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スラッシュリーディングの効果とは?【英文を効率的にさばく!】

スラッシュリーディング

「スラッシュリーディングって何?どんな効果があるの?」
「英文に / 入れて、一体何の意味があるの?」

今回はこんな疑問に答えます。

スラッシュリーディングは、よく話題にあがる英語学習法です。
スラッシュリーディングに取り組む意味とは、一体何なのでしょうか。

今回はこの練習法がどんなものか、どんな効果が得られるのかを、しっかりと理解して行きましょう。

本記事の内容

  • スラッシュリーディングとは?
  • スラッシュリーディングの効果とは?

なお、過去に私が大学院で英語教授法(TESOL)を学んでおりました。今回も主観に寄りすぎないよう、認知心理学や応用言語学からの文献も参考にしつつ書いて行きたいと思います。

それでは行きましょう。

スラッシュリーディングとは?


まずスラッシュリーディングとは何か、まとめると以下のようになります。

英文を「意味のかたまり」ごとに/で分け、そのかたまりごとに英文を理解していく方法。または、それを意識的に身につけるための練習法。

大きな特徴としては、「1単語ずつ」ではなく「数語から成る意味のグループ(主に句単位)ごと」に処理しながら理解して行くという点です。

なお、この意味のまとまりのことを「センスグループ」や「チャンク」などと言ったりします。そこからスラッシュリーディングはチャンクリーディングとも呼ばれます。

具体例

KOBE CHIBEN is the team / which Ichiro started / with his friends / in Japan / after retiring from MLB. //
(神戸智辯はチームです / イチローが始めた / 彼の友達と / 日本で / メジャーリーグを引退した後に。//)

上記のように、/から次の/までを1つの意味のまとまりとして、左→右に順次意味を理解して行きます。

ではこのような読み方に、一体どんなメリットがあるのでしょうか?

スラッシュリーディングの効果とは?


スラッシュリーディングにしっかりと慣れることで、

流暢な理解スキル(Comprehension skill)

を身につけることができます。
(リーディングにおいては読解スピード、リスニングについては、別途「音声知覚スキル」も鍛えることで、スピードに遅れず理解していける能力に繋がります。以下では、リーディングを例に解説して行きます。)

特に、長文を読んでいて、

・1文ずつ読むのに時間がかかる。
・何とか意味はとったけど、すぐ内容を忘れてしまう。
・頭にかかるストレスも多くて、疲れてヘトヘトになる。
etc.

といった悩みを解決するきっかけになります。

では、意味のかたまり毎に理解して行くことで、なぜこのような流暢な理解力に繋がるのでしょうか。

理由は大きく2つです。

  • ①:読解中の情報処理を効率的に行えるため
  • ②:直読直解が身につくため

順番に詳しく見て行きましょう。

①:読解中の情報処理を効率的に行える

英文を意味のまとまりごとに理解していくことで、脳が一度に扱わないといけない情報の個数を抑えた状態で、効率的に理解しつつ読み進めていくことができます。

そもそも、我々が文を理解するときに脳で情報を処理する部分(ワーキングメモリ)は、その容量・キャパシティが決まっています。

その一方でリーディングとは、すでに読んだ内容を頭に「保持」しつつ、次に入ってくる情報もどんどん「処理」していかないといけないという、認知負荷の高い行為です(門田, 2007)。

読んだものを覚えて、次に入ってくる内容も理解してと、かなり脳としては忙しいのです。

そのため、いかにワーキングメモリをパンクさせず効率よく読み進めて行けるかは、読解のパフォーマンスを落とさないために非常に重要になってきます。

ではどのように情報処理の効率性が上がるのか、具体例で見てみましょう。

まずは英語以外の例で:おつかい編

外出しているときに、家から電話です。
ご飯の材料のおつかいを頼みたいとのこと。

以下のように、買ってきてほしい材料を伝えられたとします。

  • トマト
  • レタス
  • キュウリ
  • ブロッコリー
  • タマネギ
  • ニンジン
  • ジャガイモ
  • 牛肉
  • ドレッシング
  • カレールー
  • 以上10品目です。

