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英語アウトプットの重要性【わかりやすく第二言語習得的に解説】

Theory

「英語学習におけるアウトプットの役割や効果、メリットについて知りたい。」
「普段の学習にアウトプットをどう活かしたらいい?」

今回はこんな疑問に答えます。

第二言語習得研究の中でも、アウトプットの重要性はよく取り上げられるトピックです。今日は研究で言われている「アウトプットの役割」を理解しましょう。

後半では「普段の学習でアウトプットの強みをどう活かせばいいか」という点にも踏み込んで解説したいと思います。

本記事の内容

  • そもそもアウトプットとは?【アウトプットという行為の2つの特徴】
  • 英語アウトプットの重要性【第二言語習得から見る5つの効果】
  • 普段の学習でアウトプットのメリットをどう活かすか

それでは行きましょう。

そもそもアウトプットとは?【アウトプットという行為の2つの特徴】

まずアウトプットとは何か簡単に図で表します。

上記のようになります。
ご覧のように、インプット(リスニング・リーディング)は、外から入ってきた英文を脳内で処理した上で英文のメッセージを理解する行為です。

それに対しアウトプット(スピーキング・ライティング)は、自分の脳内で処理してつくった英文を外に出す行為です。

ここからざっと以下のことが言えます。

アウトプットの2つの特徴

  • 特徴1:「自分で」英文を作る行為
  • 特徴2:それを自分の「外」に出す行為

特徴1:「自分で」英文を作る行為

インプットは「すでに出来上がった英文」を脳内で処理すればOKです。ですが、アウトプットは「自分自身が起点」となって新たに文を生み出さないといけません。

  • インプット:相手がつくった既成の英文が入ってくる → それを頭で処理
  • アウトプット:頭の中にある自分の言語知識を使い、自分で文をつくる → それを外に発する

アウトプットでは、誰も自分の代わりに文をつくってくれません。
頭の中にある手持ちの知識を駆使して、なんとか意味が通じるよう自ら文をつくり上げていく行為です。

この意味で、文を完成させるための言語処理においては、喋り手自身がその責任を担っていると言えます。

特徴2:それを自分の「外」に出す行為

アウトプットは、頭で処理して作った英文を、声にしたり文字にしたりして外に出します。

それにより、できた結果の英文を「自分も、相手もハッキリと認識できる」ということを意味します。

以上、考えると当たり前のように思えますが、こういった特徴がアウトプットに取り組むメリットや効果に関わってきます。

ではそれを押さえた上で、アウトプットは一体英語学習にどのような効果をもたらすのでしょうか?

英語アウトプットの重要性とは?【第二言語習得から見る5つの効果】


これについては、学術的な文献(主にSwain, 1985, 1995; 村野井, 2006; de Bot, 1996 など)を参考にしつつまとめます。

アウトプットにある5つの効果を見ていきましょう。

アウトプットの5つの役割

  • その①:「自分が何を言えないか」に気づく
  • その②:「自分の表現の何が間違っているか」に気づく
  • その③:頭が文法的な処理に取り組む
  • その④:自分がすでに身につけている言語知識を試せる(仮説検証)
  • その⑤:スキルが自動化し、スピードアップする

以下に順番に見て行きましょう。

その①:「自分が何を言えないか」に気づく

アウトプットをしていると、「言いたいことはあるのに英語で言葉にできない!」というようなことがよくあります。このとき「自分が英語で何を言えないか」に気づいている、と言えます。

これは特徴1で見たように、アウトプットというものが「自分で」英文を作ろうとする行為だからです。

そのため、自分の英語知識に「穴がある」ということを、しっかりと認識することができます。

何も行動しなければ、自分には何ができて何ができていないのか、気づくことはできない。アウトプットをすることによってのみ何ができてないのかを認識することができる
(村野井, 2006, pp.65-66)

「穴」を認識 → 積極的にそれを埋める情報を求める

「あの時これが言えなかった..」と「穴」に気づけば、「ではどう言えばよかったのか?」という思考につながります。

その結果、以下のような学習プロセスを踏む可能性が高くなります。

▽ 「あの時本当のことを言えばよかった。」と自分の後悔を伝えたかったけど、うまく言えなかった。どう言えばよかったのかな?
▽ 本を調べたり、先生に聞く。
▽ 「あっ、I wish I had pp を使えばよかったのか!」とわかる。

