英語の音声変化:6つまとめ【生じるときのルール + 例つき】
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どんな種類があるの?
それぞれどんなときに起きるのかまとめて知りたい。
今回はこんな疑問に答えます。
音声変化は、リスニングにおける音の聴き取りや、相手に通じやすいナチュラルな発音をつくる上で大事な側面です。
そもそも音声変化とは何か、どんなものがあるのかを理解していきましょう。
本記事の内容
- 英語の音声変化とは?
- 音声変化6つ【ルール + 例つきで】
それでは行きましょう。
そもそも英語の音声変化とは?

英語を流暢に話す中で、できるだけ効率的に、省エネで発音することで生じる音の変化のことです。
一般的には、会話のスピードが速くなるほど、またカジュアルさが増すほど顕著になります。
会話は単語の「つらなり」という事実。
1つの単語は、さまざまな子音や母音の組み合わせによって成り立っています。また、その各音は、それぞれ違った口や舌、喉などの動きで作られています。
特に1単語ずつ分けて発音していくのであれば、口・舌・喉に所定の動きをさせつつ、きちんと発音していくことは難しいことではありません。
ですが、ある程度のスピードで、複数の単語を一気に発音しないといけないのが実際の会話です。
その中で、口まわりの各器官はできるだけ無駄がないよう、ショートカットできるものは省略しつつ、1つの音からその次の音へと滑らかに移行して行きます。
[音声変化は] 少しでも短時間に口の筋肉を使わずに相手に情報を伝達するために発達してきたものと考えられ、また発話の流暢さ(fluency)とリズム(rhythm)を維持するためにもある程度必要であるとされている。
(小林, 2008, p.7)
スムーズな発話をキープするために効率的に発音した結果、「本来とは異なる音」になる現象。
それが音声変化です。
押さえておくべき英語の音声変化【6つ】
音声変化は、厳密に分けると多くの数があります。
その中でも、特に必要かつ主要と思われるものをまとめていきます。
以下の6つです。
- ①:連結(Linking)
- ②:同化(Assimilation)
- ③:脱落(Elision)
- ④:弱形(Weak forms)
- ⑤:弾音化(Flapping)
- ⑥:声門閉鎖化(Glottalization)
なお、それぞれの音声変化には発生するパターンがあり、どんな時に起こるのかは、ある程度ルールとして決まっています(Buck, 2001)。そういった発生パターンについても覚えていきましょう。
(ただ最終的には、会話のスピードやカジュアルさ、地域性やその人の癖などによっても、どの変化が優先されるかや、変化の度合いなども変わってきますので、その点ご注意ください。)
音声変化①:連結(Linking)

連結とは、ある単語の最後の子音と、次の単語の頭の母音がつながって発音される変化です。
連結が起きやすいパターン
以下のようなイメージです。
具体例
例えば、「look at」という表現。
lookのお尻の子音/k/と、atの頭の母音/ə/が繋がり、/kə/という連結音を作り出します。
仮にカタカナで表記すると、以下に近い音になります。
*下線が連結音/kə/の部分です。
以下、その他の例です。
・plane is:プレィン イズ ⇨ プレィニズ
・boys and:ボーイズ アン ⇨ ボーイザン
・some of:サム オヴ ⇨ サモヴ
etc.
発音のコツ:ただ「つなぐ」だけ。
例えば「start out」という表現。
まず/t/という子音は、舌先を上の歯ぐきあたりにつけて「トゥ」と破裂させる音です。
▽ 次に、破裂させるときに一緒にoutを言おうとすることで、自然と「タ」という音が出てくるという流れです。
「タという新しい音を0からつくる」というよりは、口や舌の動きとして「2語をつなげて言った結果自然と出てくる」というのが本来の感覚です。
はじめは慣れるために、「startout」「lookat」とあたかも1単語のように発音してみるのも手です。
連結では、単語の区切りがわかりずらくなくなる。
連結によって聞き取りずらくなる理由の1つは、本来1つ目の単語に属しているはずの子音が、あたかも、2つ目の単語のもののように感じられてしまうことです(Field, 2003)。
例えば以下です。
・made out ⇨ may doubt のように認識
(Field, 2003, p.332より記載)
また小林(2008, p.11)は、連結が何個も連続する場合も特に知覚しずらくなると指摘しています。
例えば「take it out」という表現では、itが直前のtakeに連結するだけではなく、さらに後ろのoutとも連結します(全体は「ティキタウ」のような発音)。
そのため、itが間に埋もれてしまい、存在自体がわかりずらくなってしまいます。
このあたりは、1単語ずつで発音を覚えているだけでは、なかなか対応しずらい部分です。
普段から、連結に耳を慣らしておくことが大切です。
音声変化②:同化(Assimilation)

