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シャドーイングでひとまず文法を捨てる勇気【実は近道です。】

シャドーイング

Illustration by Dmitry Nikulnikov from Icons8

シャドーイングって大変だし、とてもじゃないけど文法とか文構造とかまで把握できない…
ただ聞いた音を言っていくだけになるけど、それで意味あるの?

今回はこんな疑問に答えます。

「シャドーイングを形にしたい、けど文法の大切さも知っているからこそ無視はできない。」
このような板挟みでお悩みの方も多いと思います。

ですが大丈夫です。
文法については、勇気を持って一旦捨てましょう。
それでもシャドーイングのメリットはしっかりと得られます。

本記事を読むと、そのように言える理由や、学習の方向性についても理解できると思います。

それでは行きましょう。

シャドーイングで文法を捨てる勇気【実は近道です。】

シャドーイング中、一旦文法については度外視してOKです。

というのも、シャドーイングは文法・文構造的な処理よりも、「英語の音の知覚力」をまず集中的に鍛えて行きたいトレーニングだからです。

そもそもシャドーイングは相当なハードタスク

シャドーイング中、文法まで意識しようとしたとしても、「とてもじゃないけどできない」「難しい、、」などと感じると思いますが、これは自然なことだと思います。

そもそもシャドーイングは、脳に対して、かなり認知的に忙しいタスクを課すものだからです。

モデル音源が流れ始めた瞬間から、「聴いた音をマネして言う」ということを、スピードに遅れず、ひたすら繰り返して行かないといけません。

マネをしつつしっかり着いて行こうとすると、どうしても意識が音の扱いに終始してしまい、文法などより深い処理まで行うできません。文構造などはスルーして、次の部分を言って行くかたちになります。

おそらくこのような状態が、なんだか英語の上辺だけをすくいながら練習している感じがしてしまい、「本当に効果があるのかな?」と心配になってしまうのだと思います。

「文法まで気にしないから、実は良い」という視点もある。

ですが、「文法を意識しない = 悪」ではありません。
発想は実は逆で、「文法まで意識できないから良い」ということです。

それは、シャドーイングが以下のような特徴を持つ練習だからです(門田, 2015)。

  • 音声の聴き取りとその再現(音マネ)だけに集中しないと上手くこなせないほどのハードタスクをあえて課す
  • それによって、学習者に音に関わる処理だけに終始させる
  • 結果、音声知覚処理が鍛えられていく

上記の通りです。

一旦文法などは置いておき、「モデル音を注意深く聴き取る→すかさずマネする」という行為だけをフル回転で取り組ませるのがシャドーイングという練習です。それを何度も繰り返すことによって、関連する脳内の処理(音声知覚)が無意識的に行えるほど鍛えられて行きます。

応用言語学者の門田(2015)は、以上のようなことを「音声知覚の自動化」として、シャドーイングの主要なメリットの1つとして指摘しています。

普段のリスニングだけでは、音声知覚を鍛える機会が少ない。

実は音声知覚は、シャドーイングなどで意識的に取り組まないと、なかなか強化しずらい部分でもあります。

普段のリスニングでは、たとえ聴き取れない音があったとしても、周囲の文脈情報や、全体の意味内容などから「推測」で補えてしまう場合が多いからです。

たとえば、以下のような例です。

He bought a lot … gifts … department.

… の部分は、音として聴き取れなかった部分ですが、おそらくなんとなく入る単語や、文全体の意味はすぐに予測がつくのではないでしょうか?

たとえば以下です。

He bought a lot (of) gifts (at the) department.

of, atの前置詞、theの冠詞といった語は「機能語」と呼ばれます。これらは基本的に短く弱く発音され、音としてはかなり聴き取りずらいものになります。

ただ普段のリスニングでは、そういった細かい音が拾えなかったとしても、そこでコミュニケーションを諦めることはできません。瞬時に文全体や、周囲の単語の組み合わせなどから逆算して、不明な部分を補いつつメッセージを理解しています。

ただし、使わない処理は鍛えられないという事実。

ただ上記のような聞き方は、耳から入ってきた音に対し、脳内で音声的な処理を施しているわけではありません。

私たちは、実際に「やったこと、処理したこと」を学習します。[中略]「やっていないこと、処理していないこと」は、学習も記憶形成もできません。

(門田, 2012, p. 318)

これは、筋トレと良く似ています。

いわば、本当は腕の筋肉を鍛えたいのに、他の筋肉や身体全体の反動も使ってウェイトを持ち上げているようなものです。一見ウェイトは持ち上がって良さそうですが、腕筋自体に負荷がかかっているわけではないため、そこが効率的に強化されることはありません。

このような状態では、いくら回数をこなしたとしても、なかなか目標とする成果は得られません。

シャドーイングも同じで、音声知覚をせずして、音声知覚力が鍛えられることはありません。

少なくともトレーニング段階では、細部の音声処理力を目一杯上げておくが吉。

実戦のリスニングでは、毎回、英文の細かい音まで注意して聴くことはなかなかできません。

いちいち「今なんて発音したんだろう?」などと考えていては、そこでコミュニケーションが止まってしまうからです。結果、音声知覚処理を効率的に強化していくことが困難になり、いつまでも多くを推測に頼るような理解の仕方になってしまいます。

なので、少なくとも「トレーニング段階」のシャドーイングでは、あえて文法などといった他の処理要素は一旦捨て、ピンポイントに音声知覚だけに注力し、強化して行きましょう。

  • しっかりと音源を聴く
  • 細かい間やイントネーション、リズム、音声変化まで自分の口で再現(音マネ)する

この2つを意識することで、音を聴き取るために必要な「音声知覚」処理に取り組むことになります。反復して繰り返すことで、その処理が鍛えられて行きます。

シャドーイングでは、まずは音だけに注力してOKです。

まとめ

  • シャドーイングでは、一旦文法は気にしなくてOK
  • しっかり音を聴き、それを真似することに集中
  • 理由は、リスニングにおける「音声知覚」を集中的に伸ばすため

以上の通りです!

なお、今回はシャドーイングの効能として「リスニング」しかもその中の「音声知覚」について、メインに触れました。

ただし、「スピーキング」や「文法処理を伴う意味内容の理解」といった、他の側面に対するシャドーイングの効果や用途を否定するものではありません。

If you run after two hares, you will catch neither.
(二兎を追うもの、一兎を得ず。)

ということで、まずはファーストステップとして、音の聴き取りに集中した方が吉というスタンスで書いています。

「選択と集中が大事!」という内容でした。
よければ参考ください。

おわり


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【参考文献】
門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.