リピーティングの効果とは?【練習の特徴や意味を詳しく解説】
「聴いたものを繰り返して、一体何の意味があるの?」
「効果を詳しく知りたい。」
今日はこんな疑問に答えます。
本記事の内容
- リピーティングとは?
- リピーティングに取り組む意味・効果とは?
今回も主観に偏り過ぎないよう、応用言語学系の文献も参考にしつつ、私なりの考えを書いていきたいと思います。
では行きましょう。
リピーティングとは?【リピーティングでやること】
まずは練習の手順について、簡単にまとめると以下の通りです。
リピーティングの手順
- 音源を流し、ある英文範囲(句〜1文くらいの範囲)を聴き取る
- その後に来るポーズで、聴いた英語をそのままくり返し復唱する
- 次の範囲を聴き取る
- その後来るポーズでまた復唱する
- ↑上記の繰り返し。
上記のようになります。
可視化すると、以下のような流れになります。
通常リピーティング用につくられた教材では、「英語 → ポーズ → 英語 → …」と再生されるようなデザインになっています。
専用の教材を使わない場合は、自分で意味的に切りの良い箇所で再生を止め、その間にリピートしていくかたちになります。
リピーティングに取り組む意味・効果
リピーティングの意味・効果
上記の通りです。
「内在化」とは、長期記憶の中に取り込み、自分でしっかり使える知識にすることを指します。比喩的には「自分の血や肉とする」と言い換えることもできます。
なぜこのような効果があるかというと、リピーティングでは、限られた時間の中で耳にした音声から意味内容の理解までを一気に取り組む必要があるからです。
学習者を「深い言語処理」にPush!
リピーティングは「ただ聞き流す」のとは対照的に、
といった、より深い言語処理に学習者を取り組ませるような練習法です。
限られた時間内に、こういった処理に一気に取り組まないといけないため、その分脳にかかる認知負荷も高い(つまり集中力を必要とする)練習法です。
ですが、ある程度の時間的なプレッシャーがある中で、そういった深い言語処理に取り組むからこそ、音声・語彙・文法といった言語知識がより自分のものとして身について行きます。
言語知識の内在化を促す、リピーティングの特徴3つ
ではより具体的に、一体リピーティングの何がそのような深い処理に取り組ませるのか、見て行きましょう。
理由としては、リピーティングに以下のような3つの特徴があるからと言えます。
- 特徴①:聴き取った英語を保持し、そのまま復唱しないといけない
- 特徴②:復唱するためのポーズがある
- 特徴③:半アウトプット的な練習である
上記の通りです。
順番に見て行きましょう。
特徴①:聴き取った英語を保持しそのまま復唱しないといけない
リピーティングでは、聴き取った英語を後でそのまま復唱しないといけません。
そしてリピートを成功させるには、いかに聴いた情報を素早く処理し「意味内容」にまで変換できるか、ということが鍵になります。
これは、人間が聴いた音声をそのまま音声として脳内で保持できる容量が限られているためです。
2秒を超える情報の保持 → 深い処理が必要。
人が言語情報の「処理」や「保持」を行っている場所をワーキングメモリと呼びますが、このワーキングメモリは容量が限られています。
研究者Baddeley(2002)によると、一般的に人が耳にした音声情報を一時記憶できる範囲は、直近に聞いた「約2秒分」とされています。
このような容量の限界があるため、特に2秒を超える英語のリピーティングの場合は、音声だけで記憶し言おうとすると、非常に困難を極めます。
(ためしに3, 4秒くらいの英語を聴き、音として記憶しようとしてみてください。おそらくポーズが来る頃には、はじめの方に聴いた部分を忘れてしまい、なかなかうまく復唱することができないと思います。)
このような2秒の制約をクリアするには、ただ聴いた音を「音」として記憶するのではなく、そこから語彙・文法・意味といった情報処理までを瞬時に行い、「意味内容」をつかんで頭に置いておくことが必要です。
そしてその「意味内容」も手がかりにリピートをしようとすることで、うまく復唱することが可能になります。
意味内容までつかむ深い処理 → 言語知識の習得へ。
上記のように、ただ表面上の「音」をつかむだけではなく「意味内容」を想起するところまで取り組むことで、そこで使われている英語表現や知識が、学習者の長期記憶として身につきやすくなります。
(研究者のCraik & Lockhart(1972)は、このような人間の記憶の性質を、“Level of processing”(処理水準)や “Depth of processing” (処理の深さ)として指摘しています。)
なぜそういった深い処理の方が記憶強化につながりやすいかというと、意味的な処理にまで取り組んだ方が、その人が既に長期記憶中に持っている知識をより広範囲で使うことになり、新たに入ってくる言語情報とより密に関連して記憶しやすくなるからです(門田, 2015)。
ただ音をなぞって覚えるだけよりも、きちんと意味内容までつかんだ英語知識の方が、印象にも記憶にも残り、自分のものにしやすいということです。
特徴②:復唱するためのポーズがある
上記のような深い処理が求められる一方で、「きちんとそのための時間が保証されている」というのもリピーティングの大きな特徴です。
