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シャドーイングは発音矯正にも効果アリ【練習のポイントも解説】

シャドーイング 発音

シャドーイングで発音矯正ってできる?
どうやって練習して行けばいい?

今日はこんな疑問に答えます。

シャドーイングは、学習にうまく取り入れることができれば、発音の矯正にとても効果的です。

今回は、なぜ発音矯正に効果があるのか、またシャドーイングで発音矯正をして行く際のポイントについて解説して行きます。

本記事の内容

  • シャドーイングで発音矯正はできる?
  • 発音を意識したシャドーイングの進め方

では行きましょう。

シャドーイングで発音矯正はできる?

(これについては、主に門田(2015)の内容を参考にしてまとめています。)

シャドーイングは発音の矯正にも効果的です。

理由は、シャドーイングが耳にした音声を「聞いた直後に」「すかさず口にしていく」という練習だからです。

実はこれが、脳の仕組み上とても重要な点です。
どういうことか、詳しく解説します。

聞いた音は「約2秒」なら覚えておける。

人間の脳には、情報の「保持」や「処理」を行なっている部位があります。
これを「ワーキングメモリ」と言います。

英語を耳にして入ってくる「音」の情報も、ここに入ってきます。

ただし、聞いた音は「頭の中で繰り返す」(=内語反復と言います)など特に何もしなければ、長く記憶に留めておくことはできません。
すぐに頭の中から消えてしまいます。

そしてそのタイムリミットは、「約2秒」とされています(Baddeley, 2002)。

それを過ぎてしまうと、せっかく聞き取った音も、同じように自分の口で言うことができなくなってしまいます。

シャドーイングは、聞いた音を「即座に」言う練習。

ただ逆に言うと、約2秒以内であれば、聴いた音を忘れる前に口にすることができる、ということです。

シャドーイングは、「耳にした音を、聞いた直後に復唱する」という行為です。
通常、2〜3語程度しか言うのを遅らせません。

そのため、聞いたネイティブの音を、忘れないうちに発音することが可能です。

聞いた “ありのまま” の音を口にできる。

つまり、「まだ頭の中にネイティブの音の残像があるうちに、それを自分の口でそのまま発音してしまう」というのがシャドーイングです。

これは言い換えると、「自分独自の発音が入り込む余地も少ない」ということでもあります。

なので、もし「音を聞いて真似する」ということをしっかり実践できれば、これまで慣れて来た自分独自の発音を抑えつつ、聞き取ったネイティブの音をダイレクトに発音して行く、ということが可能です。

このような条件下で、ひたすら練習を繰り返すことで、少しずつネイティブらしい発音が定着して行きます。
これが、発音矯正における、シャドーイングのメリットです。

[シャドーイングは] 単に自分自身の発音で反復するのとは違って、英語母語話者が発音するナマ(authentic)の英語をそのまま繰り返します。また、ポーズを置かず、直後に(immediately)繰り返すことで、正しい発音の定着、聞き取りの能力の向上にもつながるのです。

(門田, 2015, p.44)

※この点、音を聞いてから発音するまでにタイムラグがある「リピーティング」とは対照的です。» 参考:シャドーイングとリピーティングの違い【どっちが効果ある?】

シャドーイングの発音への効果(まとめ)

  • 聞いたネイティブの音を、忘れる前に発音
  • 自分の発音にすり替わるリスクが減る
  • ネイティブらしい発音を定着させやすい

上記の通りです。

英語らしい発音を何度も繰り返すことで、口周りの筋肉も身についていくと思います。
発音矯正の一環として、ぜひ活用して行きましょう。

発音矯正を意識したシャドーイングの進め方

ここからは、練習する際のポイントをいくつか見て行きましょう。

しっかり音を聴いてモノマネする。

まず前提として、しっかり「マネをする」意識で取り組みましょう。
そのためには、流れてくるネイティブの発音に、注意深く耳を傾けることが大切です。

たとえば「暗記した英文を思い出して言う」といった頭の使い方はNGです。
これだと、聞いたネイティブの音ではなく、自分がもともと知っていた音を記憶から引き出して口にする、という行為になってしまいます。

結果、発音の矯正ばかりではなく、音声の聴き取り力も鍛えることがなかなか難しいでしょう。
» 参考:シャドーイングで「暗記」がNGな理由【対処法も合わせて解説】

暗記などでショートカットせず、しっかりとネイティブの発音を聴き、それをマネすることで自分の発音を矯正していけるようにしましょう。

発音でマネをするポイント(5つ)

