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なぜ英文法は必要?【よくある4つの疑問 + 学ぶメリットも解説】

文法

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なんで英文法を学ぶ必要があるの?

今回はこのような疑問についてです。
英語を学んでいて「文法」の存在を知らない人はいないでしょう。

  • 重視されるわりに、英語の上達にどういう良いことがあるのか分からない…
  • たまに『英文法は不要』というのも見るし…
  • 文法なんて覚えて本当に意味あるの?

そう感じている人も多いのではないでしょうか。
今回はそういった点を解消していきましょう。

はじめに要点をまとめますと、、

英文法は、あなたの英語上達を助けてくれる強い味方です。
ただ文法を覚えるだけでなく、学習に「活かす」ことが鍵。

上記のようになります。
以下、この点を詳しく見て行きましょう。

前半では、文法の必要性にまつわる「よくある4つの疑問」を考えつつ、後半では「文法の知識をどう学習に活かすか?」ということも書いて行きたいと思います。

もくじ

  • なぜ英文法は必要か?【よくある4つの疑問から考える】
  • 英文法の知識の活かし方とは?

それでは行きましょう。

なぜ英文法は必要か?【よくある4つの疑問から考える】

  • Q1. そもそも文法って必要なの?(その1)
  • Q2. そもそも文法って必要なの?(その2)
  • Q3. ネイティブだって文法の勉強をしてないのに、やる必要ってある?
  • Q4. 何年も学校で勉強したはずなのに、しゃべれないのはなぜ?

上記の4つです。

Q1〜2. では、そもそも「文法という能力」がコミュニケーションで必要か否かを考えていきます。

その上で Q3〜4. では、参考書や授業などを使った「文法の勉強」が必要かどうかを考えていきたいと思います。

順に見ていきましょう。

Q1. そもそも文法って必要なの?(その1)

「文法の能力」は必要です。
英語でコミュニケーションをする上で、欠かせない力となります。

文法は「正確な」意思の疎通に必要な力

文法とは、簡単にいうと「表現をつくるときのルール(規則)」のようなものです。

きちんとルールに従うかどうかは、自分の意図した内容が、正確に相手に伝わるかどうかに大きく関わってきます。

1つ例を挙げます。

たとえば「自分が驚いた」ことを伝えたいとき。

1つの表現として「I was surprised.」と表すことができます。

ですが、仮に「× I surprised.」や「× I was surprising.」などとしてしまうと、意図した内容を表すことはできません。

これは英語に以下のようなルールがあるためです。

  • surprise 〜 は「〜を驚かせる」という意味の動詞。
  • [原因 + sureprise + 驚かされる人] という語順で使い、「原因が人を驚かせる」という内容を表す。
  • ただし今回は、私を主語にして「私は〜」と言いたい。
  • なので、主語に「驚かされる人( I ) 」を置いたら、それについて述べるうしろの部分は受け身(was surprised)で表す。

こういったルールがあるため 「I was surprised.」が正しい表現になります。

もし受け身ではない「I surprised.」や「I was surprising.」としてしまえば、「私が原因になって何かを驚かせた」という、まったく違う内容の表現になってしまいます。

同じようなことは、聞き手にも言えます。

もし上記のようなルールがわかっていないと、「I was surprised.」と「I surprised.」「I was surprising.」の意味の違いがあまりハッキリとしません。

私( I )は驚かせた側なのか、驚かされた側なのかを、推測に頼って理解することになります。

推測に頼ること自体は決して悪いことではないのですが、そういうものがあまりに多いと、どこかで思わぬ誤解をしてしまうかもしれません。

共通のルールがある ⇒ 正確な意思疎通ができる

当然ことばなので、ルールで割り切れないことも多くあります。
ですが、コミュニケーションを秩序立てて行うには、やはりある程度、みんなの基準となるようなルールが必要です。

  • 話し手 → ルールに沿って、自分が伝えたいメッセージを言葉にする
  • 聞き手 → ルールに沿って、相手がいった言葉を理解する

このように、お互い間で共通のルールが共有されている、だからこそ正確なメッセージのやりとりができるという面があります。

Q2. そもそも文法って必要なの?(その2)


っとここで、以下のような疑問が湧くかもしれません。

じゃあ “I was surprised.” を「フレーズ」として丸ごと暗記しておいて、自分が驚いたときはいつもそのように言えばいいのでは??

