英語のスピードについていけない。←『スキルの自動化』が鍵です。
「リスニングも理解できない。速くてぐちゃぐちゃにさえ聴こえる。」
「口からすぐに言葉が出てこない。間が多くて会話がぎこちなくなる。」
「どうすればいい?」
今回はこんな疑問に答えます。
このような壁にぶち当り「どうしたらいいのかわからない..」とお悩みの方は多いと思います。
この問題は、「スピードについていけない」→「じゃあAという練習法をやるべき!」「Bという練習法が効果的!」というほど単純ではありません。
問題の本質、英語学習の本質をしっかりと理解し、今後どのように学習を進めていけばいいか自分で判断できるようになりましょう。
本記事の内容
- 1:英語のスピードについていけないのはなぜ?【絶対に外せない「スキルの自動化」とは】
- 2:スピードについていけるスキルを身につける 【5つのステップ】
なおこの問題は、以前、私自身が実際に苦しんだ問題であり、その疑問を解消したいという思いもあり大学院で英語教授法(TESOL)を学びました。
第二言語習得研究の中でも「スキル習得(Skill acquisiotion)」の観点が主に絡んでくるトピックです。そのあたりの学術的な理論背景にも触れつつ、わかりやすく解説して行きたいと思います。
では行きましょう。
1:英語のスピードについていけないのはなぜ?【絶対に外せない「スキルの自動化」とは】
まず結論から書くと、このようなケースの多くは、英語のスキルが「自動化」してないから、と言えます。
どういうことでしょうか?
以下に順を追って詳しく見ていきます。
前提:英語は「スキル」である!
まず前提として、英語は「スキル」です。
そして「スキル」として学んでいくべきものです。
英語をスキルとして身につけるとは、言い換えると、
やり方を知識として「知っている」だけではなく、「実際にやったらできる」
ということです。
まずここをしっかり押さえておかないと、学習のゴールが変わってしまいますのでとても大事です。
スキルの例
英語に限らず、「スキル」と呼べるものは私たちの身の周りに多くあります。
例えば、
・サッカー、野球などスポーツ
・車やバイク、自転車の運転
・(もっと身近な例だと)スマホやPCキーボードのタイピング
etc.
などもある種のスキルです。
これらすべてに共通するのは、「実際にやったらできる」ことが前提になっている点です。
例えばピアノは、鍵盤を叩く順番や指の押さえる位置を、頭で知っているだけではいけません。実際に指がその通りに動いてこそ演奏が可能になります。
車の運転も、右がアクセル、左がブレーキ、ハンドルを回せば曲がるなど知っているだけではなく、実際に操縦し車体を動かせないといけません。
このように「実際にやったらうまく実践できる」ことを、私たちは「スキル」と呼びます。
英語もスキル → 知識を持っているだけでは不十分。
単語、文法を「知識として覚えている」「知っている」ということは学習のプロセスとしてとても大切です。
ただ、知っているだけではうまく英語でコミュニケーションをとることはできません。
単語や文法などのインプットした知識を「使いこなす」、それによって、リスニングであれば実際に「相手の言っていることを理解できる」、スピーキングなら「自分の言いたいことを伝えられる」という状態にしないといけません。
応用言語学者の門田(2012)の言葉を借りると、
「知っていること」と「できること」とはまったく別物である [中略] なんとか「知っている」状態を「できる」状態に転化することが必要
(p.20)
です。
楽器やスポーツ、運転などと同じように、英語の場合も「身体が覚えている」「反射的に動ける」という「スキルが身についた状態」をゴールにしていく必要があります。
そしてそれを達成するために重要なのが「スキルの自動化」というコンセプトです。
スキルの自動化:「無意識」にそれができる。
学者のJohnson (1996) によると、スキルの自動化とは、
the ability to get things right when no attention is available for getting them right
(p.137)
= 注意が払われていない状態で、物事をうまくできる能力
(訳:松田)
です。
これは言い換えると、「とるべき行動が、無意識的にとれる」ということです。
例えばピアニストと呼ばれる人たちは、「ピアノスキルが自動化」している人の例です。
あれだけ速い指の動きとコンビネーションを、ほとんど意識な注意は払われることなく実践することができます。
より一般的な例では、仕事でPCを使う人のブラインドタッチなんかもそうです。
1個ずつ指の動きを見るとほとんど殺人的な速さですが、これもスキルが自動化した例です。やってる本人は特段指の動きは意識的に注意することなく、文章を打って行くことができます。
自動化したスキルの特徴
このように、
- 正確かつ、スピーディーに
- 特に意識的に注意を払わなくても
- ある行動を実践できる
というのが自動化したスキルの特徴です。
これがさっきも書いた、いわゆる「身体が覚えている」「反射的に動ける」と言う状態です。
これがしっかり得られると、英語の速いスピードにもついて行けるようになります。
ではより具体的に、スキルが自動化して「無意識にその行動ができる」ようになったらどんな良いことがあるのでしょうか?
