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本当に音読はリスニングに効果あるの? ←整理して理解が大切。

音読

Illustration by Natasha Remarchuk from Icons8

「『音読がリスニング力の向上に効果的』って聞いたけど、実際どうなの?」
「そうだとしたら、なんで効果があるの?」
「よくわからないまま続けるのも辛いし、ちゃんと理解したい。」

今回はこんな疑問に答えます。

音読はネイティヴの発音を聞くわけでもなく、このような疑問が湧いてくるのはある種当然だと思います。

このような疑問ぶつかりなかなか前に進めない方向けに、今日はしっかり音読とリスニングの関係を整理して行きましょう。また後半は、リスニング力アップのための方法についても解説したいと思います。

  • 本当に音読はリスニングに効果あるの?
  • 音読を使ってリスニング力を向上させる方法

なお過去に私が大学院でTESOL(英語教授法)を学んでいました。今回も主観により過ぎないよう、人の認知過程にも着目しつつ書いて行きたいと思います。

それでは行きましょう。

本当に音読はリスニングに効果あるの?

まずは結論です。

音読は、リスニングに確実に良い効果があります。ですが、音読「だけ」では十分な効果を期待できない場合が多いです。

上記の通りです。
また理由としては以下の通りです。

  • リスニングスキル → 「音の聴き取り」+「内容の理解」から成る
  • 音読 → 主に「内容の理解」だけに働きかける練習法だから

このように、音読はリスニングの全体をカバーする練習ではないため、そこを考慮しながら日々の学習を組み立てていくことが大切です。

詳しく見て行きましょう。

リスニングってどんなスキル?

言語を使うという行為は、一度に多くのことをこなさないといけない “Combinational skill” (組み合わせのスキル)と言われています。(Johnson, 1996)

それはリスニングについても同じです。
「リスニングスキル」について考えるなら、まずはリスニングがどんなスキルから成り立っているかに着目し、「分けて考える」ことが大切です。

ということで、リスニングスキルを/分/け/ま/す。

応用言語学者である門田氏の著書(2015)によると、リスニング時の認知過程(脳内での情報処理)は以下のように表されます。

このように、リスニングは大きく「知覚」と「理解」の2つの要素から成り立っています。
また、それぞれについては、以下の通りです。

  • 音声知覚 → 耳にした音がどのようなものかを判定し認識すること。
  • 理解 → 聞こえた音から、単語の認識 → 文構造の認識 → 文意の把握 → 文章全体での内容把握と行い、相手の言っているメッセージを掴んでいくこと。

リスニングを成功させるには、このような処理を同時的に取り組み、全体として上手く回していく必要があります。それによって、効果的に相手が言いたいメッセージを掴んでいくことが可能になります。

音読の守備範囲は「理解」プロセス

  • リスニング → 音声ベース
  • 音読 → 文字ベース(つまりリーディング)

こういった違いはあるものの、リスニングもリーディングも、基本的に「理解」のプロセスについては同じです。

音読で、きちんと「内容を理解しよう」と取り組んだ場合は、

▽ 語彙処理:目にした各単語の意味を想起
▽ 文法処理:単語の並びから文構造パターンを解析
▽ 意味処理:語彙、文法の情報から1文・節での意味を想起
▽ 1文1文の文意を頭の中で繋いで行き、文章全体での要点をつかむ
etc.

といった、リスニングでも同じく必要となる一連の処理に取り組むことになります。結果、各処理がスピーディーかつ無意識的にこなせるよう「自動化」していきます。

共通するスキルは転移しやすい。

少し話は変わりますが、ギターが上手い人はベースの演奏もうまい(もしくは、練習したらすぐ上手くなる)場合が多いと思います。

これは、ギターとベースが違う楽器とはいえ、指の弦の押さえ方やピックの弾き方など、「両者に共通するスキル」が多くあるからです。結果、ギター→ベースへとスキルを流用しやすいのです。

あるスキルとあるスキルで取り組む認知処理が似ていたり共通している場合、このようなスキルの「転移」が起こりやすくなります。このような考え方を “transfer-appropriate processing” (転移適切処理)と言います(DeKeyser, 2007, p.6)

音読とリスニングの関係についても同じです。

「理解」プロセスについてはどちらも類似した処理を行うため、しっかり音読で鍛えておけば、後々のリスニングにもそのスキルをそのまま活かすことが可能です。

ただやはり、音読で音の聴き取り力を鍛えるのはチャレンジング

反対に、音読でカバーしずらいのはやはり「音声知覚」の方です。
ある意味音読でも、自分が声を発しておりそれを聞けば音を知覚していることにはなります。

ただ、それでは音声知覚の向上が見込めない場合が多いです。理由は、自分の覚えている発音が、常に正しいものである保証はないからです。

具体例を見てみましょう。

具体例①:“label”という単語の発音

例えばこれを、そのままカタカナ読みで「ラベル」のように、誤って覚えてしまっている場合がそうです。実際の発音は /leɪbəl/ で「レィボゥ」のような発音となります。

音読では、基本自分の覚えている発音で練習していくため、このような「自身の覚えている発音」と「実際の正しい発音」のGAPに気づく機会がほとんどありません。なかなか自分の頭の中の「ラベル」という音声情報を、正しいものに修正するといったことは起きにくいでしょう。

