じことが少しずつ「スピーディーに」かつ「労力もかけず」行えるようになってきます。これを「自動化」と言います(Johnson, 1996)。
リーディングの場合も、この「自動化」が大切です。
そうすることでリーディングの最中、より多くの意識や集中力(ワーキングメモリのリソース)を、文章全体での内容把握や記憶として保持するといった方に割きやすくなっていきます。
結果、全体としてより効率的な読みをすることができるようになります。

反復して読む練習をすることで、このようなバランスを目指すことが重要です。
そうすれば文章を最後まで読み終えたときに、「なるほどこういう内容か!」としっかり理解もしやすくなるでしょう。
(なお「自動化」そのものについては、英語のスピードについていけない。←『スキルの自動化』が鍵です。も参考ください。)
単語認知の自動化には「音読」が効果的。
前半でも書きましたが、「目にした個々の単語から、いかにストレスなく意味想起までこなせるか」ということは、スムーズなリーディングに欠かせません。
そして以下のような処理で、単語の意味まで到達するのでした。
単語を視覚でとらえる → 一旦音声に変える → その音をもとに意味を想起する
門田(2015)は、「音読」による練習が、特にこの中の「見た文字を音声に変える」という処理を鍛えるのに効果があると指摘しています。
反復して読む練習をしていく際に、このような音読も取り入れ、「単語認知に積極的に負荷をかけていく」というのも有効です。
なお「音読」については、詳しくまとめていますので以下をご覧ください。
英語音読の総まとめ【基礎知識〜実践テクニックまで網羅】
英語の音読について、網羅的に理解するためのまとめ記事です。音読についての基礎知識〜実際に練習するにあたっての技術的なテクニック論まで、計15を超える記事で解説。音読について幅広く理解し、練習の密度を最大限上げて行きたい方はぜひチェックください。
その他コツ:今の自分のレベルより「ほんの少しだけ」難しい英文で練習すること。
繰り返し読む練習をするに当たっては、初対面の単語や、馴染みのない文構造が多く含まれているような英文は適しません。
- 馴染みのない語句や文法などがが全体の1割以下
- その他は基本的に問題なく理解できる
- 「練習しているうちに、最後までスムーズに理解しながら読み進められるようになりそう」という感覚がもてる
このような基準で選ぶようにしましょう。
自動車の教習やピアノのレッスンでも、一度にたくさんの技術を教えない、練習しようとしない、というのと同じです。
このようなサイクルで進めていくようにしましょう。
ポイント(3):日本語を介さない「直読直解」を身につける
最後にもう1つ、英文をスピーディーに読めるようになるために欠かせないのがこのスキルです。具体的には以下のようなスキルです。
- 日本語に訳さず、見た英語から直接その意味内容をつかめる
- 返り読みせず、英語の語順で左→右に理解できる
1点目について、湯舟(2011)は以下のように指摘しています。
英語を和訳しながら理解していくことは、その前に読んだ情報を捨てながら読むようなものと言える。和訳という行為もワーキングメモリの作業場で行われるため、仕方なく前に読んだ内容を一掃してから和訳の作業に集中することになる。こうなると、やっとの思いで英文を読み終えたのに、内容が全く頭に残っていない状態に陥る。
(p.9)
また2点目の「返り読み」についても、以下の通りです。
[返り読みをしながらだと] 左から一度読んで、今度は右に戻って意味を取ろうとするので、単純に考えても読むのに2倍以上の時間が掛かる。
(p.3)
このように、「和訳」と「返り読み」は素早い読みを阻害し、英語リーディングの大きな阻害要因となります。
ではどのように直読直解のスキルを身につけていけばいいのでしょうか?
対策としては大きく2つです。
コツその1:簡単な英文で、大量に読む練習を積む
先ほども書いた「ほんの少しだけ難しい英文」ということが、ここでも大切になってきます。
そもそも日本人である我々が、特に難解な英文を読むときに、それまで積み上げて来た日本語というリソースに頼ってしまいたくなるのは当然と言えます。
単語や文法レベル、またトピックが身近なものであるほど、直感的に内容を理解をつかみやすくなってきます。
そういったものを中心に使うようにし、「見た英文から、直接イメージや概念を想起する」ことを習慣化していきまましょう。
» 参考:英語の音読でイメージが重要な理由【イメージするコツも解説】
コツその2:スラッシュリーディングを利用する
スラッシュリーディングは、/で「意味のカタマリ」を見えやすくし、そのカタマリごとに左→右へと順に理解して行く習慣を身につける方法です。
どのような方法か、簡単にイメージを表すと以下のようになります。