スキルの自動化 → より大事なことに意識を集中できる
スキルが自動化し、無意識的にその行動をとれるようになってくると、その分頭に余裕が生まれます。
そして余った自分の脳のリソースを「より大事なこと」に集中させることができます。
これはスムーズに自分の目的を達成するために非常に重要です。
例えばメールをタイピングする場合。文をどんどん書いていくには、以下のような様々なことを同時にやってのける必要があります。
② 単語や文法ルールにもとづいて自然な表現になるように1文ずつ書いてく
③ その文を入力するために、ローマ字キーの位置に指を動かし、1個ずつ押していく
さて普通タイピングをするとき、この①〜③のどこに主に意識を向けるべきか(もしくは自然に向いているか)というと、より①に近い方だと思います。
普通、メールを作成するのは「相手にメッセージを伝える」ということが大事で、これが本来の目的です。
これに十分に集中するには、②や③のような部分は自動化し、無意識レベルでできる必要があります。
また同じように「車の運転」の例です。
②前進は右のペダルを踏む、止まるときは左のペダルを踏む、右曲がりはハンドルは時計回りに、左は反時計回りに回す etc.
などと大まかに分けられますが、これも「安全に目的地に到達する」という目的を考えると、より①の方にしっかりドライバーの意識が割かれるべきです。
もし②の自分の手元や足元の方に意識が取られるような状態だと、周りの視界から正しい判断ができず事故を起こしたり、曲がるべき場所で曲がれなかったりしてしまいます。
逆に②がしっかり自動化し無意識にできるようになっていれば、より①に集中でき「安全に目的地に到達する」という目的を達成しやすくなるでしょう。
スキルは一度に色々やってのける必要あり → 「意識」の使い方が鍵
このように「メールのタイピング」や「車の運転」やなど、ある1つのスキルとは、①〜③のようないろいろな部分的なスキル(sub-skills)の集合で成り立っています。
これらのsub-skillsを上手く行いながら、「メールをつくる」「安全に目的地に着く」という目的を達成しています。
学者のJohnson (1996)はこれを、
‘combinational skill’ ー doing more than one thing at the same time
(p.36)
= 「組み合わせのスキル」 ー 同時に1つ以上のことを行うこと
(訳:松田)
として挙げています。
そして、部分的なスキル(sub-skills)の中でも、
- ①のような、本来の目的を上手く達成するためにより意識を割くべき大事なパートのスキル → Higher-level skills
- ②③のような、①を支えるより部分的なスキル → Lower-level skills
としています。
そして「スキルフルな人」というのは、
- Lower-level skillsがしっかりと自動化し、無意識にそれができる
- Higher-level skillsの方により自分の注意や意識を割ける
- 結果、全体としてうまく自分の目的が達成できる
というのが、非常に大きな特徴です。
結論:英語も無意識レベルでこなせるスキルを増やす。
英語の場合も、これを達成することが重要です。
それが速い英語のスピードについていける鍵です。
もしリスニングしている間、
「あの単語の意味なんだっけ?」
「文構造は…」
etc.
と言った、Lower-level skillsのことを考えてしまっている、もしくはそこに意識を向けないと処理できないようでは、スピードにはついていけません。
スピードについていける人は、自動化がしっかり進んでおり、このようなことは意識せずとも頭が勝手に反応しています。
そして、より多くの意識や脳のリソースを、
「次にどんな情報が来そうか?」という予測
etc.
といった、Higher-level skillsに使っています。
結果、「相手の言っていることを上手く理解する」という最終目的を達成しやすくなっています。
スピーキングも同じです。
スピーキングスキルが高い人は、英文を口にするのに
「文法は..」
「発音は..」
などという個別具体的なLower-level skills については自動化しており、意識をほとんど割かなくても正しく処理することができます。
一方で、より高次の
「自分の言っている内容や文は正しいかな?」「誤解を与えてないかな?」と言ったようなチェック
etc.