確かに、これは理にかなった方法です。

というのも、「ルールにもとづいて1から文を組み立てる」よりもスピーディーで、頭にかかる負荷も軽くて済むからです。
I was surprised. を1つのカタマリで思い出し、それを丸ごと口から出せばOKです。

ですが、ことばを使っていると、それでは対応できないこともあります。

文法は「新しい文を自分でつくる」のに必要

例えば以下のような表現があります。

That’s why 〜 (なので〜)
It’s my impression that 〜 (〜な気がする、私の印象としては〜)

これらは日常的な会話フレーズとして使われます。

下線部を1カタマリで、その意味や、使われる状況とセットで身につけておけばOKです。実際のコミュニケーションでは、カタマリ内部の構造や語順などは、そこまで意識する必要はないかもしれません。

ただし問題は「〜」の部分です。
ここはその時々によって内容が変わるため、表現を1から組み立てたり、自分でカスタマイズしないといけません。

たとえば、あるときは、ものの値段について、

It’s my impression that the prices are going up every year.
(毎年値段が上がっていっている気がする。)

と言うかもしれませんし、またあるときは、会議で、

It’s my impression that the plan they proposed won’t work well without additional staff.
(彼らが提案したプランは、追加のスタッフなしではうまくいかない気がします。)

と言うかもしれません。

このように、「〜」の部分については、その時々の状況に応じて、無数に表現がありえます。

文法というコンパクトな知識があれば、いろんな表現をつくれる

以上の通り、「〜」の部分をすべて暗記で対処しようとするのは、現実的ではありません。

仮に「the prices are going up every year」や「the plan they proposed won’t work well without additional staff」を頑張って丸覚えしたとしても、それを使える場面は非常に限られてしまうでしょう。

ですが、文法ルールを使いこなすことができれば、状況にマッチしたいろんな表現を、自分でその場でつくり出すことができます。

文法ルールをもとに、あとはいろんな語彙を組み合わせることで、今まで口にしたことがないような表現でも、柔軟につくることが可能です。

「フレーズ」+「文法」の合わせ技が大事

もちろん「フレーズを覚えるのがダメ」ということでは全くありません。
むしろ、頻繁に使われる有用なフレーズはたくさん覚えておき、積極的に使える方が良いです。

たとえ、先ほどの「〜」の部分だったとしてもそうです。
例えば、さっきの例文では「price + go up」「every + year」「work + well」などの表現がありました。

このような、よくある語の組み合わせ(コロケーション)を、1から組み立てるのではなく、1つのカタマリとして覚えて使えるようにしておくことも、スムーズなコミュニケーションのために意味があることです。

上記のようなことを意識しつつ、ただそれでもやはり、その時その場面に応じた表現をしないといけないことがあるわけで、その場合は少なからず文法力も駆使しつつ、自力で欲しい表現を組み立てていく必要があります。

定型的な表現と文法の2つを、バランスよく使いこなせるようにしていくことが大切です。

Q3. ネイティブだって文法の勉強をしてないのに、やる必要ってある?

ここまでで「文法力はコミュニケーションに欠かせない」ということがわかりました。

ですが次に以下のような疑問が湧いてきます。

けど、ネイティブは英文法の勉強なんてしたことがないはず。
それでもみんな英語を自由にしゃべれてるし…
やっぱり文法を勉強する必要なんてないのでは?

これはどのように考えるべきでしょうか?

大きな前提の違い

まず、上記を考えるにあたって、見落としてはいけないことが1つあります。

それは「英語ネイティブと我々日本人とでは、英語を身につける過程が大きく異なる」ということです。
具体的には、以下のような違いです。

① 英語ネイティブが英語を身につける場合

生まれたときから英語が当たり前に使われる環境で、1つ目の言語として英語を身につける

② 一般的な日本人が、英語を身につける場合

すでに母語の日本語を身につけており、年齢も重ねた上で、英語が日常的に使われていない環境で英語を身につける

もちろん個人差はありますが、概ねこのような違いがあります。

①では、本人も「この文法を覚えよう!」などと意識をしないうちに、かなりの程度、全員が問題なく英語を身につけることができます。
参考書や教師の説明などに頼らずとも、日々、圧倒的な量の英語に触れている中で、自然とことばが身についていきます。
(我々が日本語を身につけたのと同じです。)