同化とは、ある音が、隣り合っている音の影響を受けて、「別の音」になってしまう変化です。
同化には、以下の3種類あります。
- (1) 逆行同化(Regressive assimilation)
- (2) 進行同化(Progressive assimilation)
- (3) 相互同化(Coalescent assimilation)
順番に見ていきましょう。
(1) 逆行同化(Regressive assimilation)
「後ろの音が、前の音を変えてしまう」という同化です。

上記のようなイメージです。
逆行同化が起きやすいパターン
*「歯ぐきの位置でつくる子音」とは、/t/ /d/ /n/ などです。
具体例
例えば「that person」という表現。
thatのお尻の/t/が、personの頭の/p/の音へと変化し、あたかも以下のように発音されます。
/t/は舌先を上の歯ぐきにつけてつくる音、次の/p/は両唇を閉じてつくる音です。
限られた時間で /t/→/p/と動かしていくのはとても大変なので、/t/は発音せずその時点でもう唇を閉じてしまいます。
※なお「thap」と書いてはいますが、この「p」は「プッ」と息を破裂させません。ただ唇を閉じて次の「person」の「p」を出す準備をしているだけ、というイメージです。結果、この時点では音としては聞こえません。
以下、他の例です。
基本的な考え方は上記と同じです。
<1> bright colour ⇨ brighk colour
<2> apartment ⇨ aparpment
<3> that thing
*<1> <2>:例によって「k」を口の奥で「クッ」と、「p」を唇で「プッ」とは破裂させません。次にくるcolor、mentを出す準備をするだけです。
*<2>のように、単語内でも同化が起こることがあります。
*<3>はスペルで表しずらいですが、発音法としては、thatの「t」で舌の先を上歯の裏につけて空気を一瞬ストップ→そのままthingの発音に入ります。
<1> good play ⇨ goob play
<2> good cause ⇨ goog cause
<3> end this
*<3>の発音法:endの「d」で舌の先を上歯の裏につけて空気を一瞬ストップ→そのままthisの発音に入ります。
・ten people ⇨ tem people
・ten cars ⇨ teng cars
(例はField, 2003; Kelly, 2000; Roach, 1991より記載)
(2) 進行同化(Progressive assimilation)
「前の音が、後ろの音を変えてしまう」という同化です。
逆行同化よりも出現頻度は下がります。

進行同化が起きやすいパターン例
*「th/ð/で始まる単語」とは、主にthe, this, that, theseなどのことです。
具体例
例えば「in the」という表現。
「th」の部分が、「n」の音に同化されます。
以下のようなイメージです。
もともとの発音とかなり印象が変わりますね。
TOEICなどでもたまに耳にします。
その他の例。
・is that ⇨ is sat (イザットのような発音)
・call them ⇨ call lem (コーレムのような発音)
(例はRoach, 1991; Shockey, 2003より記載)
(3) 相互同化(Coalescent assimilation)
隣り合う2つの音が「お互いに影響し合う」という同化です。

相互同化が起きやすいパターン
このパターンは、Thank you「サンキュ」やCould you「クジュ」のように、「X+ュ」というかたちで表される音になります(小林, 2008, p.11)。
具体例
・get you:ゲチュ
・help you:ヘルピュ
・miss you:ミシュ
etc.
(例は小林, 2008より記載)
以上、②同化でした。
音声変化③:脱落(Elision)