といった、Higher-level skillsに、意識的な注意や脳のリソースが割かれています。
これによって、「自分の伝えたいことを上手く相手に伝える」という目的を達成しています。
必要な部分に、余った脳のリソースを上手く割けるように
楽器の演奏やメールタイピングと同じように、英語の場合もやはりこれが大事です。
会話中、考えないといけない、意識しないといけないことが多くなればなるほど頭にかかる負荷が重くなります。結果、スピードについていくのは苦しくなっていきます。
ですが、スキルの自動化によってこれは解決できます。
主にLower skillsについては自動化することで、
free valuable channel capacity for those more important tasks which require it
(Johnson, 2008, p.103)
= 貴重な脳内のキャパシティを、それを必要とするより重要なタスクのために解放する
(訳:松田)
ことができます。
「より重要なタスク」とはHigher-level skillsのことですね。
英語の場合も、
- 自動化すべき部分的なスキルは自動化し、反射的に頭が処理できるようにする
- 余った脳のリソースを他の回すべきところに回す
ということが大事です。
このようにして、リスニング、スピーキングといったスキルは、全体として上手く回っていくようになります。
結果、「相手の言う内容を理解する」「自分の言いたい内容を伝える」という目的を達成しやすくなります。
2:スピードについていけるスキルを身につける 【5つのステップ】
ここまで「英語はスキルである」こと、また「スキルの特徴」を見てきました。
ここからは、それを踏まえて、どのように英語のスキルを高めていくかについて書いて行きたいと思います。
スピーキング、リスニング、リーディング、ライティング、といった4技能別で、細かいアプローチは変わってきますが、ここでは「全スキルに共通する大まかな学習の方向性」について解説したいと思います。
主な手順は以下の通りです。
英語スキルを身につけるための5つのステップ
- ステップ①:スキルの全体像を捉える(どんなsub-skillsで成り立っているかを知る)。
- ステップ②:課題となっているLower-level skillsを特定する。
- ステップ③:そこに働きかけるための練習法をチョイス & 鍛えるポイントを意識して練習する。
- ステップ④:「繰り返し」練習して自動化させる。
- ステップ⑤:Part practice(部分練習) → Whole practice(全体練習)に持っていく。
順番に解説します。
ステップ①:スキルの全体像を捉える(どんなsub-skillsで成り立っているか知る)。
前半で見たように、1つのスキルは複数のsub-skillsから成る「組み合わせのスキル(combinational skill)」です。
例えば、スピーキングは大まかに表すと以下のようなsub-skillsで成り立っています。
▽② それを表現するための、単語、統語(文法)構造を頭の中でプランし、一続きの文orフレーズを組み立てる
▽③ その文 or フレーズをどのように発音するか頭でプランする
▽④ それにもとづいて、実際に口・舌の筋肉を動かして音にする
結果:声になって相手に伝わる
(↑ Levelt, 1989を参考に作成)
このように、スピーキングは複数のsub-skillsで成り立っているのがわかります。
ステップ②:課題となっているLower-level skillsを特定する。
普段の自分のパフォーマンス状況を思い浮かべ、各sub-skillsのうち自動化が不十分な部位を考えましょう。
▽①のようなHigher skillは、その場の会話の状況(相手の反応など)によって臨機応変に対応を変えないといけない部分です。つまり、レベルが上達しても(ネイティブですら)意識的な処理が必要になる部分です。
一方、特に学習初期の場合は、▽②〜④あたりのLower skillsが自動化してないことがほとんどです。
▽①に多くの意識リソースが割けるよう、▽②〜④のスキルを集中的に練習し、自動化させて行きましょう。
例えば、単語がパッと出てこない、単語の並べ方・語順(文法構造)で詰まってしまう、ということであれば▽②が課題です。
言いたいフレーズや英文は思い浮かぶけど、口がうまく回らずぎこちなくなる、ということであれば▽④が主な課題と言えます。
課題は1つでないことがほとんど
初学者になればなるほど、▽①〜④の課題が複合的に絡み合って、結果「スムーズにしゃべれない」という状況になっていると思います。
ですが、1つの練習で1度にすべての問題を解決しようとするとうまく行きません。
鍛えたい部位のスキルに意識が向けにくくなり、結果身につけたい行動が身につかなくなるためです。
初学者が、いきなり英会話レッスンのフリートークに取り組んでも、上達しにくいのはこのためです。
基本フリートークは、一気に▽①〜④に取り組まないといけないタスク環境です。
まさに、
doing more than one thing at the same time
(Johnson, 1996, p.36)
というチャレンジングな環境です。
特にほとんど▽②〜▽④あたりが自動化してないまま取り組むと、
「語順、文構造はどうだっけ?」
「口が動かない、どう動かそう?」
などと一度に多くのことを意識的に考ないといけません。