しかし、②では状況が変わります。
ある程度の年齢を重ねてしまっており、母語(日本語)の影響も受けます。
また、英語を使わなくても生活することができ、ほとんど英語に触れることがないような状況です。

ネイティブのように「自然に」英語が身につくまでには、相当長い(もしくは一生ゴールできない)道のりとなるでしょう。

この場合、文法の本を読んで学んだり、解説を聞いて理解するといった、いわゆる「文法の座学的な勉強」は決して無視できない方法です。ある程度「文法を意識的に学ぶ」ということが必要になってきます。

実は近道になる文法の勉強

勉強を通して文法を学ぶのは、考え方によっては、効率的な方法とも言えると思います。

これまで多くの人が、一見目には見えない英語の背後で動いている仕組みやルールを研究し、本などのわかる形でまとめてくれています。

それらを読めば、何年もかけて「自然に」身につくのを待たなくても、(少なくとも頭で理解するレベルでは)わりとすぐに身につけることができます。

「自分が驚いた」ことを表したいときは、なぜ「I surprised」や「I was surprising」では表せないのか?
逆になぜ「I was surprised.」だと表せるのか?

このようなことも、すぐに理解することができます。

そのような知識を、学ばない手はありません。

日本には、日本語で書かれた、日本人がつまずきやすい点などにも配慮された本や教材がたくさんあります。
そういったものを有効に使いながら、英文法について理解を深めていきましょう。

(※ なお、①の英語ネイティブと同じような英語の習得法が私たちに意味がない、ということでは全くありません。むしろ英語を身につける上で忘れてはならない非常に重要な要素です。これについてはまた後述します。)

Q4. 何年も学校で勉強したはずなのに、しゃべれないのはなぜ?

ここまで見たように、文法を意識的に学ぶことは大切です。

だけど、本や学校などで結構な時間をかけて勉強したのに、英語ができるようになってない…

上記のように感じている方も、いらっしゃるのではないかと思います。
なぜこのようなことが起きてしまうのでしょうか?

実際のコミュニケーションで直面する困難さ

実際の会話は、かなりのスピードで進んでいきます。

そこで以下のようなことがよく起こります。

スピーキングで直面する困難さ

実際の会話では、文法なんて考えている暇がない…
気にするとそれだけで頭が一杯一杯になるし、ぎこちなくてスピードも落ちる…

ひるがえって、リスニングでも…

理解する前にあっという間に置いて行かれる…
文法とか文構造とか意識している暇もないし、聞き取れた単語をつなげて理解するのがやっと…

このように、文法などをじっくり頭で考えている暇はありません。

なお、リーディングやライティングでも、基本的には同じようなことが言えます。

書き言葉であれば、多少は自分でスピードを調節することもできます。ですが、じっくり考えながらでないと正確に理解したり、書けないようでは、日常的に役立つスキルとは言えないでしょう。
(ただもちろん、学習の一環として、あえてじっくり時間をかけながら精密な読みや書き方をすることは、非常に意味があることだと思います。)

「文法について知ること = ゴール」ではない

ここで重要なのは、「文法の勉強を通して知ったこと(意識的に学んだ知識)」というのは、それだけでは十分ではない、ということです。

仮に、本などでどんなに英文法を深く学んだとしても、実際のコミュニケーションを考えた場合、それ「だけ」では十分とは言えません。

目指したい理想の状態

  • 文法や語彙などは、頭で考えなくても無意識的に扱える
  • それにより、実際のコミュニケーション中は、本来の目的である「意味やメッセージのやりとり」の方に、より意識を集中できる

このようなバランスが大切です。

この状態をつくれてこそ、円滑なコミュニケーションが可能になります。
ゴールとしてはここを目指さねばいけません。

文法知識は「手段」であり、上達に「活かす」もの

では、一生懸命やった文法の勉強がまったく無駄かというと、そのようなことはありません。
むしろ、成長のスピードを速めてくれる重要なリソースになります。

大切なのは、そういった知識を「どう活かすか?」です。

本などから得た文法知識も、うまく学習の中で利用することができれば、先ほどの「理想の状態」により早く近づくことができます。

以下では、その具体的な方法を見ていきましょう。

英文法の知識の活かし方とは?


