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瞬間英作文の例文が不自然ですが問題 ←徹底解説します。

瞬間英作文

「瞬間英作文の例文に不自然なものが含まれているけどいいのかな?」
「この表現、自分の生活で使う機会ないんだけど…」
「ネイティブはこんな言い回ししないのでは?」
「気になる… どうしよう。。」

今日はこんな疑問に答えます。
瞬間英作文の不自然さが気になる方は必見です。

「これでいいのかな?」と迷いながら練習を続けていくのはなかなか辛いと思います。

瞬間英作文の良い面、悪い面を両サイドから深く理解し、納得感を持って練習を進められるようにしましょう。

本記事の内容

  • 1 不自然な英文とはどんなもの?その問題点とは。
  • 2 一方で瞬間英作文のメリットとは?
  • 3 上記2つを踏まえ、どのように学習を進めていけばいいか?

なお私が過去に瞬間英作文に取り組んでおり、その後大学院で英語教授法(TESOL)を学んでいました。

そこで得た言語学や第二言語習得論からの知見を参考にしつつ、当時の自分の練習がどうしたらより効果的になったか、これから取り組む人にとっても役に立つかと考えながら書いていきたいと思います。

それではいきましょう。

1 瞬間英作文の例文が不自然問題【不自然な例とその問題とは?】


まず瞬間英作文をやっていて「この英文、不自然だな。」と感じるものは、大きく以下のパターンがあると思います。

  • その1「文法的には正しい。けどネイティブはこんな言い方しない」パターン
  • その2「この表現、いつ使うの?」パターン
  • その3「情報の順番が不自然に見える」パターン

それぞれ詳しく見て行きましょう。

※とちょっとその前に、これだけ押さえましょう!

我々がよく口にする「コミュニケーション能力」とは何でしょうか?

これを事前に確認しておくと「不自然 or 自然な英語のパターン」を整理しやすくなり、また今後、自分のスピーキング学習などを見直すときにもとても役立ちます。

言語学者のCanale (1983) によると、「コミュニケーション能力」とは以下の①〜④の能力から成り立つとされています。

  • ① 文法的能力:語彙や文法、発音を駆使して、正しく文を理解したり自分で作れる力
  • ② 社会言語能力:ある状況や文脈(いつ、どこで、どんな相手と会話をしているのかなど)に応じて「適切に」ことばを使える力
  • ③ 談話能力:1文単体ではなく「文どうしのつながり」として、あるまとまった意味を理解したり伝えられる力
  • ④ 戦略的言語能力:コミュニケーション中何か問題が生じたときに、うまく対処しコミュニケーションを続けられる力

誰かと効果的にコミュニケーションを取れるようになるためには、これらをバランスよく身につけなければいけません。

①〜④それぞれ簡単に補足します。

①文法的能力はイメージしやすいと思います。学校の授業や受験、その他多くのテキスト(単語帳、文法の参考書、発音テキストなど)でよく扱われている部分ですね。
(なお、「文法的」能力と言ってますが、ここでは発音なども含まれます。ある意味発音も「音の出し方のルールであり規則」なので。)

②社会言語能力は、例えばレストランの店員が注文を取るときに、お客に対して

料理Aを注文してください。

と相手の意に反して料理を指定し注文するよう命じるのは、明らかに「話す内容として不適切」です。

また、注文を復唱するときに

じゃあ、注文はAとBとCでいい?ちょっと待っといてね。

と言うのは、明らかにこれは「表現のし方として不適切」です。

社会言語能力がある店員は、きちんと

ご注文はお決まりでしょうか?AとBとCでございますね。少々お待ちください。

と言うはずです。このように、「どこで」「(立場も含めて)誰が誰に対して話しているのか」などをきちんと踏まえ、それに「ふさわしい内容やしゃべり方」をできることが、②の社会言語能力です。

③談話能力は、例えば昨日の出来事を友達に話しているときを考えましょう。以下のようにしゃべることがあると思います。

昨日はほんと踏んだり蹴ったりだったよ。朝、2時間も寝坊しちゃった。そのせいで、会社に遅刻して上司に怒られたし。。その上財布もなくた。あ”ぁもぉムリィ〜!