結果、なんとか会話を続かせるために「知ってる単語をかろうじて何個か出して終わる」「ほとんど相づちで終る」などという状況になります。
これでは練習中、特に自動化させたい、▽②〜④の脳内の処理にはほとんど取り組んでいないことになります。
結果、▽②〜④の筋肉が鍛えられることはありません。
部分練習(Part practice)でターゲットのLower skillを集中的に自動化
まずは部分練習(Part practice)から入ることが大切です。
ピアノもスポーツも、特に初心者は、いきなり一曲丸々、いきなり試合からは入らないと思います。
ピアノであれば小節数を絞ったり、またはまず片手だけで練習したり、野球であればまずはボールなしで素振りなどから入ったりするはずです。
このように練習する範囲や、鍛えるスキルを絞り、そこで身につけるべきスキルや型に集中的に取り組み、学習しやすくしていくということがとても大事です。
特に初学者の場合は、いきなり実戦のフリートークから入るよりも、
・文法ルールをもとにスムーズに語順を組み立てることだけに集中する
・口の動かし方や発音だけに集中する
etc.
というように部分練習から入って行きましょう。
ステップ③:そこに働きかけるための練習法をチョイス & 鍛えるポイントを意識して練習する。
さて集中的に練習するターゲットスキルを定めたら、次はそれを効果的に鍛えやすい練習法の選定です。
ここは「どのLower skillを鍛えたいか」によって変わってくる部分です。
例えば、特に統語(文法)処理に課題があり、文法ルールをもとにスムーズに語順を組み立てるスキルを身につけたい場合は、瞬間英作文などが練習法として考えられます。
» 参考:瞬間英作文ってどんな効果があるの?
また発音を鍛えたい場合は、流れてくるモデル音を聴いて、それを遅らせて真似して発音していくシャドーイングなども、候補にはあがってくると思います。
各練習法で意図、目的が異なる
世間には、
・シャドーイング
・瞬間英作文
・単語帳
etc.
などといった数多くの練習法がありますが、それぞれで鍛えやすいスキル(ターゲットとして狙っている主なスキル)が異なります。
- 自分はどこのLower skillを鍛えたいのか(問題があるのか)
- その筋肉をしっかりと使えて、それによって鍛えやすい練習法はどれか
ということを考えつつ練習法は選ぶことが大事です。
練習中、どこに意識するかも大事
練習法もそうですが、一方で「練習中に学習者が何を意識するか」でも効果は変わってきます。
例えば、単語帳は「単語を覚えるためのもの」というのが一般的な認識だと思います。
もちろんその側面が大きいのですが、もしこれをきちんと単語の発音もしつつ、スムーズに口の動きまで意識的に練習したとすればどうでしょう。
もし反復をしっかり行い、口の動きが自動化されれば、後々のスピーキングでスムーズな発音に貢献する可能性があります。
また一方で、正しい練習法を選んでいたとしても、意識ポイントが違ったり、間違ったやり方では狙ったスキルは鍛えられません。
先ほど挙げた瞬間英作文は「文法ルールにもとづき文を組み立てられるスキル」を自動化させるためものです。
ただ「英文をただ暗記」してしまっては、英作中、脳が語順の処理(統語処理)をしなくてもいいので、それは鍛えられません。
このように、
- 練習中、自分は何に意識を向けるのか
- 練習中、適切な頭の使い方ができ、本来鍛えたいと思っているスキルを効果的に鍛えられているか
ということも大事なポイントです。
ステップ④:「繰り返し」の練習で、自動化させる。
正しいやり方で練習の「質」が担保できているのであれば、あとは「量」です。
自動化を促すために重要なのは、
練習 (practice) の頻度
(村野井, 2006, p.95)
です。
これによって、身につけたいスキルや行動が、スピーディーかつ無意識的に行えるようになります。
特にLower skillsになればなるほど、「無意識的にできる」「身体が勝手に動く」ということが大事です。
実戦の英会話では、Lower skillsについては気にしている暇はありません。
頭が何も考えなくてもよくなるくらいまで、しっかりと繰り返し練習をして行きましょう。
ステップ⑤:部分練習(Part practice) → 全体練習(Whole practice)に持っていく。
部分練習(Part practice)で、Lower-skillを1個ずつ、ある程度自動化することができたら、そのsub-skillsを「同時に実施しないといけない」ような訓練に入りましょう。
これを全体練習(Whole practice)と言います。
これまで何度も書いてきたように、楽器の演奏、スポーツ、スピーキング、リスニングといったスキルは、同時のことを一気に行わないといけない「Combinational skill」です。
部分練習(Part practice)に取り組むのは、あくまでこのCombinational skillをできるようになるためです。
単語・文法の語順の並び・発音などを「同時に」使いこなせるからこそ、スピーキングであれば「相手に自分が言いたい内容がうまく伝わる」リスニングであれば「相手の言いたい内容が理解できる」という目的を達成できます。
スキル習得のゴールはここに置く必要があります。
全体練習(Whole practice)= より自由度の高い練習
簡単に言うと「よりフリーで実戦に近い環境での練習に切り替えていく」ということです。
例えば、自動車の教習。まずは教習所内のミニチュアコースで、
坂道発進をする
クランク
etc.
