瞬間英作文の効果的なやり方とは?【大事な3つのポイントを解説】
瞬間英作文の効果的なやり方とはどんなものでしょうか?
「やったけどあまり効果を感じられない… 」
「自分のやり方は合ってる?」
「もっと効果が上がるように、どうすればいい?」
etc.
こんな疑問に答えます。
この記事を読むことで、瞬間英作文の効果を最大化するためのポイントを理解できます。
ではいきましょう。
瞬間英作文の効果的なやり方とは?【大事な3つのポイント】
瞬間英作文を効果的に行うために重要なポイントは、大きく以下の3つです。
- ポイント1:文法ルールを使うことを意識する
- ポイント2:同じ文を、ある程度スムーズにできるまで反復練習する
- ポイント3:慣れてきたら「意味を伝える」方に意識を切り替えていく
順番に見ていきましょう。
ポイント1: 文法ルールを使うことを意識する
瞬間英作文は、テキストの各ページでテーマとなっている文法事項(命令文、to 不定詞、関係代名詞 など)があります。
まずこの「文法ルールをしっかり使って英作していく」と言うのが大事です。
理由は、そもそも瞬間英作文が「文法知識を素早く使う文法処理力」を高めるための練習であり、最終的に「自分で1からスピーディーに英文を組み立てられるようになる」ための練習だからです。
≫ この点について詳しく知りたい方は【瞬間英作文ってどんな効果があるの?】をご覧ください。
練習の手順
ではそれを実践するにあたって、モデルとなる大まかな手順です。
- ステップ1:そのページのテーマとする文法ルールをさっと確認。
- ステップ2:瞬間英作ファーストトライ。その文法ルールを意識し、まず口頭で英作してみる。
- ステップ3:回答例を確認 & 音読。文法ルールに照らし、文構造など「あぁ確かにそうなってるな」と分析的に英文をみていく。その文法的な頭の使い方が馴染むよう何度か英文を音読。
- ステップ4:瞬間英作を繰り返していく。ステップ3で確認した文法的な頭の使い方を、日本語→英語と何度も英作をする中で慣れていく。
この各ステップを「What time 〜 ?」の瞬間英作文の例で見てみましょう。
例えばこんなお題と回答例が考えられます。
(1) 今イギリスは何時ですか?
(2) あなたは毎朝何時に起きてるの?
<回答例>
(1) What time is it in the UK now?
(2) What time do you get up every morning?
ステップ1:ここでは「時間を聞くための表現だな」「What time を使うんだな」くらいの確認で大丈夫です。
ステップ2:瞬間英作文にトライします。このとき、自分の英作に多少自信がなくてもOKです。できる範囲でまずは英文を形にしてみましょう。
ステップ3:回答例を見ながら、文法的な視点で確認していきます。例えば、
・(1)のようにbe動詞の場合はSとbe動詞をひっくり返して「When→be→S」とするんだったな
・(2)のように一般動詞の場合はdo/does を置いて、その後ろに「S→動詞の原形」とするんだったな
などと、自分の英作した文がお題の意味を伝えるのに適切だったか「頭の中の文法ルールを参照しながらチェック」していきます。
その後、確認した内容を意識しながら英文を音読し、その頭の使い方を頭に馴染ませていきます。上記のように一つずつ言葉で確認しなくても、頭がその文法手順に沿って動いている感覚を掴みましょう。
音読が難なくできるようであれば、英文から目をはなして暗唱で取り組んでもOKです。
ここまでのステップで、まずはその文法ルールと手続きに沿って正確に文を作れることを目指しましょう。
ステップ4以降:あとはそれを瞬間英作文でもスムーズにできるよう、繰り返す中で少しずつ慣れて行き仕上げていきましょう。
このように、ターゲットとなる文法ルールに沿って、自分で正確かつスピーディーに英語を生み出せるよう練習をしていきます。
※英文の丸暗記はNGです。
文を丸暗記してしまうと瞬間英作文の効果がほとんど得られません。
理由は、暗記だと文法ルールに沿って英語を自分で組み立てる練習ではなく、「覚えた英文を丸ごとそのまま思い出すだけ」という作業になってしまうからです。
確かに英語を学習する上で、単純に覚えてしまった方がメリットが大きいものもあります。
たとえば、How are you? や Please let me know … などの、使われる頻度の高い決まり文句や固定した表現は、いちいち「How が来て、次はbe動詞で、次はSだな..」などと分析的に文を組み立てるよりも、暗記したカタマリをそのまま会話で出せば事足ります。
ですが、状況が変わり「あなたの上司にそれを知らせてください。」といった表現を、言わなければならない場面ではどうでしょうか。
Please let your boss know it. と言うためには、
▽ 直後のOに「させる人」の your boss を置く。
▽ その後ろのCに「させる動作」の know を置く。
etc.
