瞬間英作文ってどんな効果があるの?【練習がマッチする人も解説】
「どんな人がやるべきなの?」
「あらためてその効果やメリットを理解したい。」
今回はこのような疑問に答えます。
本記事の内容
- 瞬間英作文の効果とは?
- この練習法がマッチする人は?
では行きましょう。
瞬間英作文ってどんな効果があるの?
瞬間英作文は、スピーキングなどアウトプットスキルの基礎を養うのに良い練習法の1つです。
特に初心者のうちは、スピーキングを効果的に練習すること自体が難しかったります。例えば、
「英会話レッスンはやってみたけど、会話を続けるだけでいっぱいいっぱい」
「思いついた単語を出しただけで終わってしまった…」
これではしゃべる力を効果的に鍛えられませんね。
特にこういう悩みをお持ちの方に、「スピーキングのファーストステップとして」良い練習法です。
ではどういう意味で効果的か?
いろいろとあるとは思いますが、瞬間英作文に期待される主な効果は、
- 効果その1:覚えた知識を「自分で使う」能力のアップ
- 効果その2:「文法的な処理」能力のアップ
の2つです。
効果その1:覚えた知識を「自分で使う」能力のアップ
これは英語のスムーズなアウトプットに大切なポイントです。
この状況を抜け出すのに必要となります。
どういうことか具体的に例で見てみましょう。
瞬間英作文にトライ!
いきなりですが話の導入としてまず以下の瞬間英作文にトライしてみてください。
日本語を見てできるだけ速く口頭で英作してみましょう。
トライできましたか?
回答例は以下です。
もう1つ、
回答例です↓
さらにもう1つ、
回答例です↓
最後にもう1つ、
回答例です↓
いかがだったでしょうか?
使われている単語と文法はだいたい中学校で習うものかと思います。それでも瞬時に英語に起こして言うのは、なかなか慣れてないと大変だったと思います。
この例でわかるのは、英語の知識は単に頭の中に持っている、つまり覚えているだけでは不十分ということです。
覚えた知識は使えるように練習を!
これがとても大事です。
もちろん、単語帳や文法テキストで頭に知識を入れることはとても大切です。
ただ、やはりそれだけではいざ会話のときにパッと使えるようになりません。
「知っていること」と「できること」とはまったく別物である [中略] なんとか「知っている」状態を「できる」状態に転化することが必要
(門田, 2012, p.20)
会話の中でとっさに対応できるできるようになるためには、上記のようなことが大切です。
なので、
英語の知識を覚える → 覚えたらどんどん使う!
上記のようなことを積極的にやっていきましょう。
「知っている」を「できる」にするには、「練習」が大切です。
これまで頑張って勉強したのにすぐパッと英語が口から出ないという人も、「練習」の部分が足りていなかった可能性があります。
この点瞬間英作文では、受験英語などの難解な英文とはちがい、中学校〜高校基礎レベルの単語や文法のみをつかった文に絞って練習をしていきます。
まったく新しい知識を覚える労力は最小限に、「すでに馴染みのある知識を使う」ことに取り組みやすいようになっています。
練習を通して「自動化」を進めましょう。
やはり会話について行くには、頭の中にある知識を瞬時に使いこなせることが大切です。
ストレスなく「楽に」かつ「スピーディー」に自分の知識にアクセスして使えるようになる状態をつくる必要があります。
はじめは、中学校レベルの文であっても、英作するのにぎこちなってしまうと思います。
ですが練習をしていくと徐々に楽に、スピーディーに英文を組み立てられるようになってきます。
これを「自動化」した状態と言いますが、自動化するとあまり意識をさかなくても自動的に頭が動いてパッと英文をつくれるようになってきます。
そして自動化を進めてくれるキーファクターは、
練習 (practice) の頻度
(村野井, 2006, p.95)
です。
瞬間英作文で、何度も繰り返し英作することで、この自動化に繋がっていきます。
効果その2:文法的な処理能力のアップ
瞬間英作文は、特に英語の語順など「文法的な処理力」を鍛える(自動化する)練習として有効です。
これは瞬間英作文が、純粋なスピーキングではないにしても「アウトプット要素の強い練習法」だからです。
例えば先ほどの、(1)〜(4)の瞬間英作文に取り組んだときに、少なからず文法面を意識して英語を組み立てたのではないでしょうか。
特に単語の並びや語順に関わるものを「統語(Syntax)」といいますが、さっきの
という文では、日本語の「彼女は私に犬の面倒をみるように頼んだ。」とはかなり語順が異なります。おそらく英語の、
という語順をかなり意識していないと、最後まで文を完成させるのは難しかったと思います。
また語順以外にも、
・askの後ろは目的格のmeを使う
・toの後ろは動詞の原形を続けてtake care of
など、いろいろな文法的側面についても意識する必要があったのではないかと思います。
このように瞬間英作文など「アウトプット系練習」の1つの重要な役割は
学習者を「文法的な処理」に取り組ませること
です。