この点は、ポーズがなくひたすら聴いたものをすぐ口にしていく必要のあるシャドーイングとは対照的です。
シャドーイングは、あえてポーズを設けないことで、学習者を音声面だけに集中させ、音声知覚の強化を目指す練習法です。この点でリピーティングとは目的が異なります。
» 参考:シャドーイングとリピーティングの違い【どっちが良いの?】
一方リピーティングでは、きちんとポーズが設けられています。そのため、この間に聴き取った音声情報を語彙・文法・意味的にもより深く情報処理することができ、長期記憶にも残しやすくなるのです。
特徴③:半アウトプット的な練習である
「特徴①」でも見たように、特に2秒を超える長い英語のリピーティングについては、
といった流れで取り組む必要があります。
特に後半の「2: 意味イメージ → 3: 英語を言う」という脳内での流れですが、これは人がスピーキングをするときの言語処理のメカニズム(以下の①→②の部分)に似ています。
スピーキングのメカニズム
(このスピーキングのメカニズムについて詳しくは、英語スピーキングの伸ばし方【人が喋るメカニズムから科学的に解説】もご覧ください。)
上記のような、①概念化 → ②形式化という脳内処理をたどることからで、リピーティングは「半アウトプット的な練習」と言えます。
アウトプット練習のメリット
そして、このようなアウトプット的な練習に取り組むメリットの1つは、学習者に「文構造・文法的な処理」にもしっかり取り組ませやすくする点です。
これは、普段英語インプットを「理解する」ときは、何となく全体的な意味さえ取れれば事足りますが、アウトプットでは「自分自身が」英語を組み立てていかないといけないためです。
自分で語順なども考えて文を完成させないといけないので、その過程で、学習者の注意が文法的な側面にもしっかりと向けられるのです。
以上のようにリピーティングは、英語を聴きそこから作り上げた意味内容(概念)を、もう一度自分で英語に再構築し直すタスクと言えます。
もちろん純粋なアウトプット練習とは言えませんが、普通に聞き流しているときにはスルーされがちな、文構造といった言語処理にもしっかり取り組ませ、鍛えることができると考えられます。
さいごに:リピーティング = 負荷は相当高いです。
リピーティングの効果まとめ
- ①そのままを復唱しないといけない → 英語インプットを注意深く聴こうとし、意味内容も含めた深い処理へ
- ②ポーズがある → その深い言語処理に取り組む時間が確保されている
- ③半アウトプット的 → 文法処理にも脳を積極的に取り組ませる
上記のようになります。
これらの特徴が、学習者を使う英語素材に対して「狭く、深く」取り組ませ、そこから言語知識を自分のものとするように促して行く練習と言えるでしょう。
ただその反面、学習者に対する要求度も非常に高いタスクと言えます。
筋トレに例えるなら、ウェイトをつけた状態で、しかもゆっくりではなく瞬発的に上下スクワットをやらされているようなものです。
そのため「うまくできない…」「難しい…」と感じて挫折する方も多いと思います。また、本記事で見て来た「言語知識の内在化効果」も、脳がキャパオーバーせずに、きちんと語彙・文法・意味などの処理までこなせた場合にのみに得られるものです。
そのため、練習に取り組む際には、事前にある程度スキルが「自動化」している必要があります。また、特に2秒を超える長いものについては難易度が格段に増すため、範囲を調整しつつ練習するなど工夫が必要です。
取り組むタイミングや、練習中の負荷をどう調整するかを考えつつ、導入していく必要がある練習法かと思います。
さいごに、言語習得の大部分は、インプットとして入って来た英語を「理解する」ことで起こります。そしてインプットの量と質を両面から高めることが、効率的な習得には必要です(白井, 2008)。
各学習法で鍛える部位や処理スキル、長所・短所など特徴があるので、そういったことも理解しながら、効果的に学習法を選べるようにして行きましょう。
以上、よろしければ参考ください。
おわり
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【参考文献】
Baddeley, A. D. 2002. Is Working Memory Still Working?. European Psychologist, 7(2), pp. 85–97.
Craik, F. I. M. and Lockhart, R. S. 1972. Levels of processing: a framework for memory research. Journal of verbal learning and verbal behaviour, 11, pp. 671-684.
Levelt, W. J. M. 1989. Speaking: from intention to articulation. Massachusetts: MIT Press.
門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.
白井恭弘. 2008. 『外国語学習の科学: 第二言語習得論とは何か』東京:岩波書店.