例えば上記のような流れです。

このように、アウトプットでは「できない」という事実を突きつけられるため、その「穴」を埋めるための情報を求める行動をとりやすくなります。

こういった学習サイクルをうまく回すことができれば、必要な英語の情報がどんどん頭に蓄積され、学習のスピードを速めてくれるでしょう。

その②:「自分の表現の何が間違っているか」に気づく

アウトプットは、自分が発した英語表現の間違いにも気づかせてくれることがあります。
これは、アウトプットの特徴2(自分の「外」に出す行為)が関係しています。

以下は、村野井(2006)からの具体例です。

例:「あの時もっと注意しておけばよかった」と言いたいとき。

仮に以下のような文を自分が発したとします。

* I wish I was more careful.
(「*」は誤りの文ということを表します)

その直後、話している相手(自分よりも英語スキルの高い人)が以下のように言ったとします。

Oh, yeah. I wish you had been more careful.
(そうか。あなたはもっと注意しておけばよかったねぇ。)

このように自分が間違って口にした部分を、相手が正しく言い直して返してくれることがあります。

このとき、自分の英文と相手の英文が目の前に出揃うことになりますが、学習者は「自分の言った間違った文」と「相手が言った正しい文」の違い(GAP)に気づき、その違いを意識的に比較しやすくなります。

その結果、学習者の中では、

そうか、過去の後悔を言いたいときはI wishのうしろをhad ppにすべきだったのか!

といった気づきが起こりやすくなり、新たに知識を覚え直します。

この手の経験を多く積むことも、英語力の高めるための重要な点となります。

その③:頭が文法的な処理に取り組む

これは、アウトプットの特徴1(「自分で」英文を作る行為)と関係します。

アウトプットでは、自分でゼロから英文を完成させないといけないので、語順や時制の変化、-ingにするかppにするかなどといった操作もすべて自分で行わないといけません。

結果として、これが文法的な脳の処理(統語処理といいます)の力を高めることにつながります。

文法はインプットでは意識しずらい部分

こういった処理は、インプット系の練習では取り組みずらい場合があります。

リスニングなどのインプット処理の場合、名詞、動詞、形容詞といったしっかり意味内容を伴う語(内容語)さえ拾うことができれば、語順などの細かな文法面が多少つかめていなくとも、なんとなく文全体の意味を理解できてしまうためです。

(もちろんインプットのときに文法処理がまったく必要ない、ということではありません。上記のような聞き方が行き過ぎると、文意を間違って理解してしまうリスクも高くなってしまいます。)

半ば強制的に文法処理に取り組ませるアウトプット

一方アウトプットでは、最終的にきちんと意味を成す文を完成させる責任が自分自身にあります。

ただ知っている単語を適当に並べるだけでは、正確に自分の伝えたいことを表現することはできません。

そのため、語順や時制、動詞の活用などといった文法的な細かい部分にも注意を向け、脳内で処理をしながら文を産出して行くことになります。

何でもそうですが、人はやったこと、処理したことを学習します。
門田(2012, p.27)

結果として、学習者の文法処理を鍛えていくことにつながります。

その④:自分がすでに身につけている言語知識を試せる(仮説検証)

簡単に言えば「アウトプット = トライ&エラーの機会」ということです。

アウトプットするときに自分の口から出てくる英文というのは、それまでのいろんな学習経験や英語コミュニケーションの中で身につけてきた言語知識をベースに作られます。

言い換えると、それまで自分が身につけてきた言語知識の中からベストな解を選んで喋っている、ということです。そして、その口にした表現がきちんと相手に通じるものかどうかを、実際に喋る中でテストしているとも言えます。

「多分こう言えば伝わるだろう」と思って作った文(仮説)を実際に相手に伝えてみると、それに対し相手がなんらかのリアクション(テストの結果)を返してくれます。

そのとき、主に以下のような展開が考えられます。

  • 相手が理解してくれ問題なく会話が続く → 自分の言った英文に問題がないと判明する
  • 相手が理解できずに聞き返してきた → 自分の言った英文に何か問題があると判明する

前者の場合は、「自分の使った言語知識は正しかったんだ!」と再確認することになり、その知識がより強化され記憶に定着していきます。

後者の場合は、「どうやら自分の使った言語知識は正しくなかったようだ。次からは同じ表現は使わないでおこう」と、その言語知識や仮説を捨てたり、より正しいものへ修正したりします。