このようなアウトプットの役割はSwain(1985, 1995)によって指摘されています。
アウトプットの場合は、自分が独力で文を完成させないといけません。そのため、細かい文法についても自分で意識していかないといけないということですね。
(ちなみに、リスニングのようなインプットの場合は、多少細かい文法など分からなくても、推測で補いつつコミュニケーションを続けていきやすいですが…)
このようにアウトプット色のある瞬間英作文では、ある意味でやや荒治療的に英語を作らせることで、学習者を細かな文法的な処理まで取り組ませていきます。
それを繰り返していけば、文法や統語処理が自動化していくと考えられます。
(なお、アウトプットは文法の処理以外にも、言語習得に役立つ面があります。詳しく知りたい方は、英語アウトプットの重要性【わかりやすく第二言語習得的に解説】もご覧ください。)
この練習法がマッチする人
そでは、瞬間英作文はどんな学習者のニーズにマッチする練習なのでしょうか。
ここまでの内容をひっくり返したような回答になりますが、
- 覚えた知識を自分で使いこなす力を鍛えたい場合(←効果その1より)
- 文法的な処理力を鍛えたい場合(←効果その2より)
- 上記よってアウトプット力を鍛えていきたい場合
上記のようなニーズに適した練習と言えると思います。
特に学校の授業で、単語や文法の知識を暗記することや、1文ずつ訳して読んでいくReading(訳読)が中心だったという方にとって、本格的なアウトプットへの足がかりとしては良い方法と思います。
また、社会人になって「あらためて知識を学び直したけど、その次のステップとして何をしよう」と悩んでいる方にも有効です。
いきなり英会話より、取り組みやすいです。
一人で気軽に練習に入っていけるのも、瞬間英作文の良いところです。
実戦の英会話では、自分が話すことだけに集中すれば良いだけではなく、相手の言ってる内容をリスニングしたり、同時にたくさんのことをやらなければいけません。余裕が無さすぎて、「文というよりは知ってる単語をつなげて話すのがやっと…」となりがちです。
これでは、せっかくの練習もなかなか効果的になりません。
ですが、瞬間英作文ではそういったプレッシャーが軽減されます。
ひとまず自分がしゃべることだけに集中でき、また各文法単元ごとに使うべき文法も絞られているので、取り組みやすくなります。
リアルな人との会話がハードルが高い人にとっては、気軽に入っていきやすいと思います。
ただし、中学校〜高校基礎レベルの文法知識がない場合は先にその復習を!
瞬間英作文の効果・メリットを最大限活かすにはこの点が不可欠です。
前半でも触れた通り、瞬間英作文は「自分の持ってる知識を使えるようにする」ための練習です。そのため「事前に知識を頭の中に入れておく」というのが前提になります。そもそも頭にない知識は使うことができませんので…
- 文法知識がない場合 → 文法テキストでまず知識を入れる
- 文法知識がある場合 → 瞬間英作文で瞬時に使えるように練習する
上記のように進めるようにしましょう。
文法が苦手だ… という方も、まずは中学レベル、行っても高校の基礎レベルまでで大丈夫です。
受験英語のような複雑で細かい文法知識まではひとまず必要はありませんので、まずは文法テキストなどでさっと復習し、知識を整理してから瞬間英作文に入っていきましょう。
瞬間英作文に向けた文法テキストを使った復習の具体的なやり方について、以下の記事内でも詳しく説明していますのでこちらもご覧ください。
» 瞬間英作文でスラスラ言うのが難しいときの原因と対処法
まとめ
以上、瞬間英作文の効果・メリットと、この練習がマッチする人でした。
英語学習は「その練習法の効果や意図」をしっかり理解しておくと取り組み方も上達スピードも変わってきますので、ぜひ今回の内容を参考にしてみてください。
また本記事では主に「どんな効果があるか」を解説しました。
「じゃあ効果的にするために具体的にどのように練習を進めたら良いか?」と気になる方もいらっしゃると思いますので、そのような方はこちらの記事も参考にしてみてください。↓
瞬間英作文の効果的なやり方とは?【大事な3つのポイントを解説】
瞬間英作文の効果的なやり方とは?本記事では、瞬間英作文をやる上で大事な3つのポイントについて解説します。どうやれば良いかわからない、練習の効果を最大化したい人は必見です。
おわり
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【参考文献】
門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
村野井仁. 2006.『第二言語習得研究から見た効果的な言語学習法・指導法』東京:大修館書店.
Swain, M. 1985. Communicative competence: some roles of comprehensible input and comprehensible output in its development. In S. Gass and C. Madden, eds. Input in second language acquisition. