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瞬間英作文はTOEICに効果ある?【第二言語習得論的に解説】

TOEIC 瞬間英作文

瞬間英作文はTOEICに効果があるのでしょうか?

「スコアアップに効果があるか知りたい。」
「あるならどのういう意味で効果があるか知りたい。」
「どう学習に活かしていけば良いか知りたい。」

今日はこんな疑問に答えます。

この記事で理解できること

  • TOEICに瞬間英作文は効果があるかどうか
  • どういう部分で効果があるか
  • 普段の練習にどう活かしていけば良いか

今回も主観に寄りすぎないよう、第二言語習得分野の理論背景にも触れつつ私なりの考えを書いてみたいと思います。
(なお、今回はTOEIC Listening & Reading に限定して書いております。)

では行きましょう。

瞬間英作文はTOEICに効果ある?


結論から書くと、

  • スコアアップに間接的に影響はある
  • ただ多くの場合、これに取り組んだだけでスコアに直結するものではない

となります。

理由は、瞬間英作文がTOEICのListeningやReadingで必要となるスキルの一部を鍛えるものではあるものの、実際は他のスキルも複合的に求められるからです。

どういうことか詳しく見ていきましょう。

TOEIC vs 瞬間英作文でのスキルの違い

まずTOEICテスト、つまりListeningとReadingで求められるスキルとは何でしょうか。

研究者の門田(2015)によると、人間はListeningのとき「音声を聞いてからメッセージを理解するまで」、脳内で以下のようなプロセスを踏んでいます。

また、それぞれの処理プロセスの役割は、

  • ①音声知覚:どんな音なのかを認識する
  • ②語彙処理:それをもとに使われている単語を認識する
  • ③統語処理:文法知識をもとに文の構造を把握する
  • ④意味処理:文単位での意味を把握する
  • ⑤文脈処理:その文の意味が文脈に照らして間違ってないか判断する
  • ⑥スキーマ処理:それまで聞き手自身が生きてきた経験などから得た知識と照らし、内容を解釈しようとする

となります。
(なお、リーディングの場合は主に入りの部分の「音声♪→①音声知覚」が「文字→視覚による知覚」に変わります。それ以降の理解プロセスはリスニングの場合とだいたい同じです。)

一方、瞬間英作文はどうでしょうか。

瞬間英作文は、主に③統語(文法)処理のプロセスを鍛える練習です。

これは瞬間英作文が、スピーキングのようなアウトプットに近い練習法だからです。

アウトプットの大きな特徴の1つは、学習者が語順や文構造、その他の英文法的な面を意識して取り組む点です(Swain, 1985, 1995)。

瞬間英作文では、日本語を見て1から自分で英文を起こさないといけません。
なので語順、細かい時制、-ing -edといった動詞の活用などまで、しっかり意識して取り組む必要があります。

結果、しっかり取り組むと統語(文法)処理が鍛えられます。
» この点について詳しく知りたい方は【瞬間英作文ってどんな効果があるの?】をご覧ください。

ただお分かりのように、本来Listeningでは①〜⑥までの処理が求められるのに対し、瞬間英作文の守備範囲は主に③統語(文法)処理のみとかなり限られています。

結論:瞬間英作でカバーできる範囲は限られる

ということで、瞬間英作文「だけ」に取り組んでも、TOEICで問題なく正解できるほどの理解力を支えるスキルは鍛えられません。

仮に、③の統語処理だけスムーズにできたとしても、①の音声知覚ができないと文構造どころか②の単語の認識すらできないでしょう。

また仮に①〜③がある程度は固まっていたとしても同じです。
④以降が守備範囲とする「文単位、パラグラフ単位での理解」「自分が持っている一般常識的な知識をうまく使って聞いたものを解釈する」などができないと、なかなか内容を「理解した!」とはいきません。

「瞬間英作文 = 即スコアアップ」とはなかなかいかないでしょう。

瞬間英作文をやる意味・メリット


とここまで否定的なトーンで書いてきました。
ただ「なんとか成果を出したい!」と思っている方も多いと思いますので、後半は瞬間英作文をやるプラスの面、またどのように学習に活かして行けばいいかにも触れたいと思います。

以下、前半の内容を踏まえての Implication(示唆)です。

即スコアアップとはいかないものの、特に「統語(文法)の処理が弱い人」はやはり瞬間英作文をやるメリットはあると思います。

主なメリットは以下の2つです。

  • ①正確な理解力アップに貢献
  • ②普段の学習そのものをより効果的にしてくれる

①正確な理解力アップに貢献

他の処理スキルとバランス良く鍛えていくことが前提ですが、瞬間英作文はリスニング・リーディングでの「正確な理解力」に貢献します。

統語(文法)処理が適切にできると、「単語どうしの関係性」と「それが成す意味」を正しく理解できるからです。

例えばリスニングを例に思い浮かべてみましょう。特にスピードが速いときなど、

  • 音も意味も認識しやすい動詞や名詞など単語(内容語と言います)だけ聞き、
  • 細かいa, the, at, of, if, thatなどの単語(機能語と言います)は無視して聞いてしまう、
  • 結果、内容語だけをつなぎ合わせて内容を推測する

ことがあるのではないでしょうか。

例えばこんな感じです。

When…think…hear…won…Jones account?
(*Jones account = Jones社との契約窓口)

このような内容語だけを聞き取って理解はできますかね?
↑ちなみにこれはTOEIC公式問題集 Part 2からの一文です。

正解はこちら。↓

When do you think we’ll hear if we’ve won the Jones account?
= Jones社との取引を勝ち取っとたかは、いつわかると思いますか?

なかなか正確に理解するのは大変だったと思います。

単語のみの処理だと、その単語どうしを何となくつなげて推測するしかないからです。
どうしても当てずっぽうになり精度が落ちてしまいます。

参考にもう一ついきましょう。

…better call…technician…repair…photocopier.
(*photocopier = コピー機)

この時点ではボンヤリとしか理解できないと思います。
ですが、機能語を足して、

You’d better call the technician to repair the photocopier.
= 技術者に電話をしてコピー機を修理してもらうべきです。

だと各単語の関係性がハッキリし、文構造も把握できて意味がクリアになったと思います。

正確な理解に統語(文法)は役立つ

このように、機能語も含めた語順やその他文法事項まで処理することで、単語と単語の関係性がわかり正確な内容の理解ができます。

研究者Grabe & Stoller (2011)の言うように、統語(文法)は

… clarify how the words are supposed to be understood.

(p.16)

(= 訳:単語どうしがどのように理解されるべきか明らかにする。)

と言うことです。

そもそも我々日本人が、慣れない英語の細かい文法などを無視してしまうのは仕方がありません。

脳のキャパに余裕がない学習者が「内容語 > 文法など細かい言語的側面」でことばを処理してしまうのは、学者のVanPatten (2007) が述べています。第二言語学習者に広く見られるケースとして言われていることです。

(なおリスニングの場合、機能語を処理できないのは「音声知覚」が難しいこととあいまっていることが多々あります。)

意識的に鍛えていけば問題ありません。

とはいえ、弱い筋肉は鍛えればOKです。
この点、瞬間英作文が一つ良い練習になり得ます。

さっき書いたように、瞬間英作文は自分で語順など文法的側面を完成させないとけない練習です。

しっかり取り組み文法を処理できる力がつけば、単語どうしつながりも正確に把握できるようになっていきます。

そして、音声知覚など他のスキルともうまく絡めば「正確に内容が理解ができる→正しい選択肢を選べる→スコアアップ」とつながっていくはずです。

②普段の学習そのものをより効果的にしてくれる

2つ目のメリットです。

瞬間英作文などであらかじめ意識的に文法練習に取り組んでおくと、他の長文などに触れたときにもその頭の使い方をする確率が高くなります。

例えば、単語帳を使って学習したとき、その後TOEICの長文など読んでいると

「あっこの単語、単語帳でやったな!」
「なんだっけ?」

などと、前に学習した単語の存在に気づくことがあります。

そしてその単語が「前後の文脈の中でどのような意味で使われているか」を知り、より印象深く覚えやすくなった、ということが起きたりします。

文法でもそれと似たことが起きます。

もしあらかじめ「使役have」「have O C」のような形をしっかり学んでおくと、例えば長文で、

The Lowmaster Toronto office is pleased to have such a promising group of new employees become part of our consulting team.

(TOEIC公式問題集 Part 7より)

のような文を見たときに、

「あ、今回このhaveはhave O become(C) の形になってるな」
「全体としては、新入社員がコンサルティングチームになったことを喜んでるんだな」

と気づき、「haveOC」という言語の形とそれが表す意味について理解が深まります。

学者の村野井(2006)が著書の中でまとめていますが、文法などを意識的に学習することは

  • 新たなインプットに触れたときに注意がそこに向きやすくなる
  • そこの言葉の形(文法・単語など)が、どのような意味を表しているのかを掴みやすくなる

と言うことが起きます。

そしてこの様な経験を多く積むことは、学習の促進に繋がります。

意識的に学ぶ→長文の中で反復して使っていく

なので瞬間英作文の練習を最大限に活かすためにこれが大事です。

もちろんはじめは、長文の中でいちいち一箇所に意識が向けながら理解していくのはスピードが落ちてしまいます。

ですが、文構造なども意識しつつそれを音読練習などで重ねて練習していくことで、その頭の使い方が自動化し、いずれスピーディーに理解もできるようになってきます。

音読などで、基本は「内容を理解する」と言うことにベースを置きつつも、

  • 序盤は文法なども少し意識しながら読み進めていく
  • 反復する中で慣れて行き、最後は純粋に「内容を理解する」方に集中してスピーディーに読み進めていく

こんな流れを普段の練習でつくっていくことが大切です。

瞬間英作文で学んだスキルを、音読など他の練習にうまく活かして行きましょう。

まとめ

以上、瞬間英作文のTOEICへの効果と、取り組む意味でした。

  • 瞬間英作文だけでTOEICへの効果は限定的である
  • ただ正確な意味理解力の助けになる
  • 普段の学習効果を促してくれる

という内容でした。

各練習方法の特性や意図をしっかり理解して、日々の学習にとり入れていきましょう。

本記事を読んで「瞬間英作文に取り組みたい」「具体的な手順が知りたい」という方は、こちらの記事も参考にしてみてください。

おわり


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【参考文献】
Educational Testing Service. 2016. 『TOEICテスト公式問題集 新形式問題対応編』東京:国際ビジネスコミュニケーション協会.

Grabe, W. and Stoller, F. L. 2011.Teaching and researching reading. 2nd ed. New York: Routledge.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.

村野井仁. 2006.『第二言語習得研究から見た効果的な言語学習法・指導法』東京:大修館書店.

Swain, M. 1985. Communicative competence: some roles of comprehensible input and comprehensible output in its development. In S. Gass and C. Madden, eds. Input in second language acquisition. Rowley, MA: Newbury House, pp.235-253.

Swain, M. 1995. Three functions of output in second language learning. In G. Cook and G. Seidhofer, eds. Principles and practices in applied linguistics: studies in honor of H. G. Widdowson. Oxford: Oxford University Press, pp.125-144.

VanPatten, B. 2007. Input processing in adult second language acquisition. In B. VanPatten and J. Williams, eds. Theories in second language acquisition: an introduction. Mahwah, NJ : Lawrence Erlbaum Associates, pp.115-135.