英語の強弱リズムをつくる際のルール【シンプルに3つだけです】
シンプルにルールとかまとめてくれてたら嬉しい。
今日はこんな内容に答えます。
「リズム、なんか違うな〜」と分かっていても、「具体的にどうするべきか?」を知らないとなかなか改善しにくいものです。
今回は、英語のリズムをつくるための手順を、シンプルに3つのルールにまとめて解説します。言語学の文献も参考にしつつ、できるだけ分かりやくなるようにまとめていますので参考ください。
では行きましょう。
英語の強弱リズムをつくる3つのルール
- ルール①:内容語にストレスを置く、機能語には置かない
- ルール②:ストレスとストレスの間に入るものが増えても、ストレスのタイミングは変わらない
- ルール③:各ストレス〜ストレスの間は、時間的に等間隔になる
順番に見て行きましょう。
ルール①:内容語にストレスを置く、機能語には置かない
- 内容語 → ストレスを置く(強く・たっぷり発音)
- 機能語 → ストレスを置かない(弱く・短く発音)
英語のリズムをつくる際、上記がまず押さえるべき大原則となります(Brown, 1990)。
内容語と機能語とは?
単語は、大きく「内容語」と「機能語」の2種類に分けられます。
それぞれの意味は以下の通りです。
- 内容語 → それ自体がしっかりとした意味内容を持っている単語
- 機能語 → 文を成り立たせるために必要となる、文法的な機能を担う単語
内容語 or 機能語の判別方法
これはだいたい「品詞」で判別ができます。
- 内容語 → 名詞・動詞・形容詞・副詞
- 機能語 → 前置詞・助動詞・代名詞・冠詞・接続詞
具体的に例文で見てみましょう。
(赤字 → 内容語、青字 → 機能語です。)

上記のように、赤色の内容語に(厳密には内容語の「アクセントの位置」に)ストレスが置かれます。
他の青色の機能語はストレスが置かれず、短く弱い発音になります。
(なお、機能語については、あえて強調したい場合などはストレスが置かれることもありますが、基本はノンストレスとなります。以下では、機能語=ノンストレス語として解説して行きます。)
ルール②:ストレスとストレスの間に入るものが増えても、ストレスのタイミングは変わらない
たとえば、以下の4つの例文で見てみましょう。
・赤丸 → 内容語・ストレス
・青丸 → 機能語・ノンストレス
です。
ご覧のように、(1)→(4)にかけて単語が増えています。
普通であれば、(1)→(4)に連れて2つのストレス間(think〜win間)は、時間的に長く発音されるように思えます。
ですが、ストレス間の機能語が増えても、その長さはほとんど変わりません。(1)のストレスのタイミングが、そのまま(2)〜(4)でも維持されます。
以下のようなイメージです。

実際にリズムをチェックしてみましょう!手順は以下です。
- (1)を左→右に読む(赤丸は「強く・たっぷり」、青丸は「短く・弱く」で発音)
- その際、赤丸で「パンッ、パンッ」と2回手拍子も叩きリズムを意識。
- (1)の手拍子と同じタイミングを維持しつつ、(2)〜(4)も読んでいく。
ではどうぞ!
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うまく行ったでしょうか?
(2)→(4)になるに連れ、かなり青丸を「短く、弱く」圧縮させて発音する必要があったかと思います。
ストレス間にくるものが圧縮 → 「音声変化」が生じる。
英語のリズムをつくるにあたり、ネイティブは、ストレスとストレスの間を、かなり省エネで素早く口を動かし発音して行きます。
それにより、単語が元々とは違う音で発音される「音声変化(Phonological modification)」という現象が起きます(Buck, 2001)。
たとえば「弱形(weak form)」はその1つです。
特に強調させたいなど理由がない限り、that, you, will, be などの機能語は、以下の右側のような弱形で発音されます。
you:ユー/juː/ ⇨ ュ/jʊ/
will:ウィオ/wíl/ ⇨ ゥォ/wəl/
be:ビー/bíː/ ⇨ ビ/bi/
*なお、thatのお尻のtはよく発音されずに消えてしまいます。
これも音声変化の1種です。
この他にも、音声変化にはいろんな種類があります。
このように、英語のリズムをつくる上では、「音声変化」を身につけることも重要な点です。
英語の音声変化:6つまとめ【生じる際のルール + 例つき】
本記事では、6つの音声変化(連結・同化・脱落・弱形・弾音化・声門閉鎖化)がどんなものか、それぞれどんなときに生じるかというルールまで例つきで解説。ナチュラルな英語の音を聞き取りたい、話したいという方は必見です。
ルール③:各ストレス〜ストレスの間は、時間的に等間隔になる
英語は、stress-timed language(ストレスを基準にペースをつくっていく言語)とされており、「各ストレスどうしの時間的な長さは同じになる」という傾向があります(Buck, 2001)。
具体的に例で見て行きましょう。
先ほどの例文(1)〜(4)に、新たに「at the match」という部分を加えた文で見て行きます。
(2′) I think that you win at the match.
(3′) I think that you will win at the match.
(4′) I think that you will be wining at the match.
今回ストレスが置かれるのは、think, win, matchの3つの内容語です。
この際、(1′)〜(4′)で、think〜winと、win〜matchの時間的な長さは、だいたい等間隔になります。
以下のようなイメージです。
このような性質は「リズムの等時性」と呼ばれます(門田, 2015)。
(1′)〜(4′)についても、赤丸で手拍子を叩きつつ、練習をされてみてください。
まとめ
英語のリズム:3つのルール(再掲)
- ルール①:内容語にストレスを置く、機能語には置かない
- ルール②:ストレスとストレスの間に入るものが増えても、ストレスのタイミングは変わらない
- ルール③:各ストレス〜ストレスの間は、時間的に等間隔になる
以上です!
なお、今回挙げたような強弱のリズムですが、どんな時も常に当てはまるというものではありません(Roach, 1991)。
例えば、「この文ではリズムが等間隔だったけど、次の文ではそうなってない」という場合もあると思います(同一文中ですら、そのようなことはあり得ます)。
ただ、今回挙げたルールは、傾向としては英語に確かによく見られるものです。
かつ、「1文字1文字を均等に強く発音していく」のが基本の日本語とは大きく異なるので、こういった知識を使いつつ、意識的に練習していくと良いと思います。
リズムは、リスニングの聴き取りや、スピーキングで通じる発音にも大きく影響しますですので、ぜひ身につけて行きましょう。
おわり
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【参考文献】
Brown, G. 1990. Listening to spoken English. 2nd ed. Essex: Longman Group UK.
Buck, G. 2001. Assessing listening. Cambridge: Cambridge University Press.
門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.
Roach, P. 1991. English phonetics and phonology: a practical course. 2nd ed. Cambridge: Cambridge University Press.