このように、あくまで①→②→③→④と順に意味想起をして行きます。
たとえば、日本語(返り読み)に慣れ切ってしまっていると、主語のSlash readingをとらえたらすぐ④などに飛んで意味をとりたくなってしまいます。その方が、日本語の語順として自然だからです。
なのでかなり意識していないと、音読で声を出して左→右に読み上げていたとしても、「②③のあたりは処理をスルーしてしまい、先に④の意味を咀嚼してからまた②③に戻って理解しようとする」といったことも起きてしまいます。
うまく利用することで、あくまで「英語の語順通り、左から順番に意味をとっていく」という習慣を身につけていく(自動化する)ことができます。
音読と一緒に、こういったテクニックも取り入れて慣れていくことが効果的です。
なおスラッシュリーディングの詳しい効果については、以下の2つの記事でかなり深く理解ができると思います。合わせてご覧ください。
5. その③:「正確さ+流暢さ」をさらに伸ばすための学習

ここでは、その①・②で身につけたことを土台に、「正確に・速く読む力をさらに伸ばして行く」ための学習となります。
やること
いわゆる「多読」という方法で行なっていきます。
基本的には、多くの英文を理解しながら読んでいけばそれでOKです。
「英語の学習のため」ということを意識するorしないに関わらず、たとえば、興味がある内容だからと、趣味として読み進めるというのでもまったくOKです。
多読のメリット
「そんなうまい話があるの?」と感じてしまうかもしれませんが、あります。
もし「内容を理解しながら読めている」のであれば、効果は期待できます。
単語の認知や文法の処理など、リーディングに必要な脳内処理や言語処理を、継続的に取り組んでいることになるからです。
「この単語とこの単語はよく一緒に使われてるな」
「ここの文構造はこうなっているな」
etc.
上記のようなことが、特に「意識としては」登っていなかったとしても、また「これを新しい知識として覚えよう!」とは思っていなくても、あらゆる文章の中で同じような処理を繰り返していれば、いつのまにかそれが自分の力として身についている、ということがあります。
このような学習は「潜在学習(implicit learning)」と呼ばれます。
第二言語習得研究でも、大事な学習プロセスの1つとされているものです。
When we read […], we encourage implicit learning by the extensive repetitive input from reading
= 私たちが読めば [中略]、そこから繰り返し得られる大量の英語インプットによって、潜在学習が促される(Grabe, 2009, p.61; 訳, 松田)
最大の課題は継続できるかどうか
ただこの手の学習のポイントは、「成果を感じられるまでに時間がかかる」ということです。
単語学習のように「今日はこれだけ単語を覚えた!」といったように、その日の成果をすぐに感じられるようなスタイルの学習では基本的にはありません。
そのため、「いかに英語に触れることを習慣的に継続できるか」ということが大切なポイントになります。
そのための大事なコツとしては、大きく2つあります。
コツ1:英語学習のために読まない
英語の学習のためではなく、何か自分にとって必要な情報を得るために読む、もしくは純粋に内容を楽しむために読む。
こういったことが、長期的に継続していくには、重要かと思います。
中には、すでにそういった状況にある方もいらっしゃると思います。
これは、学習のためということではなく、業務を進める上で必要だから読んでいる、という状況です。
おそらくその仕事をつづけている限り、英文を継続して読み続けることになるでしょう。
またその他にも、自分の生活と関わりのある記事や、自分が興味のある分野の本、または好きな小説を楽しむために読む、といったようなことも、継続したリーディングへとつながるはずです。
「英語学習のために読まない」とやや極端に書きましたが、もちろん学習用にデザインされたリーディングの参考書やテキストなどで多読を行なったとして、それを「効果がない」と否定することはできません。
ただやはり「飽きずに継続して行く」ということを考えると、何かしら自分の生活に関わりがあって読む必要性があるもの、学習ということを忘れて純粋に読みたいと思えるものを見つけて利用していく、という方が進めやすいのではないかと思います。
コツ2:簡単な英語レベルのものを使う
これも多読にとても重要な要素と思います。
頻繁に単語の意味を調べたり、文の構造など分析的にを考えないといけないような文章では、「読む」という行為自体に集中しにくくなるためです。
どうしても「内容」よりも「言語の形」ばかりに意識が割かれてしまい、時間もかかってしまいます。
これでは継続も難しくなってしまいます。
英文レベルの目安
先ほど「その②:英文を「素早く」読んで理解する学習」では、今の自分のレベルより「ほんの少しだけ」難しい英文と書きました。
ですが多読では「基本的に難しいと思う要素がなく、読んでいてストレスを感じないもの」を使うのが理想です。
たとえば単語でいえば、Grabe(2009)は、「文中の98-99%の単語はすでに知っていること」が望ましいとしています。
このように、とにかく内容に集中できるということを優先にしていきましょう。
さいごに

以上リーディングの学習法についてでした。
正確性とスピードを、バランスよく身につけていきましょう。
その際の参考にされてみてください。
おわり
ーーー
【参考文献】
Grabe, W. 2009. Reading in a second language: moving from theory to practice. Cambridge: Cambridge University Press.
Johnson, K. 1996. Language teaching and skill learning. Oxford: Blackwell.
門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.
湯舟英一. 2011. 英文速読におけるチャンクとワーキングメモリの役割.『Dialogue : TALK紀要』9, pp.1-20.