これは5つの文で構成されてますが、1文ずつはちゃんと意味として繋がっています。例えば下線部の「その」という代名詞は、前の文の意味内容をきちんと受けています。
(これをcohesion「結束性」と言います。)

また文全体で見てみましょう。もし「2時間も寝坊しちゃった。」の直後に「今日の昼はパスタが食べたい。」と言ったとすると、これは明らかに文全体のトピックからそれてしまい不自然です。

基本内容は一貫させないといけません。
でないと相手が混乱し、こちらの内容をうまく理解してもらえません。
(これをcoherence「首尾一貫性」と言います。)

このように1文単位ではなく「文と文を効果的に繋ぎ、文章全体として内容をうまく理解したり伝えたりする力」が、③の談話能力です。

④戦略的言語能力は、例えば自分が言ったことが理解されなかったときのことを考えてみましょう。おそらく「言い換え(パラフレーズ)」を使ったりして、どうにか相手に理解してもらおうとするはずです。

また考えがまとまらず言葉が出てこないときに、そのまま沈黙して黙っていたらお互いかなり気まづいです。そんな時に「えーっと..」「何とか言うか..」と言ったfillarsを挟むことで間をつなぐとコミュニケーションがスムーズに続いていきます。

このようなコミュニケーション中の問題に臨機応変に対応できる力が、④戦略的言語能力です。

以上がコミュニケーション能力です。人と会話をするためにはこれらの能力をバランスよく育てていかないといけません。

ではこの観点も踏まえ、いよいよ瞬間英作文の不自然な英語のパターンを見て行きましょう。

その1「文法的には正しい。けどネイティブはこんな言い方しない」パターン

これは、①の文法的能力に関連があります。

例えば瞬間英作文で、

私はあなたと結婚したい。

と英作する例を考えてみましょう。

ざっと以下のような可能性が考えられます。

・I wish to be wedded to you.
・I want marriage with you.
・My becoming your husband is what I want.
・I desire you to become married to me.
・I want to marry you.
(↑白井 2012著『教師のための第二言語習得論入門』p.34から引用)

さてこの中で1つだけナチュラルな正しい表現となります。どれでしょうか?
 ・
 ・
 ・

答えは I want to marry you. だけです。
他の4つはネイティブが言わない不自然な言い回しです。

ここで重要なのは、どの文も語順や構文など文法的にみたらすべて正確です。ですが「I want…」の文しかネイティブは普通使いません。

単語と文法知識を覚えるだけでは不十分

①の文法能力とは、単語と文法を「ただ知っている」だけでは不十分ということです。

「文法的には間違ってないからいいんじゃないの?!」と感じるかもしれませんが、

大事なのは、文法規則だけで全てが割り切れるわけではないことをまず理解しておくことです。
(白井, 2012, p.34)

瞬間英作文のテキストでもたまにこのような文が出て来ます。

それは、文法と単語を組み合わせ機械的に文をつくり、リアル世界でネイティブが口にするのかどうかまでは考慮しないまま例文を使用している、ということも一因としてあると思われます。

最終的にはこの域を抜け出さないと、本当の意味での①文法能力は身につけられません。

その2「この表現、いつ使うの?」パターン

これは②の社会言語能力と関係があります。

このパターンの最たる例の1つは、

This is a pen.

ではないでしょうか。

①文法的能力の視点で見ると、この文は完全に正しい文と言えます。

ただもし瞬間英作文でこのような例が出てきたら「いや、普通一目見れば相手もすぐペンってわかるだろうし..」「こんな表現、いつ使うの?」と感じてしまうと思います。

これは②の社会言語能力の問題です。

つまり、わざわざペンと説明しなくてもいいような状況(例:明らかに相手も一目でペンとわかる物体が目の前にある状況)では、「This is a pen.」と発するのは、その場の「話す内容のチョイスとして不適切」です。

「コミュニケーションの状況」って大事な話

ですがもし状況が変わり、仮に以下のような形のペンが存在していたらどうでしょうか?

(↑子どもの頃、実は私がこのような注射器を模したペンを持っていました。針が芯になっており、液体の部分もちゃんと色付きの液体が入ってました。この写真は本物の注射器ですが。)

学校に持っていくと、興味を持った友達がだいたい「なにそれ!?」などと聞いてきます。

そしてそんな状況で、

This is a pen.(これペンだよ。)

と答えるのは正当な発言でしょう。

つまり「This is A.」という表現は、

・相手がよくわかってないものが目の前にあり何なのか知りたい
・相手がそれについて聞いてきた
・自分がそれについて答える

という社会的な文脈・状況の中では、完全にふさわしい内容であり自然なことばです。「それがどんなものなのか相手に説明したいとき」に役割をしっかり果たしてくれます。

このように、その「コミュニケーションの状況」によって、口にすることばが自然だったり自然ではなかったりします。

(↑なおこの「This is…」の例は、和泉, 2012著『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業』を参考にしています。)

状況によって「表現のし方」も左右される

上記は「話す内容が状況にマッチしているか」という視点でしたが、今度は「内容はOK、ただ表現のし方が状況にマッチしているか」という例です。

例えば、瞬間英作文で、

(お題)私のペン使っていいですよ。
(回答例)You may use my pen.

というものがあったとします。おそらく、誰かにちょっとペンを貸してほしいと言われ、それに対する返答であることは容易に予測ができます。

そのような状況の時に「使ってOK」という旨を伝えるのは、コミュニケーションの状況としては全く自然です。

ですがその表現のし方として、もしmayを使って言ってしまうと「許可」のニュアンスが強まってしまい、かなり上からの物言いになってします。

基本的には「You can…」で始めた方が自然なやりとりになる場合が多いと思います。

上司など目上の人にmayで返答したら気まづい雰囲気になるかもしれません。

また例えば、

Who are you?

という表現。

もし仮にこれを、ただ「相手の名前を伺いたい」という目的で発しているのであれば、表現の仕方として不適切です。

直接的でぶしつけな印象があり、また名前を聞くというよりは「あなたどなたですか?」などという感じがあります。

相手の名前を伺いたいときはやはり、

What’s your name?
May I have your name?

などが、一般的でふさわしい表現になるのではと思います。

瞬間英作文は「状況」がない

瞬間英作文のテキストは、基本的に「短文の羅列」です。誰と、いつ、どんな状況での会話なのか、状況はそこに示されていません。

よって、その例文がどんな状況で話されているものなのか、適切な表現なのか不適切なのかという判断には大きくブレが生じます。

人によっては「こんな表現使う場面が思い浮かばない、、不自然だな」と感じる原因になってしまいます。

これでは

  • ある状況の中で、どんな目的を達成するために(機能)
  • どんな意味内容のことを(意味)
  • どんなことば遣いや表現の仕方で(言語形式)で表現するか

という3つを関連させながら学ぶことができません。

和泉(2016)はこの点について著書の中で、

言語習得とは、形式・意味・機能の結びつき(form-meaning-function connection)の学習に他ならない

と述べています。

「形式・意味・機能」を三位一体で学習していくのが理想です。

ただ、瞬間英作文は短文をそれ単体で英作していく練習のため、各文のコンテクストが明示されていません。

この点で、比較的「形式・意味・機能」の結びつきの学習を達成しにくい練習とも言えるでしょう。

その3「情報の順番が不自然に見える」パターン

これは主に③の談話能力と関係があります。

例えば、文法のテーマが「受動態」の瞬間英作文で、

The comment was posted by him.

という文があった場合に、

He posted the comment.

とどちらが自然なのかという問題です。

なんとなくHe posted…で始めた方がスッキリして自然な感じもします。

ただこれについても実はこの1文だけでは完璧には判断できません。

「この文の前の文との兼ね合い」がどうかわからないことには、「情報の順番」としてどちらが良いかわからないからです。

基本英語は、すでにお互いに共有されている情報(旧情報)は文の前の方に、話者が新たにフォーカスして相手に伝えたい情報(新情報)は後ろに置かれる傾向があります。

もし話の流れ(前の文とのつながり)の中で、「投稿主が『彼』である」ことを伝えたい場合は

The comment was posted by him.

を、特にそのようなフォーカスなしにただ「コメント投稿した」ことを伝えたいときは

He posted the comment.

が自然ではないかと思います。

学者のCanale (1983) は、このあたりの「新情報⇄旧情報」の観点、そして前後の文脈によって文がとる形が変わる点も、コミュニケーションを円滑に進めるために必要な要素の1つ(③談話能力)として指摘しています。

瞬間英作文のテキストはお互いに関係のない短文の羅列です。なので、やはりのこのあたりの自然 or 不自然さまでは判断ができません。

結果「これは不自然じゃないの?」と感じてしまうケースが出てくる原因になっていると思われます。

不自然なパターンのまとめ

3つの不自然なパターンを見てきましたが、全ての文に共通するのは「文法規則的には正しい」と言うことです。

ただそれが、

  • ネイティブが実際に使う言い回しか(←パターン1)
  • コミュニケーションの状況にあった内容や言い方なのか(←パターン2)
  • 前の文との関係で、情報の順番として適切か(←パターン3)

といった兼ね合いによって、ときに瞬間英作文の例文が「これは自然じゃない」と感じてしまうものになってしまいます。

そんな、ある種限界感のある瞬間英作文ですが、一方でこの練習に取り組むメリットは何でしょうか?

2 瞬間英作文のメリットとは?


色々とありますが、この練習の最も大きなメリットは

  • 統語(文法)処理の自動化
  • それによって、いろんな文を自分で1から生み出せるようになる

ということです。

順番に詳しく見て行きます。
(上記以外の瞬間英作文のメリットについてはこちらをご覧ください。 » 参考:瞬間英作文ってどんな効果があるの?

瞬間英作文は、統語処理の自動化に効く

統語処理スキルとは簡単に言うと「文法のルールに則って、自分で1から英文を組み立てていく力」のことです。
(なおこれは4つの「コミュニケーション能力」のうち、①の文法的能力に当たります。)

瞬間英作文は各文法テーマごとにページ割りされており、10個あたりの例文でその「文法の型」を集中練習できるようになっているため、各文法ごとにこの統語処理を鍛えやすいです。

例えば、「誰かにものを渡す」意味を伝える文法の型の代表は「SVOO」ですが、

<お題>
私は彼にその高い腕時計をあげた。

を瞬間英作文する場合は、学習者は頭の中で、

・S → I
・V → give
・その直後は「渡す相手」が来て → him
・その直後は「渡す物」が来て → the expensive watch

ということを同時的にできるだけ速く脳で計算(統語処理)を行い、

I gave him the expensive watch. できた!

とやっていきます。

もう一つ例えば、

母は妹にスマホを買った。

の場合は、

・S → My mother
・V → bought
・その直後は「渡す相手」が来て → my sister
・その直後は「渡す物」が来て → a smart phone

という処理を同時的に行い、

My mother bought my sister a smart phone. できた!

とやっていきます。

「SVOO」についての10個の例文を使い、上記のような処理をなんども繰り返し行うことで、そこに共通する単語の並べ方、つまり

S → V → 渡す相手 → 渡すもの

と文を構築していく手続きに慣れ、最終的にはスピーディーかつ無意識的に(頭が楽に)できるようになってきます。

これが「統語処理の自動化」です。

ここがしっかり身につくと、また新しく「誰かに何かを渡す」意味を伝えないといけないときに、瞬時に上記の「S → V → 渡す相手 → 渡すもの」という語順の頭の使い方をとっさに適用し、自分で新たに文を組み立てることができます。

答えの英文を暗記する練習ではない

よく瞬間英作文では「英文を暗記してはいけない」と言われますが、理由はこの統語処理を鍛えるためです。

もし丸暗記してしまうと、語順も全く関係なしに

【My mother bought my sister a smart phone.】

というひとかたまりをあたかもイディオムのように丸覚えし、全文をそのまま思い出して口から出すという行為になってしまいます。

瞬間英作文のゴールは「瞬時に英作する」ことですが、パッと英作できるようになっていたとしても、そこに至るまでのプロセスが違ってしまうと効果はありません。

覚えたものをそのまま出して速く言えるのではなく、

  • テーマとする文法ルールが1つあれば、単語を入れ替えて臨機応変に色んな文を作り出せる
  • その文の組み立てる作業を速くできるようにしていく
  • だから結果としてパッと英作できる