以下のとおりです。

  • (1) 練習によって知識をスキルに変える
  • (2) 並行して大量のインプットにも触れる
  • (3) インプットを理解しているときに、文法面に注意を向ける
  • (4) 自分のつくった表現を自己チェック & 修正する

順に見ていきましょう。

(1) 練習によって知識をスキルに変える

知識は使えてこそです。

スポーツも、楽器の演奏も、コーチや講師からの説明を聞くだけでは、ほとんど何もできるようにならないでしょう。本などから文法知識を入れた状態も、これに近いものがあります。

何とか「知っている」状態を「できる」状態に転化することが必要になります。

(門田, 2012, p.20)

そこで「練習」をしていきます。

文法知識を頭に入れる  →  それを使う練習を繰り返す → 自動化する

上記のような流れをつくることが大切です。

「自動化」とは、練習を通して、頭の中の知識をスピーディーに、無意識的に使えるようにして行くことです。

本などで学んだ文法の知識を、練習をとおして自動化していきます。

1例として「瞬間英作文」があります。

これはある文法(例:SVOO文型 など)について、その文法を使った文を、瞬時に何個も口頭で英作していく方法です。

<例>

▽ 「私は彼女に中華料理をつくってあげた。」というお題を見て
▽ “I cooked her Chinese dishes. ” と素早く口頭で英作する。 


▽ 「私の父が今朝私に車を貸してくれた。」というお題を見て
▽ “My father lent me his car this morning. ” と素早く口頭で英作する。 

▽ 上記をいろんなパターンで繰り返す。

たとえば上記です。

こようにある文法項目について、それを使った比較的シンプルな表現を、何個もスピーディーに英作していきます。最終的には、文を自動的に組み立てられるように訓練していきます。

注意点もある

なお、この手のやや機械的な反復練習は、実際のコミュニケーションとは切り離されているため、短所がないわけではありません。[1]

仮に、瞬間英作文で10個のSVOO文型の文をスムーズに作れるようになったとしても、「その力を実際のコミュニケーションで必要な時に発動できるかどうか」は、また別に考えるべき問題です。

やはり「SVOO文型を使うことが予め決まっている中で、SVOO文型の文をひたすら作る」だけでは十分とは言えないのです。

本来はより前の段階から、

今の会話の流れや状況的にこういうことを伝えたい → そうするにはSVOO文型を使うのがよさそう → だからSVOO文型の文をつくってしゃべる

といった一連の判断や頭の使い方を、できるようになる必要があります。あくまでもコミュニケーションの流れの中で、その文法が「いつ、どんなときに使えるものなのか」を含めて身につけることが大切です。

そのためには、より実際のコミュニケーションに近い状況で、文法を使う経験を積んでいくことが欠かせません。

※ 瞬間英作文の欠点については、 瞬間英作文は意味ない?【欠点や批判を10個まとめて解説】も参考ください。

ファーストステップとして活用しましょう

ただ上記のような注意点はあるものの、瞬間英作文のような練習は、「座学で入れた知識を素早く使う」ということを体感するのに、はじめの一歩として良い方法ではないかと思います。

足がかかりの1つとして、有効活用していきましょう。

瞬間英作文の効果ややり方については、過去に記事を書いていますので合わせて参考ください。
» 瞬間英作文ってどんな効果があるの?【練習がマッチする人も解説】
» 瞬間英作文の効果的なやり方とは?【大事な3つのポイントを解説】

(2)並行して大量のインプットにも触れる

(1)では、

勉強して文法知識を入れる  →  それを使う練習をする → 自動化する

というステップの重要性を書きました。

ですがここで、もう1つ大切なことがあります。

ネイティブ的な学び方も、一方では大事。

これは Q3. で触れた「① 英語ネイティブが英語を身につける場合」の学び方のことです。

つまり、勉強して意識的に文法を学ぶのではなく、
「大量のインプットに触れながら、無意識のうちに英語の知識を身につけていく」という学び方です。

外国語を身につけるときに重視すべき、2つの方法

ここまでを整理すると、我々が英語の身につけるには、以下の2つのアプローチがあることになります。

  • アプローチ①:勉強して文法知識を入れる → それを使う練習をする → 自動化する
  • アプローチ②:大量のインプットに触れる → その中で無意識のうちに自然に文法を身につける