脱落は、本来あるべき音が「そもそも発音されず無くなる」という変化です。
3つの発生パターンに分けてまとめます。
脱落が起こりやすいパターン(1)
具体例
例えば「drop pens」という表現。
同じ/p/という子音が連続していますので、前の方が脱落します。
「ドロプペン」のように/p/の破裂を2回出すのではなく、1つ目の/p/は唇を閉じるだけ(次の準備)、「pen」で/p/を破裂させるのがポイントです。「ドロペン」のような発音になります。
/p/以外にもあらゆる子音で、このような脱落が起き得ます。
他の例
・/ð/脱落:brea
・/dʒ/脱落:jud
・/m/脱落:I’
このように発音することで、口の動きとしてシンプルになり、楽に発音できる感覚を確認しましょう。
まったく同じでなくても、脱落するケースもあります。
/p/と/b/、/t/と/d/、/k/と/g/は、それぞれどのペアも音をつくる位置が同じで、違いは声をつけるかつけないか(有声音 or 無声音か)だけです。このような組み合わせの場合も、同じように脱落が起こります(小林, 2008)。
・/p/と/b/:ta
・/t/と/d/:a
etc.
(例は小林, 2008より記載)
脱落が起こりやすいパターン(2)
例えば以下です。
・doesn’
・interes
・confus
このように、語尾は脱落する傾向にありますが、さらに「/t/ /d/が子音どうしに挟まれる」場合は、特に発音されなくなります (Brown, 1990)。
・las
・mos
・carv
・worl
(例はBrown, 1990; Kelly, 2000より記載)
脱落が起こりやすいパターン(3)
その他の脱落パターンもまとめておきます。
代名詞や助動詞のh脱落
このような/h/音もよく脱落します。
・
・
ofのf脱落
ofは、「この次に解説する④弱形として使われ、かつ後ろに子音が続く場合」、ofのf/v/の音が脱落します。
・o
・o
(例はAlameen and Levis, 2015; Kelly, 2000; Shockey, 2003より記載)
語頭のth脱落
特に流暢な発話で、語頭のth/ð/が落ち元の音とかなり印象が変わる場合があります。
・
・more
以上が③脱落でした。
音声変化④:弱形(Weak forms)

弱形とは、その名前の通り「弱く、短い発音」になる変化です。
弱形が起きやすいパターン
機能語とは、文を成り立たせるために必要となる、文法的な機能を担う単語です。
具体的には、「前置詞・助動詞・代名詞・冠詞・接続詞」などがそれに当たります。
(例:at, of, will, can, I, he, but, the など)
なお、それと対照となるのが内容語というグループです。
内容語は、それ自体がしっかりとした意味内容を持っている単語のことです。
具体的には、「名詞・動詞・形容詞・副詞」などがそれに当たります。
(例:school, meat, play, cut, red, easy, hard, quickly など)
これらの語は「ストレスを置き、強く、たっぷり」と発音します。
強形(Strong forms)と言います。
機能語は弱形こそがスタンダード
そもそも「ある語だけ弱く発音する」という考え方は、1文字1文字すべて均等な強さで発音するのが基本の日本語からすると、かなり異色です。
そのため、英語を聞いていて弱形の機能語を耳にすると、特にはじめは驚かされます。
例えばwillという助動詞。
一瞬だけボソッと、気持ち程度に「ゥ」or「ォ」のような音が聞こえてきます。
(発音記号では /əl/ /l/)
普段から「will = ウィル /wíl/」のように認識していると、いざ聞いたときに「えっ!これ本当に発音してる?」とそのGAPに驚愕します。なんど聴き直しても、そのようには聞こえません。
(過去の自分がそうでした。)
ですが、これについては発想の転換が重要です。
「機能語について、そもそもネイティブもフルで発音はしてない」「ボソッと弱形の発音こそが英語の常識」と。
もちろん、あえて強調したい場面などは、機能語であってもしっかりと強形で発音することはあります。ただそういった理由がない限り、英語の機能語は弱形が通常の発音で、強形でしっかりと発音する方がむしろ例外的です(Cruttenden, 2014)。
その意味で、機能語については、「弱形という新しい音を覚え直していく」というくらいの感覚で取り組んでいくことが重要と思います。
弱形の具体例
(左が強形、右が弱形です。)
・of: /ˈɔv/ ⇨ /(ə)v/, /ə(v)/
・at: /ˈæt/ ⇨ /ət/
・can: /k`æn/ ⇨ /k(ə)n/
・but: /bˈʌt/ ⇨ /bət/
・some: /sʌ́m/ ⇨ /s(ə)m/
etc.
このような発音記号については、よく辞書の発音記号欄に「弱形」と称して記載されています。
(上記はWeblioの『研究社 新英和中辞典』『Eゲイト英和辞典』を参考にしています。)
弱形発音のコツ
ただ、発音記号がわからない場合は、まずは以下を心がけるようにしましょう。
- アクセントは置かない
- 大きく口を動かして、それぞれの子音や母音をハッキリ発音しようとしない
- 現状の「1/2」くらいの弱い息で、短く、曖昧にボソッと発音する感覚
弱形と強形のコンビでリズムをつくる
音声変化の中でも、特に弱形は「英語の強弱リズム」をつくる際のカギになります。
英語のナチュラルなリズムをつくれるよう、弱形をマスターしましょう。
» 参考:英語の強弱リズムをつくる3つのルール
音声変化⑤:弾音化(Flapping)