仮説を捨てる例

より具体的に見てみましょう。
たとえば「妹に泣かれた。」というある困った状況を英語で伝えたい場合。以下のようなことが起こる可能性があります。

▽「〜された」と表すときは英語では「be + pp(受動態)」というのがある、だから今回もこれが使えるはず!と予想。
▽ それで実際に、*I was cried by my sister. と喋ってみた。
▽ しかし相手に Sorry? と聞き返されてしまい通じなかった。
▽ どうやら「泣かれた」と言いたいときはbe ppは使えないようだから、もうこの場合は使わないでおこう…

「仮説を捨てる」とは例えばこのようなことです。
(↑村野井, 2006, p.69を基にしています。)

仮説を修正する例

ところが、何かのきっかけで(たとえば先生に教わるなどして)正しい表現を学ぶこともあります。

たとえば、

なるほど、こういうときは When my sister cried, I was upset. と言えばよかったんだ!

ということを新たに知り、それを「be + pp」の受動態文の代わりに使うようになった場合は、「仮説が修正」されたことになります。

このようにアウトプットを通して、今自分が持っている言語知識が通用するものかどうかをテストし、その結果によって、それまで持っていた知識を捨てたり、より正しいものにチューニングしていくことができます。

第二言語習得研究では、このようなトライ&エラー的な仮説検証が、言語習得を促すものとしてとても重要とされています。

その⑤:スキルが自動化し、スピードアップする

語彙や文法などをただ「知っている」だけでは、なかなか実際の会話では使いものになりません。

ですが、特徴1でも見たように、アウトプットは自分の頭の中にある言語知識を「自ら積極的に使っていく」ような行為です。

アウトプットの機会を増やし、特定の言語知識を頻繁に使用していけば、その知識は徐々に自動化したスキルとして身についていきます。その結果、会話中に意識を割かなくても、スピーディーに使いこなせるようになっていきます。

つまり、ただ「知っている」だけではなく、実際に「使える」状態に変わるということです。

流暢な会話に不可欠な「自動化」

「英会話のスピードについていけない…」と悩む英語学習者にとって、自動化は非常に重要なコンセプトです。意識的にアウトプットの機会を作ることにより、この自動化を進めていくことができます。

(なお、「自動化」については過去の記事でもまとめています。英語のスピードについていけない。←『スキルの自動化』が鍵です。も合わせてご覧ください。)

アウトプットのメリットをどう活かすか


ここまでアウトプットの役割をそれぞれ見てきました。

ただやはりこれだけだと、普段の学習の中でどのように活かせば良いかイメージもしにくいと思いますので、少しこれについても触れたいと思います。

ただ、学習者のレベルや学習の課題は人によって違います。なので以下の3つのタイプ別に分け解説したいと思います。

  • タイプ1:知識を入れてはきたが、あまり使う練習をできてない人向け
  • タイプ2:正確性が過度に気になってしまう人向け
  • タイプ3:スピード重視で正確性はあまり重視できてない人向け

タイプ1:知識を入れてはきたが、使う練習をあまりできてない人向け

勉強はして英語の知識は入れてきたけど、それを「使う練習」ができてない、という方向けです。

学校の授業や文法・単語テキストなどで、英語の知識は入れてきたがそこで止まっている、という場合はやはりうまくコミュニケーションはできません。

「練習を通して、知識をスキルに変える」ことが重要です。

アウトプットで「知識を使う」機会を増やす

これは主にアウトプットの役割その⑤で見た内容ですね。
アウトプットは、自分のさじ加減で知識を使う機会を増やせます。

例えば、「今日は使役動詞を集中的に訓練しよう!」と思った場合。
アウトプットする中で、意図的に使役動詞をなんども集中的に使うようにすれば、その知識が自動化されていきます。

一方、インプット系の練習だけだと、使役動詞にうまく出会える確率は、その英文次第です。

例えば瞬間英作文などは、アウトプット系の練習に属し、ターゲットの文法ルールをアウトプットの中で何度も使っていくという練習法です。
» 参考:瞬間英作文ってどんな効果があるの?【練習がマッチする人も解説】