などと、使役動詞にまつわる文法的な手続きを素早く行い、状況に合うよう自分で文をカスタマイズしないといけません。個々のコミュニケーションの場面に対応するには、やはりこの力も重要です。
ちなみに応用言語学者のSkehan (1998) によれば、人が頭の中で言語を処理する際、以下のような2つの方法があるとされています。
- ①:覚えた固定表現をそのまま使う(個別の場面に合わせた柔軟性に欠けるが、スピーディー)
- ②:文法ルールをもとに文を組み立てる(時間はかかるが、その時の状況やニーズに合わせて表現を柔軟に変えられる)
上記の通りです。またこのような2つの側面を、「バランスよく鍛えていく」ことが大切とされています。
今回の瞬間英作文は、このうちの②をメインにした練習法と言えます。
文法は共通、けど少しずつ違う文
瞬間英作文のテキストの多くが、一つの文法単元あたり「10個の例文」で構成されているのもこのためです。
No.1〜10まで、使われる語彙やでき上がる文は違うのですが、そこで必要となる文法的な操作は共通しています。10個の英作に取り組むことで、そこに共通する文法的な手順に何度も取り組み、その操作をスピーディーにこなせるようになることを狙いとしています。
このように、完成した英文そのものではなく、完成に至るまでのプロセスを身につけることが大切です。
繰り返す中で、ある程度自然に英文を覚えてしまうことは問題ありません。ただ、意識としては、
- 英語表現をただ丸覚えする → NG
- 文法ルールをもとに状況に応じた英文を生み出す → OK
ということを重視しながら練習をしていきましょう。
ポイント2: 同じ文をある程度スムーズにできるまで反復練習する
ここまで見たように、瞬間英作文の目的は文法的な操作手順を身につけることです。
そしてそれを「自動化」することでもあります。
自動化とは、取りたい行動やそれに関連する脳内処理が、「無意識的に」かつ「素早く」できるようになることです。
そして自動化を進める鍵はズバリ、
練習 (practice)の頻度
(村野井, 2006, p.95)
です。
ぜひ反復して練習し、自動化を進めていきましょう。
はじめはスムーズにできなくても大丈夫です。
はじめのうちは、かなりいろいろなことを意識しながら英語を組み立てていくようになりますので、1つの文を作るのにも時間がかかると思います。ですが、それで大丈夫です。
むしろ初期の段階では、無理にスピードだけにこだわってしまうと、不正確な手順が身についてしまいかねません。そのため、そこまでタイトなタイムプレッシャーを設けなくてもOKです。
現状の自分の処理スピードよりも、ほんの少しだけ速く英作することを意識しましょう。
それを意識して繰り返していると、1回目より2回目、2回目より3回目…と、徐々にスムーズに頭が動いてくれるようになってきます(つまり、自動化してきます)。
また1日目で完全にスピーディーにこなせなくても問題ありません。連日で続けているとこれもまた日を追って素早くこなせるようになってきます。
これは私の例ですが、過去に瞬間英作文に取り組んでいたとき、その日1つの文法単元に何分費やしたか、テキストの目次ページに記録していたことがありました。
それを見ると、以下の3つの文法単元では、1日にかかる練習の時間は以下のようでした。
1日目は相当時間かかってますね。
文法も確認しながらぎこちなく英作をやっていたのだと思います。
1日4〜5単元こなすだけで1時間近くかかっています。
ですが日を追うごとに少しの時間でこなせるようになっているのがわかります。
当時、一つの文法単元(10個の例文)あたり一日何周をノルマにしていたか忘れてしまいましたが、「昨日より楽にこなせるようになってるな〜」とストレスが減っている感じがあったのを覚えています。
そして楽にできるのが数字でもはっきり見れてテンションが上がっていました。
はじめはゆっくりでも大丈夫です。
繰り返す中で少しずつスピードをあげて行きましょう。
そして最終的には「じっくり考えなくても英作ができる」ことを目指しましょう。一文あたり、だいたい3秒以内(または遅くとも5秒以内)くらいで英作できると良いです。
ポイント3:慣れてきたら「意味を伝える」ことに意識を切り替えていく
3つ目のポイントです。
これは瞬間英作文の練習を、少しでも実際のコミュニケーションで活かせるような力にするために必要です。
どう言うことか見て行きましょう。
人は「伝えたい内容」があるからこそ「言葉」を使う
Levelt (1989) によると、人はスピーキングをするとき以下のような脳内のステップを踏むとしています。
