瞬間英作文で暗記してしまうときの対処法【効果的な3つの方法】
「瞬間英作文をやってると英文を暗記してしまう… どうすればいい?」
今回はこんな疑問にお答えします。
この記事を読むことで、暗記してしまうときの対処法がわかり、瞬間英作文で得られる本来の効果を最大化できるようになります。
ではいきましょう。
瞬間英作文で暗記してしまうときの対処法【効果的な3つの方法】
英文を暗記してしまうときの対処法は以下の3つです。
- 方法①:文法を使うことを意識する
- 方法②:「瞬間」英作文、とはいえスピードを落とす
- 方法③:1冊目のテキスト以外の英作に取り組む
順番に見て行きます。
方法①:文法を使うことを意識する
まず練習に取り組む際の意識としてこれがとても大事です。
これは、
- 一旦覚えた英文をそのまま記憶から引き出すのではなく
- 文法的な手順に従って1から英文を組み立てていく
という、頭の使い方をしていくためです。
そして後者は、瞬間英作文が本来狙いとしている大事なポイントです。
イメージしやすいように、具体例で見てみましょう。
覚えた英文をそのまま出してしまうNG例
例えば、SVOO がテーマの場合、「彼女は私に時計をくれた。」という日本語を見たら、過去に一度トライして覚えていた
と言う答えの英文を丸ごと記憶から思い出して言う、「彼女は彼にお金を貸した。」と見たら、これも
と言う英文を丸ごと記憶から取り出して言う感じです。
一見英語はパッと口から出ては来るので、瞬間英作文はできているように見えます。
しかしこれだと、瞬間英作文が本来目的とする文法のルールに沿って文を自分の言いたいようにカスタマイズし、個別の状況に合わせた英文を自由にしゃべれる力をつけるという練習ができません。
実際やっていることとしては、一回覚えた単語の羅列をそのまままもう一度言うというような行為になってしまいます。
文法ルールに沿って英文を生み出していくOK例
ではどうするか?
例えば、「SVOO」という文法がテーマの場合を見てみましょう。
→ (回答例)She gave me a watch.
彼女は彼にお金を貸した。
→ (回答例)She lend him money.
などがありえます。
大事なポイントとして瞬間英作文に取り組んだときに学ぶべきは、それぞれの文が共通してとっているある形です。
今回の例でいえば、「誰かに何かを渡す行為」について言いたいとき、
と言ったようなことです。
(「渡す相手」と「渡す物」の語順は、逆はNGです。英語は語順が変わると意味がそもそも大きく変わってしまう言葉です。)
この共通のパターン(SV + 渡す相手 + 渡す物 と並べるパターン)を知っている、もっと言うと、そう語順を並べる文法的な「手順」を素早く実践できるように慣れている(自動化している)からこそ、 例えば、実際の買い物をしてて美味しそうなパンを見たときに、
という判断を一瞬ででき、今まで自分が一度も口にしたことがない
(彼にパンを買ってこ!)
のような文を1から作り出せるのです。
このように瞬間英作文では、テキストの各ページがテーマとする文法ルールにしっかりと則っり、その「文法手順」に沿って瞬時に英語を組み立ていけるよう練習していくことが大事です。
スキル習得(Skill Acquisition)研究の学者であるLevelt (1978) は、この「手順」のことを “PLAN” と称しています。
そして、スピーキングスキルで身につけるべきは、最終的に出来上がった英文そのものではなく、それを作るためのPLANであるとしています。
瞬間英作文では、覚える必要はないと言う意味で、完成物の英文は一旦作ったらあとはどうでもいいです。
それよりも文法の手順に沿って英文を組み立てる、生み出していく過程を大切に、そのプロセスを練習して行きましょう。
方法②:「瞬間」英作文、とはいえスピードを落とす
瞬間英作文のとき意図的にスピードを調整してみる、というのも大事です。
上記のような文法的な手順が十分に自動化してない(楽に、素早くできない)うちに、無理にスピードだけ上げようとすると、脳みそが情報処理をショートカットをしてしまいより簡単な「丸覚え」という方法をとってしまうからです。
これは言いかえると、求められる言語の処理力に対して現在の自分の頭のキャパが足りていない、いわば練習の負荷がかかりすぎている状態です。
はじめはスピードは落としてOKです。
なので英語に限らずどんなスキルもそうですが、正しい手順でできないうちは、一度スピードを落として徐々に速めるようにしていきましょう。
はじめて教習所で自動車の運転を始めたとき、はじめての楽器に触れたときなど、ぎこちないながらゆっくりと手順を確認しながら取り組んで行ったと思います。
英語の場合も、[方法①]で見たような文法的な手順を考えて英語を組み立ていくとどうしてもはじめは時間がかかります。
間違えなどが起きる確率も高くなり、それを正しくやろうとするとさらに頭には負荷がかかります。