「自分で知識を使う機会を作れる」というアウトプットの特性をうまく活かし、知識の自動化の第一歩を踏み出しましょう。

タイプ2:正確性が過度に気になってしまう人向け

特に喋ったりしていて「文法など細かいことまで気になってしまって喋れない…」という方向けです。

これはある意味、アウトプットの役割その③がちゃんと機能しているとも言えます。

ただ、やはりそれが強すぎてアウトプットの機会が減ってしまっては良い練習にはなりません。

喋る感覚をつかむまで、正確性は一旦置いてOK

はじめはこれで良いと思います。

アウトプットの役割その④でも見ましたが、言語習得を促す1つのキーファクターは「トライ&エラー」です。

実際に自分が身に付けた知識を使う中で、「これは違う」「これは合ってた」と確かめ(仮説検証)、その繰り返しが効果的な学習に繋がっていきます。

まずは多少間違っていても良いので、喋る回数を重視し進めていきましょう。

ただそんな中でも、「これは通じた」という経験も少しずつ積み上がっていきますので、自分の持っている仮説が正しいと確認でき、徐々に喋る時の自信にもつながっていきます。

その状態になってきたら少しずつ、アウトプットの役割①②のような自分のパフォーマンスに対する気づきについても、敏感に取り扱っていくようにしましょう。

タイプ3:普段スピード重視で、正確性はあまり重視できてない人向け

こちらのタイプは、特に、仕事で英語を使わなければならない状況の方で多いのではと思います。

業務を遂行するにはとにかくまず話に着いていかないといけないので、一旦正確性は度外視して英語を使用している、という状況などです。

この場合は、仕事場では難しいかもしれませんが、少なくとも練習の場では正確性を意識して伸ばしていく必要があります。

そうしないと、少し込み入った内容のことを言いたい時に、細かなニュアンスを緻密に表現することができなくなるためです。

アウトプット練習中の「気づき」を大切にしましょう

練習の段階では、言葉に詰まってしまい意思疎通がそこで一旦ストップしても全くOKです。

アウトプットの役割①でも見たように、逆にその躓きは、自分に何が足りないか自覚するためのきっかけになり、新しい表現を使えるようになるためのチャンスになります。

また、役割②でも見たように、相手が正しい表現のフィードバックを返してくれた場合も言語習得のチャンスです。自分の出した英文と、相手の英文を比較し、自分が何を間違っていたのか、どうすれば正しい表現になったのか納得しながら進んでいきましょう。

もしその場で解決できなかった場合は、そのあとで文法テキストを参照するなどし、知識を埋めるようにしましょう。

急がば回れが鍵です。

その都度立ち止まりながらしゃべり、スピードを落とすと「後退している」という感覚に陥るかもしれませんが、大丈夫です。

一度、正確に表現する方法や知識を得たら、あとはそれをアウトプットの中で何回も使い自動化していけばOKです(役割⑤)。

  • 焦らずまずは、アウトプットの中で得られる「気づき」を大切に練習を進める
  • どう言えばよかったのかを1つ1つ解決する
  • 正確に表現できるようになったら、あとはその知識を使って何回もアウトプットして自動化

このようなプロセスを踏み、アウトプットの強みを最大限活かしつつ、正確かつ流暢に喋れるようにしていきましょう。

さいごに:とはいえ、インプットも超重要


以上、アウトプットの5つの役割 & その強みを学習でどう活かすかでした。

なお、アウトプットが習得に効果的なのは理解できたと思いますが、インプット系の学習も非常に重要です。

単純に考えて「聴いて(読んで)理解できないものは、自分でアウトプットはできない」からです。

特に、普段から目にする読みもの、聴く内容の理解があやふやな場合は、これも急がば回れです。

インプット系の学習の比重を意識的に増やすようにし、ゆっくりでもいいのでまずは正確に理解できるように → 練習を重ね速く理解できるようにと進めていきましょう。

おわり


ーーー
【参考文献】
de Bot, K. 1996. Review article: the psycholinguistics of the output hypothesis. Language Learning, 46 (3), pp. 529-555.

Swain, M. 1985. Communicative competence: some roles of comprehensible input and comprehensible output in its development. In S. Gass and C. Madden, eds. Input in second language acquisition. Rowley, MA: Newbury House, pp.235-253.

Swain, M. 1995. Three functions of output in second language learning. In G. Cook and G. Seidhofer, eds. Principles and practices in applied linguistics: studies in honor of H. G. Widdowson. Oxford: Oxford University Press, pp.125-144.

門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.

村野井仁. 2006.『第二言語習得研究から見た効果的な言語学習法・指導法』東京:大修館書店.