では具体的に、ネイティブのどんな点を注目してマネして行けば良いのか?
以下の5つがとても重要です。

  • (①:各子音や母音、単語の発音)
  • ②:イントネーション
  • ③:ちょっとしたストップや間合い
  • ④:リズム
  • ⑤:音声変化

上記の通りです。

以下、簡単に補足して行きます。

①について

これは重要ではあるものの、ここではカッコつきにしています。

「発音を矯正する」と言えば、子音や母音を理解し、単語を1つずつ正確に発音できるようにして行く、ということがまず思い浮かぶかもしれません。
もちろん、こういった側面はとても重要です。

ただ、次から次へと英語が流れて来るシャドーイングで、1音ずつ、1単語ずつ完全に頭の中で細分化しつつ、すべてを意識して行くのはあまり現実的ではありません。

それをシャドーイングをする中で、逐一全部意識して行くするのは、シャドーイング自体が困難になってしまい、効率が悪くなってしまう可能性があります。

なのでこれについては、普段の単語学習などのときから、口も動かして、正確かつスムーズに発音できるようにしておくことが得策かと思います。

ですが、たとえば「今回は/r/だけは意識しよう」などと「ポイントを絞った上で練習する」のはとても効果的だと思います。

②:イントネーション・③:ストップや間について

イントネーションよって、相手に伝わる意味というは変わります。
息継ぎやそれによってできる間も、基本は「意味の切れ目」に来る傾向があります。

このあたりも、実際に英語をしゃべる際に、相手に伝わる意味・メッセージに関わる大事な部分です。
シャドーイングでしっかりマネするようにしましょう。

④:リズムについて

英語には、強く発音される語、短く弱く発音される語というのが決まっており、それによって「英語独自の強弱リズム」をつくって行きます。

これは、1語ずつ均等に発音して行くのが基本の日本語とは根本的に異なります。

そのため、ただ闇雲にシャドーイングをこなして行くだけでは、なかなか要領を掴みずらい部分でもあります。

ですが、英語のリズムも実は基本的なルールがあります。
あらかじめパターンを知っておくと、どのようにリズムをつけたら良いか、当てをつけやすくなるので便利です。

英語のリズムの法則を理解し、それをシャドーイングでもマネできるようにしましょう。

⑤:音声変化について

また英語では、リズムをキープしながら流暢に話そうとする中で、「1単語ずつ発音するときとは、違う音になってしまう」という現象が頻繁に起こります。

学術的にはこれを、「音声変化(Phonological modification)」と言います(Buck, 2001)。

たとえば、以下のようなものです。

  • take it easy:「テイク イット イーズィ」ではなく「ティキティーズィ」のように、つなげて発音。
  • want to:「ワント トゥ」ではなく「ワントゥ」のように、省略して発音。
  • computer:「コンピュータ」ではなく「コンピューラ」のように、音を変えて発音。

発話は基本的に「単語のつらなり」です。
ネイティブは、省エネで口を動かしつつ、このような音声変化をごく自然に行っています。

シャドーイングでは、このような「つらなり」の中で生じる音声的な特徴までしっかりマネをして、身につけて行くことが大事です。

これもリズムと同じように、パターン化できるものなので、どんなものがあるかぜひ押さえておきましょう。

※1つ注意点:一度にすべて気にし過ぎないように。

上記①〜⑤のように、細かく発音を意識しようとすればいくらでもポイントは出てきます。

ただ、①でも書きましたが、一度に全部を意識するのはなかなか非現実的です。
注意すべきことが多すぎて、モノマネどころではなくなってしまいます。

ということで、毎回の練習で「テーマを絞る」ようにしましょう。

(例)
「今回は、この音声変化だけを意識しよう」
「今回は、リズムをまず意識しよう」
「今回は、このスクリプトの中の、この3箇所だけ意識しよう」
etc.

たとえば上記です。

とにかく基本は、「音を聴く → それをマネして言う」ことです。
意識することが多すぎて、それを損なってしまっては本末転倒です。

  • ピンポイントでテーマ設定
  • そこに慣れてきたら、新たに別の意識ポイントへ

このような形で、進めるようにしましょう。

それでも難しければ、やり方を変えましょう。

とはいえ、シャドーイング自体、相当難しい練習であることは間違いありません。

それでも「難しくすぎる…」「ほとんど何もいえず、終わった..」という場合は、やり方を変えて取り組んで行きましょう。
» シャドーイングが難しくてできない【そう感じる時に考えるべきこと】

いくつか対処法をまとめていますので、参考にされてみてください。

まとめ

今回は、「シャドーイングで発音矯正はできるか」&「発音矯正のためのシャドーイングの取り組み方」についてでした。

シャドーイングの強みを活かして、ネイティブらしい発音を身につけて行きましょう。

おわり


ーーー
【参考文献】

Baddeley, A. D. 2002. Is Working Memory Still Working?. European Psychologist, 7(2), pp. 85–97.

Buck, G. 2001. Assessing listening. Cambridge: Cambridge University Press.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.