結果、リスニングで /leɪbəl/ という音を聞いても、すぐに label のことだとは認識できないといったことが起きてしまいます。

具体例②:音声変化

またリエゾンなどいわゆる「音声変化」についてもそうです。これは一続きの単語を流暢に発音していくことで起こります。

<例1> I’ve already:
 アイヴ オールレディ → アイヴォーレディ
<例2> fail into:
 フェイル イントゥ → フェイリントゥ

例えばこういった音の変化が起こります。

先ほどの “label” と同じく、左側の認識で音読を続けてしまっている場合は、右側のような実際の英語の発音を新たに認識し、身につけていくチャンスがなかなか持てません。

結果、いざリスニングで右のような発音を耳にしても、“I’ve already” や “fail into” のこととすぐ認識することは困難でしょう。

結論:音読は「理解」プロセスに効果あり。「音声知覚」は別途対策が必要。

  • 理解 → 音読でもリスニングでも共通するスキル。音読を「内容理解」しながら取り組み鍛えた場合は、そのスキルがリスニングのパフォーマンスにも転移する可能性が高い。
  • 音声知覚 → 自分が知っている音声知識の範囲内での練習であり、「自分独自の発音」と「実際の正しい発音」の違いに気づき、GAPを埋めることが難しい。そのため、リスニングでの音を聴き取るスキルには繋がりにくい。

上記の通りです。

リスニングの向上を考える際は、こういったことを理解し学習を組み立てていくことが大切です。

音読を使ってリスニング力を向上させる方法

ではこういった音読の特徴を踏まえ、どのように練習を進め、リスニング力を上げていけばいいのか考えて行きましょう。

引き続き、「理解」と「音声知覚」の2つに分けて解説して行きます。

音読で理解プロセスの強化

これまで見てきたように、ここはしっかり音読の守備範囲です。

ただしっかり効果を得るには、正しい方法で練習を進めていくことが大事です。
とりわけ、声を出すだけではなく「内容を理解しながら読む」ということが重要です。

それを目的に読み進めようとすることで、先ほども触れた、

▽ 語彙処理
▽ 文法処理
▽ 意味処理
▽ 1文1文の文意を頭の中で繋いで行き、文章全体での要点をつかむ
etc.

といった、「理解に必要な脳内処理」をぐるぐる回していくことになり、鍛えていくことができます。

声を出すだけではなく、目にした文字からしっかりと内容を掴むように練習していきましょう。

リスニングスピードを意識した練習

また、何と言ってもリスニングはどんどん情報が流れてくるため、読み返しのきくリーディングとは違い一度情報を逃してしまうとアウトです。

そのため、相手のしゃべるスピードに負けないよう、上記のような各処理を、無意識かつスピーディーにこなせるほど「自動化」させておくことが大切です。

また、「英語を聴いた順に間髪入れず直読直解する」という理解の仕方も、頭が勝手に反応してくれるくらいに十分慣れておく必要があります。

普段の音読からそういったポイントをしっかり意識して、身につけるようにして行きましょう。これについては、以下が参考になります。

音声知覚はどうする?

ここについては、音読とは別途違う方法でテコ入れしていく必要があります。

例えば、CDを流しながらそれに被せて音読する「オーバーラッピング」という練習法があります。もしCDの音を聴くことにもしっかり集中し、英語のリズムや音声変化までしっかり真似しながら取り組めると、徐々に英語の音の知識を身つけていくことにつながります。

また、「シャドーイング」は基本的にこの音を聴くスキルにフォーカスした練習であり、「音声知覚の自動化」を促すのにとても効果的な練習法です(門田, 2007, 2012, 2015)。

音声知覚力アップの3つのポイント

  • ネイティブの音源をしっかりと聴き「耳を使う」こと
  • それを自分の口でも真似できるようにすること
  • それにより、ネイティブと自分の頭の中の音のGAPを埋めていくこと

上記がとても重要です。

音読以外にも適宜こういった練習を入れ、音の聴き取り能力についても強化して行くようにしましょう。

なお、シャドーイングの効果については、過去に詳しく記事にまとめていますので合わせて参考ください。

まとめ

  • 音読はリスニングの何に効くのか? → 内容理解
  • リスニング力の向上 → 「音読」+別途「音の聴き取りのための練習」が必要

という内容でした。

少しでもご不明な点がスッキリ解決されていたら嬉しいです。

なお、音読について、練習する際の気をつける点や具体的なテクニックまで知りたい方は以下も参考ください。
» 参考:英語音読の総まとめ【基礎知識〜実践テクニックまで網羅】

おわり


ーーー
【参考文献】
DeKeyser, R. M. 2007. Introduction: Situating the concept of practice. In R. M. DeKeyser, ed. Practice in a second language: perspectives from applied linguistics and cognitive psychology. Cambridge: Cambridge University Press, pp.1-18.

Johnson, K. 1996. Language teaching and skill learning. Oxford: Blackwell.

門田修平. 2007. 『シャドーイングと音読の科学』 東京:コスモピア.

門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.