    さて、何とか覚えられるかもしれませんが、この10個の羅列を、そのまま記憶するのは少し大変だと思います。

    ですが、同じ情報でもどのように知覚するかで、それを扱うときの効率性が変わります。

    以下のように、整理しながら覚えてみるとどうでしょうか。

    • 【サラダ用】→ トマト、レタス、キュウリ、ブロッコリー
    • 【カレー用】→ タマネギ、ニンジン、ジャガイモ、牛肉
    • 【味付け用】→ ドレッシング、カレールー

    おそらくこちらの方が、買うべきものを情報としてしっかりと把握し、覚えやすい感覚も持てるのではないでしょうか。

    これはもともとバラバラだった10個の品目が、それぞれ【サラダ】【カレー】【味付け】とグループ化されることで、情報の個数が3つに集約され、頭の中で扱いやすくなるからです。

    英語の例

    次は英文の例です。
    先ほどの、

    KOBE CHIBEN is the team which Ichiro started with his friends in Japan after retiring from MLB.

    で見てみましょう。

    特に初学者であるほど、各単語の認識や文構造の認識に時間がかかってしまい、1語ずつ読み進めてしまうということになりがちです。

    例えば以下のような読み方です。

    KOBE / CHIBEN / is / the / team / which / Ichiro / started / with / his / friends/ in / Japan / after / retiring / from / MLB. /

    これは、さっきの「レタス、キュウリ、ブロッコリー、…」と1品目ずつバラバラに情報を頭に入れていってるのと同じ状態ですね。

    ここまでバラバラだと、1から全部組み上げて文全体の意味を見出すのは大変です。

    では次のように各単語をまとめてみたらどうでしょうか?

    KOBE CHIBEN / is / the team / which / Ichiro started / with / his friends / in Japan / after retiring / from MLB. /

    少しまとめてくれているので、さっきよりは少し理解しやすくなったと思います。
    でもまだ1単語だけの部分もあるので、すこし理解しずらいですね。

    さらに以下です。

    KOBE CHIBEN is the team / which Ichiro started /
    with his friends / in Japan / after retiring from MLB./
    ( 神戸智辯はチームです / イチローが始めた /
    彼の友達と / 日本で / メジャーリーグを引退した後に。/ )

    これならだいぶスッキリしました!
    5個しかパーツがないので、文全体の意味もつかんで行きやすいと思います。

    1単語ずつ読み進めるのは負荷が高くて非効率

    上記の例ように、単語をバラバラに捉えてしまうと、各単語どうしの関係がつかめずスムーズに意味を見出していくことができません。

    また、脳内で各単語を1単語ずつキープするようなかたちになり、保持しておかないといけない情報の個数が多くなってしまいます。

    書かれた英語を言葉のまま脳に書き込んでいくことはワーキングメモリの容量をいつも[中略]一杯に満たしながら作業しているようなものである。これでは常にアクセル全開で運転しているようなもので、まったく余裕のない、すぐに疲れる読み方である。

    (湯舟, 2011, p.8)

    スラッシュリーディングで、情報処理の省エネ化!

    一方、それとは違いスラッシュリーディングでは、

    • 単語1語ずつではなく、数語からなる意味のかたまりで捉える( ←チャンキングと言います)
    • それによって、ワーキングメモリの中で一度に扱わないといけない情報の個数を減らし、意味処理をしやすくする

    ということを意識的に取り組み、身につけていきます。

    このように、ある程度の情報を1つにまとめて効率的に扱って行くということが大事です。

    英文を意味のかたまり毎に扱っていくことは、読解中、ワーキングメモリに入ってくる情報量や脳にかかる負荷を抑えつつ、スムーズに意味処理をしていくために欠かせないポイントです。