これを身につけなければいけません。

なので瞬間英作文のテキストの回答例の英文を暗記する必要もありません。
これは自分の「英語の組み立て方」が正しかったか、答え合せをするために使うものです。

なので、

それよりも、

これが大事です。

この意味で瞬間英作文は、暗記を目的とした「日常表現のフレーズ集」とはまったく役割が異なる練習になります。
» 参考:瞬間英作文とフレーズ暗記の違いとは?【第二言語習得の視点で解説】

統語処理ができる → いろんな英文を自分で作れるようになる

統語処理のスキルを磨いておくと、今まで口にしたことがない文でも自分で1から作りやすくなって行きます。

「S → V → 渡す相手 → 渡すもの」というルールとその英語を組み立てる手順がしっかり自動化していれば、あとはその場面に応じて単語を変え、

I passed her the bottle of wine. や
She lend me her nice bicycle.

と英文を自分で生み出せるようになってきます。

学者のSkehan (1998)は、この「ルールの適用をベースとした処理システム」を頭の中に作っておくことで、その場の状況に合わせて自分の伝えたい意味を「精密に」表現することができるとし、第二言語学習者にとって身につけるべき重要な側面であるとしています。

このように1から文を組み立てていく仕組みを、Rule-based systemと言います(p.88)。

瞬間英作文はこの仕組みを頭の中に備えるための練習の1つと考えられます。

3 では、どのように練習を進めていけばいいか?

最後はこれについて書いていきます。

ここまでの瞬間英作文の議論を簡単にまとめると、

不自然な例文のパターン3つ

  • 基本全ての文で文法的には正しい
  • ただし、ネイティブが実際に言わない言い回し(パターン1)
  • 「コミュニケーションの状況」に合わない内容や言い方(パターン2)
  • 「情報の順番」がおかしい(パターン3)

その一方で、

瞬間英作のメリット

  • 統語(文法)処理の自動化
  • それによって、いろんな文を1から自分で生み出せるようになる

です。

メリット・デメリット両方ありますが、それを踏まえ今後どのように学習していけばいいか、主な提案としては以下です。

学習を効果的に進めるポイント

  • ポイントその1:テキストはネイティブチェックされたもの、コーパスの例文のものなどを使う
  • ポイントその2:普段からインプットを絶やさない

ポイントその1:テキストはネイティブチェックされたものなどを使う

最近はこのようなテキストも出回っていると思います。

このようなテキストは基本的に「文法的には正しいけど、ネイティブはこんな言い方しない、不自然」のような例文は入ってないはずです。

またコーパス(実際に話されたり書かれている言葉を大量に集め検索や分析できるようになったデータベース)から例文を抽出したものなどもあります。

そのようなテキストも実際のネイティブの使用に則した例文が載っているはずなので、良いと思います。

これらは「不自然な例文のパターン1」への対策ですね。

また「日常での会話」をテーマにデザインされたテキストもあります。このようなものも選ぶと、比較的「どんなコミュニケーションの状況で使うのか」わかりやすい例文が載っていると思います。

「不自然な例文のパターン2」を回避するために有効と思われます。

とはいえ、あまり細かく気にし過ぎなくて良い

いろんなことを気にしすぎるとテキストを選ぶのが大変です。また練習中も「この文は不自然では?」と気になってはかどらないということも起きかねません。

前半で書いたように、そもそも瞬間英作文は「互いに関係のない短文の羅列」を英作していくデザインになっています。

なので「いつ、どこで、誰との会話なのかという状況」を把握したり、自分の英作する文が「その前のどんな文に続く発話なのか」などを完全に理解することはできません。

結果、「不自然な例文のパターン2・3」のような例文の存在克服することは限界があります。

そして、そもそも短文の羅列である瞬間英作文において、②の社会言語学能力や③の談話能力まで完璧に鍛え上げることはできません。

逆に言うと、この練習に取り組んだ「だけ」ですぐ、問題なくコミュニケーションができるようになる、ということにはなりません。

ただそれはそれとして、瞬間英作文のメリットである「統語処理の自動化」を進め、①の文法的能力をある程度鍛え上げ、サッとこの手の短文の羅列の英作練習は切り上げてしまった方が良いと思います。