弾音化(だんおんか)は、/t/や/d/の破裂音が「日本語のラ行(もしくはダ行)」に近いような音になってしまう変化です。
特にアメリカ英語で頻繁に起こり、その他、オーストラリアやアイルランドでもよく見られる特徴とされています(Shockey, 2003)。
なお、私の経験上イギリスでは聞く機会はあまりなく、基本的にしっかり/t/は「トゥッ」と/d/は「ドゥッ」と破裂して発音されていました。
弾音化が起こりやすいパターン
具体例
例えば「twitter」という単語。
「tt」の部分が左右母音に挟まれているため、以下のように変わります。
発音方法は、まさに日本語の「ラ・リ・ル・レ・ロ」とほとんど同じです。
舌の力加減などによって、ダ行っぽい音にもなります。
その他の例
・bottom:バトム ⇨ バロム or バドム
また以下のように、単語間でも起こることもあります。
・but I:バライ or バダイ
この場合も、/t/が母音に挟まれて弾音化しています。
(例はShockey, 2003より記載)
音声変化⑥:声門閉鎖化(Glottalization)

声門閉鎖化は、発音している中で、もとの音が「一瞬喉で空気をストップ」させたような音(声門閉鎖音)に置き換わってしまう変化です。
出し方のコツ
声門閉鎖音は、日本語の「っ」「ッ」がかなり近い音となります。
音声記号は/ʔ/で表されます。
出し方ですが、まず「あー」といい続けてみましょう。
そこから「あーっ」のように言おうとすると、喉の声帯が閉まり息の流れや音がストップします。
次に「あっ、あっ、あっ…」と連続でいってみましょう。
このとき喉では、声帯を閉めては開いてを繰り返している状態になります。
このような「空気の一瞬のストップ+放出でつくられる音」が声門閉鎖音です。
声門閉鎖化が起きやすいパターン
*中でも/t/の場合は多くなります。
具体例
・a
・not mine:ナト マイン ⇨ ナっマイン
*「っ」の部分が声門閉鎖音です。
*「っ」の急なストップにより、その直前の母音は少し短めになる傾向があります。
(例はCruttenden, 2014より記載)
また、/t/+/n/の組み合わせでも声門閉鎖化は見られます。
・important:インポータント ⇨ インポーっント
このあたりは、はじめと印象がかなり変わるので注意です。
まとめ

以上、6つの音声変化でした。
英文を聞いいて、うまく聞き取れなかった部分はこのような変化が関わっている可能性が高いです。
そういった箇所は、文字スクリプトを見つつどうなっているか分析してみましょう。
また分析だけで終わらず、必ず何度も発音をマネして、自分でも発音できるようにすることが大切です。
身体にスキルとして身につけていきましょう。
おわり
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【参考文献】
Alameen, G and Levis, J. M. 2015. Connected speech. In M. Reed & J. M. Levis, eds. The handbook of English pronunciation. West Sussex: Wiley Blackwell.
Brown, G. 1990. Listening to spoken English. 2nd ed. Essex: Longman Group UK.
Buck, G. 2001. Assessing listening. Cambridge: Cambridge University Press.
Cruttenden, A. 2014. Gimson’s pronunciation of English. 8th ed. Oxson: Routledge.
Field, J. 2003. Promoting perception: lexical segmentation in L2 listening. ELT Journal. 57(4), pp.325-334.
Kelly, G. 2000. How to teach pronunciation. Essex: Pearson Education Limited.
小林敏彦. 2008. 英語リスニングにおける学習者が留意すべき音変化と「類音語」の克服に向けた指導 『言語センター広報 Launguage Studies』16, pp.3-34.
Roach, P. 1991. English phonetics and phonology: a practical course. 2nd ed. Cambridge: Cambridge University Press.
Shockey, L. 2003. Sound patterns of spoken English. Oxford: Blackwell Publishing.