    ②:直読直解が身につく

    スラッシュリーディングが、流暢な理解スキルに効果がある理由の2つ目です。

    スラッシュリーディングは、日本語と英語の「語順の違い」から解放され、返り読みをせず英語の語順でそのまま理解する「直読直解」を身につけるのに役立ちます。(塩川, 2008; 湯舟, 2011)

    これは、英語を「1文丸ごと」ではなく「意味のかたまり」ごとに理解しようとすることで、日⇄英の語順の違いの影響を受けにくくなるからです。

    具体例を見てみましょう。

    日本語の語順に影響される例

    「KOBE CHIBEN is…」の例文で見てみましょう。

    もし和訳しつつ日本語的な語順でこの文を捉えていってしまうと、以下のように①→②→ … →⑦の順で理解していくかたちになります。

    このような返り読みは、英文を「一文丸ごと」で捉え、自然な日本語になるように和訳できるところから理解しようとすることで起きてしまう現象です。

    特にこれまで、文法に沿って日本語に訳して理解するという訳読法が中心だった人に多く起こります。

    これでは読解中、文意ととるために目線が右往左往してしまい、本来の英語の流れに逆らう理解の仕方になってしまいます。

    結果、意味処理も煩雑になり、貴重なワーキングメモリの容量を消費してしまう疲れる読み方になってしまいます。

    そして右往左往している分、時間もかかります。

    意味のかたまり毎に順番に意味処理

    一方、スラッシュリーディングで身につける意味処理の仕方を見てみましょう。

    そもそも英語は、主語+述語という結論部分が先に述べられ、その後ろに補足的な説明がつけ足されて右へ右へ伸びていくことばです(大西&マクベイ, 2017)。

    このルールに準じて、意味のかたまり毎に左→右へ理解していくと以下のようになります。

    このように、「一文」ではなく「意味のまとまり」を基本単位に英文を捉えて行くことで、左→右にストレートに意味処理をしていくことができます。

    あくまでも、英語を【目にした順番】で、

    KOBE CHIBEN is the team /
    (神戸智辯はチームだ)
    ▽ which Ichiro started /
    (イチローが始めた)
    ▽ with his friends /
    (彼の友達と)
    ▽ in Japan /
    (日本で)
    ▽ after retiring from MLB. /
    (メジャーリーグを引退した後に。)
    理解終了!

    と読み進めていくことができます。

    こちらの方が、さっきの1文全体を返り読みしながら読む方法よりも、全然効率的です。

    このようにスラッシュリーディングは、“返り読みを防ぐための矯正装置” として効果があります(塩川, 2008, p.3)。

    このような意味処理の仕方に慣れると、英文をストレートに左→右に1回通読するだけで理解でき、脳内の処理としても非常にシンプルになります。結果、リーディング中、余裕も持ちつつ読解を進められるようになって行きます。

    まとめ

    スラッシュリーディングの効果まとめ

    • 1単語ずつではなく「数語からなる意味のかたまり」ごとに理解していく方法
    • 流暢な英語の理解スキル(Comprehension skill)に効果がある
    • 理由①:一度に扱う情報の個数が減る → 意味処理が楽に
    • 理由②:返り読みせず左から右にストレートに理解できるように
    • 結果、ワーキングメモリを圧迫せず、スムーズに理解していける

    上記の通りです。

    このようにスラッシュリーディングは、英文理解における「情報のさばき方」を効率化するための学習法です。

    この点を押さえ、自分の英語学習のニーズに応じて取り入れていくようにしましょう。

    おわり


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    【参考文献】
    大西泰斗, ポール・マクベイ. 2017. 『総合英語FACTBOOKこれからの英文法』東京:桐原書店.

    門田修平. 2007. 『シャドーイングと音読の科学』 東京:コスモピア.

    塩川春彦. 2008. チャンクを意識したリーディング指導. 『ユニコーンジャーナル』, 68, pp. 2-6.

    湯舟英一. 2011. 英文速読におけるチャンクとワーキングメモリの役割.『Dialogue : TALK紀要』9, pp.1-20.