瞬間英作文は、この辺りを鍛えるのに非常に効率的なやり方です。
迷わず練習を進めていきましょう。

なお、瞬間英作文のメリットを最大限活かす具体的な練習方法については過去にまとめています。以下を参考ください。

瞬間英作文の手順について↓

日本語を介さず「イメージ」を使いながら瞬間英作文する方法・コツについて↓

ポイントその2:普段からインプットを絶やさない

正直、地味にこれが一番大事と思っています。

瞬間英作文と合わせて、普段からリスニングやリーディングといったインプット系の練習(音読など)を継続して行いましょう。

理由は、ネイティブが普段無意識に行なっているであろう「この文は自然 or 不自然という予測」ができるようになるからです。

学者の白井(2012, p.43)は、この力を

予測文法(expectancy grammar)

として著書の中で紹介しています。

例えば、我々が日本語で、

昨日、ニューヨークから成田までANAで(   )。

と聞いたら、「飛んだ」や「来た」などの動詞がすぐ思い浮かび、「死んだ」などは思い浮かびません。

英語でも、

I gave him ( ).

と聞いたら、ある程度どんな可能性のものが(  )に入るか予測ができるようになってきます。

逆に、「不自然な例文パターン1」で取り上げた

私はあなたと結婚したい。
→ I wish to be wedded to you.

をネイティブが不自然だと判断できるのも、予測文法力の力です。

そしてなぜこのような予測力が働くかというと、普段インプットに大量に触れる中で「ある表現は出現頻度が高く、ある表現は頻度が非常に低い」ということが頭に蓄積されているからです。

インプット練習はある程度まとまった文量の素材を使う

上記のような予測文法力を身につけるためには、瞬間英作文のような1文単位ののものより、きちんと文脈のある複数の文からなる英語素材を使いましょう。

そのような大量のインプットに触れることで予測文法力が少しずつ蓄積されていき、またある文脈の中でどのように言葉が使われているかということにも触れることができるので、後々の

・あるコミュニケーションの状況に応じて、適切に会話をする力(②社会言語能力)
・一文ではなく、複数の文を効果的につないでコミュニケーションをとる力(③談話能力)

などにもつながっていくのではと思います。

そのためにも関連のない短文の羅列ではなく、ちゃんと文脈があるもの、それによりコミュニケーションの状況がわかるもの、文と文が複数にまたがってあるメッセージのやりとりがなされているもの、を使うことが大切です。

例えば、2人のダイアローグが展開されているリスニングテキスト、もしくはTOEICの長文(Part 3,4,7あたり)のようなものでも、練習としては良いと思います。

素材は「難なく理解できるもの」を選ぶ

上記のような「予測文法力」を身につけるには、意味がまったく理解できないものを聞いたり読んだりしても不可能です(白井, 2012)。

理由は、記事の前半でも少し触れた、

  • ある状況の中で、どんな目的を達成するために(機能)
  • どんな意味内容のことを(意味)
  • どんな英語のことば遣いや表現の仕方で(言語形式)で表現されるか

という、形式・意味・機能の結びつき(form-meaning-function connection)の学習ができないからです。

「理解する」という行為は、意識的にせよ無意識にせよこのような行為です。

普段から「理解できるインプット」に大量に触れる中でこの経験をしっかり積み、少しでも自然な英語表現を自分で判断できるよう学習をしていきましょう。

まとめ


以上今日は瞬間英作文の不自然な例文にまつわる内容でした。

メリット、デメリットのポイントを深く理解し、少しでも自信を持って日々の学習を進めていただけるといいなと思っています。

おわり


ーーー
【参考文献】
Canale, M. 1983. From communicative competence to communicative language pedagogy. In J.C. Richards & R. W. Schmidt, eds. Language and communication. New York: Longman.

Skehan, P. 1998. A cognitive approach to language learning. Oxford: Oxford University Press.

和泉伸一. 2016. 『フォーカス・オン・フォームとCLILの英語授業: 生徒の主体性を伸ばす授業の提案』 東京:アルク.

白井恭弘. 2012. 『英語教師のための第二言語習得論入門』 東京:大修館書店.