「正確さ」と「スピード」は、どちらか一方を重視すると、もう一方が犠牲になりがちです。
なので、[方法①]でみたような英文法的な処理がうまくこなせないうちは、スピードをいったん落として負荷の調整をし、正確さを優先するようにしましょう。
その正しい手順に慣れるにつれてスピードも上げ、最終的に「瞬間」英作文ができるようにしましょう。
単語が易しいテキストを選ぶ
その他の負荷を下げる方法です。
たとえばテキストについては、特にはじめは単語がとにかく易しいもの、1文ずつがあまり長くないものを選ぶことがポイントです。
分からない単語ばかりだと、それを思い出す方にリソースが取られてしまい、本来練習すべき文法的な処理に頭の意識が割けないからです。
単語がどうでもいいというわけではないですが、瞬間英作文が本来目的とする「文法処理力を鍛える」ということが犠牲になるくらいであれば、単語の難易度は一旦下げ、文法処理にフォーカスした方が良いと思います。
文法知識が定着していないうちはまずそっちを固める
また文法知識がそもそもあやふやな場合は、瞬間英作文に入る前にテキストなどで復習が必要です。
「この文法はこういう手順だな」とすぐ記憶から引き出して使える状態ようにしておきましょう。
そこまで持っていっておかないと、いざ瞬間英作をする段になって、「この文法ってどんなのだったけ?」「これで合ってたっけ?」と思い出す方の作業に脳のリソースが取られ、負荷がグッと上がってしまいます。
これだと瞬間英作文が本来目的とする、文法知識を「使う」という練習に集中できません。
テキストで予め知識の定着をしておきましょう。
方法③:1冊目のテキスト以外の英作に取り組む
[方法①][方法②]を練習に反映しつつ、それでも繰り返しているうちにやっぱり覚えてしまった、という場合の対処法です。
他のテキストを使う
シンプルに他のテキストに変えるというのも一つの手です。
当然初めての文に取り組みますので、記憶に頼ることがでず、その場で1から文法ルールに則って文を組み立てていく必要があります。
十分に文法知識が自動化されてない場合は、そのファーストトライで詰まる可能性が高くなると思いますので、そこであらためてテーマとなっている文法ルールに注意を払い、英作をできる練習をして行きましょう。
尚、一旦1冊目からは離れ、期間が経って忘れた頃にまた1冊目戻って練習するというのでも良いと思います。
独り言に取り組む
テキストを使わず、独り言で英語をしゃべって行き、その中で文法的な処理力を磨いていくというのも手です。
この練習でも、その場で1から文法ルールに則って文を組み立てていく必要性が出てきます。
でも何を独り言で何をしゃべるの?と思うかと思いますが、はじめは「何かを描写する」のが比較的簡単で入りやすいです。
見えるものや状況を英語で描写して行く方法です。
たとえば外を歩いていて、こんな状況を目にしたとします。
この状況を描写して、「現在進行形 -ing」を使う練習をすると、
The man is checking his camera.
②(右から2番目の女性を見て)
The woman is looking at the sky.
③(一番右の男性を見て)
The man is stopping to check his smart phone.
と言えたりします。
少し発展させて、「-ing の後置修飾」の使う練習をすると、
② That’s a woman looking at the sky.
③ That’s a man stopping to check his smart phone.
と言えたりします。
さらに発展させ、「関係代名詞」も同じ要領で練習ができます。
② That’s a woman who is looking at the sky.
③ That’s a man who is stopping to check his smart phone.
とこのようにどんどんと新たな英作にチャレンジすることができます。
ただこの描写練習の1つの問題としては、実際に上記のような発言をする場は現実のコミュニケーションではほぼ無いということです。
①も②も③も、普段このような発言をする機会は基本ありません。
隣で歩いている友達に言ったとしても「いや見りゃわかるよ!」となるでしょう。
これはこれで、言語学習で考えるべき大きな問題ですが、ひとまずいろんなバリエーションで英作の練習に取り組める、という点では有効と思います。
以上、瞬間英作文で暗記してしまうときの対処法でした。
今の練習がより効果的になるよう、ぜひご参考ください。
おわり
ーーー
【参考文献】
Levelt, W. J. M. 1978. Skill theory and language teaching. Studies in Second Language Acquisition. 1 (1), pp.53-70.