その時の自分の置かれた状況、相手が言った内容などに応じて、
というようなかたちです。
このモデルで重要な点は、人はあくまで「①の情報がもとになって②の処理、②の情報がもとになって③の処理が成される」という点です。
確かに考えて見たら、基本人は何か言いたい内容があるからこそ言葉を使います。
言いたいメッセージがないのに単語だけポンと口から出したりは普通しませんよね。
瞬間英作文の場合も、普段から同じような頭の使い方をシミュレーションしておくことで、より実際のコミュニケーションに近い練習となって行きます。
「文法を気にする」→「意味を伝える」方へ意識をシフトチェンジ
なので、これをやって行きましょう。
さっき書いたように、はじめは文法に沿った正確な発話を心がけた方がいいので、語順をはじめとする文の細かい各パーツにフォーカスが向くと思います。
そこから繰り返しの練習で慣れる(自動化する)に従って、①の概念化の「こういうことを伝えたい」という方に意識をシフトして行きましょう。
日本語のお題を見る → 状況を想像(イメージ化)する → 自分が話者になったつもりで、本当に相手に伝えるつもりで英作する
こんな要領で瞬間英作文をして行きましょう。
(↑なおこちらの詳しいやり方については、瞬間英作文でイメージを使って練習する方法にまとめています。)
※逐語訳はNGです。
お題の日本語を、一語ずつを忠実に翻訳するような逐語訳で英作するのはやめましょう。
逐語訳をすると、これまで見てきた「こういうことを伝えたい」→「だから言葉でこう言おう」というフローが崩れてしまうからです。
例えば「It is 〜 to …」の瞬間英作文の例で見てみましょう。
外国語を学ぶことはとても重要です。
という内容で、逐語訳的に英文を作っていくと、
「外国は、foreignで、、」
「語は、languagesで、、」
「学ぶことは、to learnで、、」
「とてもは、veryで、、」
「重要は、 importantで、、」
「あとは It is〜to… に入れて行って、、」
It is very important to learn foreign languages.
「よしできた!」
と完成させるような感じになってしまいます。
やや極端な例ですが、要はこれだと、「自分がこう伝えたい」というメッセージとは全く無関係に、
という「単語パズル的な作業」をしているだけとなってしまいます。
これを避けるには、お題の日本語をはじめにみたときに一単語一単語ずつへの狭いフォーカスになるのではなく、日本語を全体的に見て「何を伝えたいのか」をその内容にフォーカスすることです。
とにかく大事なのは、ある状況の中で「こう言いたい!」という気持ちが先にあって、それを伝えるために具体的に文法や単語の知識を使い英語を発話していく、ということです。
瞬間英作文を繰り返し文法操作にある程度楽にこなせるようになってきたら、頭をそのモードに少しずつ切り替えていきましょう。
そしてさっきの
日本語のお題を見る → 状況を想像する → 自分が話者になったつもりで、本当に相手に伝えるつもりで英作する
と言うような流れで練習していくようにしましょう。
まとめ
以上、瞬間英作文を効果的にする3つのポイントでした。
- ポイント1:文法ルールを使うことを意識する ※丸暗記NG
- ポイント2:同じ文を、ある程度スムーズにできるまで反復練習する
- ポイント3:慣れてきたら「意味を伝える」方に意識を切り替えていく ※逐語訳NG
練習のときにぜひ意識してみてください。
また瞬間英作文をしていると「例文を覚えてしまう」「スラスラできない」などうまく練習がはかどらないことがあります。
このような悩みをお持ちの方はこちらも参考にしてみてください。↓
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おわり
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【参考文献】
Levelt, W. J. M. 1989. Speaking: from intention to articulation. Massachusetts: MIT Press.
村野井仁. 2006.『第二言語習得研究から見た効果的な言語学習法・指導法』東京:大修館書店.
Skehan, P. 1998. A cognitive approach to language learning. Oxford: Oxford University Press.