など、各sub-skillsを先に部分練習すると思います。そして各スキルにしっかり慣れたら(自動化したら)、今度はよりフリーの実戦に近い「公道」に出て練習をします。
公道では、実際に他の車や歩行者がいる中で、危険を察知しながら、ある目的地まで運転をし、練習をしていきます。
公道では、教習所の中で練習したsub-skillsを組み合わせて、同時に使いながら、その都度状況に臨機応変に対処して行きます。
同じように、例えば英語のスピーキングの場合。
単語・文法・発音などをある程度個別に自動化させたら、完全フリートーク、とは行かないまでも、よりフリーに自分の言いたい内容を英語でしゃべっていくような練習に入っていくことが大事です。
スキルは「状況に応じて使いこなせる」ことが鍵
よりフリーな練習環境で、
部分練習(Part practice)で身につけた個別のLower skillsを、状況に応じて組み合わせて使いこなす
という練習が、実戦でも通用するスキルにつながっていきます。
例えば実戦のスピーキングでは、相手が言った内容に応じて、今回は「こういう内容のことを伝えたい!」と決め、それに応じて瞬時に、
・文構造はこれ
・発音はこれ
etc.
と、各スキルを組み合わせ、そのとき表現したい内容をスピーディーに言える必要があります。
部分練習(Part practice)で各Lower-skillsを鍛えたら、少しずつフリー要素の高い練習に切り替えて行きましょう。
それにより、その時々のコミュニケーションの状況に合わせて、Lower-skillsをコーディネイトして、うまくその場に対処できるスキルを身につけましょう。
※1点注意ポイント
ここまで①〜⑤のステップでスキル習得の全体像を解説してきました。
そしてこれまで、英語は「知識を知っている」だけではなく「できる」ようにすることが重要、という前提で書いてきました。
1点注意ポイントですが、もし「知識」が十分でない場合は、まずはそこを先に固めるようにしましょう。
例えば、文法・単語・発音など、もしこの辺りの基本的な知識が入ってないような場合は、テキストなどで知識を覚えることから始めましょう。
事前に知識があるからこそ、それを練習を通して使えるようにしていく、というプロセスが可能になります。
そのような場合は焦らず、単語や文法などのテキストから知識をインプットするようにしましょう。
まとめ
今回は、英語のスピードについていけない理由から、スキル習得の全体像までを解説してきました。
- スピードについていけないのは、瞬時に使える「スキル」になってないから
- スキルはいろんなsub-skillsで成り立っている「combinational skill」である
- 特にLower-level skillsについては練習で自動化しておき、Higher skillsの方に意識を割けるように
- 練習は、Part practice → Whole practiceに持っていく
という内容でした。
ぜひ参考ください。
おわり
ーーー
【参考文献】
Johnson, K. 1996. Language teaching and skill learning. Oxford: Blackwell.
Johnson, K. 2008. An introduction to foreign language learning and teaching. 2nd ed. Edinburgh: Person Education Limited.
Levelt, W. J. M. 1989. Speaking: from intention to articulation. Massachusetts: MIT Press.
門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
村野井仁. 2006.『第二言語習得研究から見た効果的な言語学習法・指導法』東京:大修館書店.