上記の通りです。

第二言語習得論に関する書籍によると、上記の2つの方法を併用していくことが、1つの有効な考え方のようです。ちなみに、②のみを重視する立場などもあります。[2]

このあたりは、今後さらに研究で明らかになって行くと思いますが、英語学習の指針として参考になる考え方と思います。

「大量のインプットに触れる」の意味

なお、「インプットに触れる」とは、BGMのようにまったく内容を理解しないまま、ただ英語を聞き流したりすることではありません。


上記のように「内容を理解する」ことが大切です。
つまり、普段我々が日本語を読んだり、聞いたりするときと同じ目的で英語に触れるということです。

さらに、ほとんど内容わからない難しすぎる英語に触れるのも、あまり効果は期待できません。

やはり「わかる」「理解できる」ものにたくさん触れることが大切です。
そういった経験をたくさん積むからこそ、文法や語彙などが意味と結びついて、頭の中に少しずつ蓄積されて行きます。

本などから文法を身につけようとするだけでは、限界があります。
上記のようなインプット経験を絶やさないことも、極めて重要です。

(3) インプットを理解しているときに、文法面にも注意を向ける

さて、(2)では「大量のインプットに触れる重要性」を書きましたが、その際、本などから得た文法知識が役に立つことがあります。

それは、「事前に文法の知識を勉強しておくと、インプットに触れる際、そこに含まれている文法に注意が向きやすくなる」ということです。

1つ例を考えてみます。

例えば、以下のような会話を聞いているとします。
(心配をかけたくなかったので何も伝えてなかったAさんが、そのことでBさんに謝っている場面です。)

A: I’m so sorry. I should have told you everything earlier.
(ごめんなさい。????????
 
B: No, I should have asked you about that.
(いいえ、????????

仮に、下線部にある文法にあまり詳しくない人がこの会話を聞いたとき。
その人は、なんとなく「言うべき、尋ねるべき的なことを言ってそうだな…」 くらいの感覚で、この会話の理解を済ましてしまうかもしれません。

もしそうだとすれば、より深い学習にはつながらないでしょう。
ですが、事前に何らかの形で、以下のような知識が与えられていたとしたらどうでしょう。

  • should + have + done で「過去についての後悔(doすべきだった)」を表せる
  • 裏には「doすべきだった、けど実際はしなかった…」という気持ちが込められている など
  • このような知識があった上でさっきの会話を聞いたり、スクリプトを読んだ場合、そういった表現が使われていることに「あっ!」と気づく可能性も高くなると考えられます。

    A: I’m so sorry. I should have told you everything earlier.
    (ごめんなさい。私はもっと早くあなたにすべて話すべきでした。)
     
    B: No, I should have asked you about that.
    (いいえ、私がそのことについて尋ねるべきでした。)

    上記のように、ここでは過去についての後悔を(この場合は自分に非があったというメッセージも含めて)伝えようとしているのだなと、より明確につかむことができます。

    その上で、さらにこの会話を繰り返し聞いたり読んだりすることで、「should have done がどんな意味で、どんな状況で使われるのか」について、より深く記憶されていくことが期待できます。

    インプット中の言語に注意が向く ⇒ より深い学習へ

    第二言語習得論の中で、上記のような「気づき」を重視する考え方があります。[3]

    • インプットを見たり聞いたりする際に、そこに含まれる文法・語彙・発音などに注意を向けて気づくこと
    • そのような気づきは、新しい言語知識を自分のものとして取り込むために重要

    上記のような説です。

    (2)では大量のインプットに触れる重要性について書きましたが、ただ聞いたり読んだりしているだけでは見逃してしまうものも少なくありません。

    事前に学んだ文法知識をきっかけに、インプットに含まれている文法事項に気づくことができれば、それをより自分のものとして身につけやすくなることが期待できます。

    (4) 自分のつくった表現を自己チェック & 修正する

    最後に、主に話したり書いたり、アウトプットをする際のメリットです。

    意識的に学んだ文法知識は、自分がつくった表現が正しいかどうかチェックするのに役立つと考えられます。[4]

    たとえば、話して(書いて)いる最中に、「あ、文法ルール的にはこっちの言い方の方がよかったな… 言い直そう」などとすることです。

    (例)
    「自分が驚いた」ことを伝えたいのに思わず「I surprised.」と言ってしまった → 文法知識の助けもあり間違いに気づく → 「I was surprised. 」と言い直す

    上記のような流れです。

    事前に文法知識を勉強しておくことで、上記のような修正も起きやすくなると考えられます。

    たとえば「独り言」でスピーキングの練習をする際も、誰かから指摘してもらわなくても、自分で自分の発話の質を磨いていきやすいでしょう。

    気にしすぎには注意

    ただ、あまりに細かく正確さを気にしすぎると、スムーズにコミュニケーションを続けにくくなってしまいます。「気にしすぎて何も言えない…」となってしまっては本末転倒です。

    そのため、チェックする頻度をあえて抑えたり、気にする文法としない文法のメリハリをつけておくなど、コミュニケーションを阻害しない範囲で行っていくことが大切です。

    ですが、このようなセルフチェックをうまく利用できれば、正しく表現する力が身につき、自分のアウトプットをブラッシュアップしていくことができます。

    本などで事前に文法知識を学んでおくことには、こういったメリットもあると考えられます。

    まとめ


    今回は、英文法の必要性についてでした。

    • 文法はコミュニケーションに欠かせない力
    • 文法力は「正確さ」と「状況に応じた表現を自分でつくる」のに必要
    • 本などで「文法の勉強」をすることは近道
    • ただし、知識を頭に入れるだけでは不十分
    • 知識を入れた上で、それを学習に「活かす」ことが鍵

    上記が結論となります。

    英文法を学ぶ意味について、ちょっとでも理解が深まれば幸いです。

    関連書籍の紹介

    以下は両方とも、第二言語習得研究の知見をベースに、一般の学習者向けに書かれています。


    ↑「第3章:文法の学習」では、本記事でも触れた「自動化」や「練習+大量のインプットの重要性」、また練習の進め方などについても専門的に解説されています。
    そのほか、「単語の学習」や「スピーキングの学習」などの章もあり、参考になると思います。


    ↑また、記事の前半で「フレーズ+文法の合わせ技が大事」と書いた通り、フレーズを使いこなせることもスムーズなコミュニケーションには重要な要素です。そういった定型表現を使うメリットや学習法について、こちらも専門家によってわかりやすく解説されておりオススメです。

    以上です!


    ーーー
    【脚注】
    [1] cf. 和泉(2016)、浦野(2021)、鈴木(2022)など


    [2] cf. 浦野(2021)、白井(2012)など


    [3] cf. Schmidt(1990, 2001)など


    [4] cf. Ellis(2008)、大喜多(2000)など


    【参考文献】
    Ellis, R. 2008. The study of second language acquisition. 2nd ed. Oxford: Oxford University Press.

     
    Schmidt, R. W. 1990. The role of consciousness in second language learning. Applied Linguistics, 11 (2), pp. 129–158.
     
    Schmidt, R. W. 2001. Attention. In P. Robinson, eds. Cognition and Second Language Instruction. Cambridge: Cambridge University Press, pp. 3-32.
     
    和泉伸一. 2016. 『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業:生徒の主体性を伸ばす授業の提案』 東京:アルク.
     
    浦野研. 2022. 「使える」文法知識を探る. 鈴木渉, 佐久間康之, 寺澤孝文 (編)『外国語学習での暗示的・明示的知識の役割とは何か』 東京:大修館書店, pp. 17-31.
     
    大喜多喜夫. 2000. 『英語教員のための応用言語学:ことばはどのように学習されるか』 京都:昭和堂.
     
    門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
     
    白井恭弘. 2012. 『英語教師のための第二言語習得論入門』 東京:大修館書店.
     
    鈴木祐一. 2022. 文法の学習. 中田達也, 鈴木祐一 (編)『英語学習の科学』 東京:研究社, pp. 31-51.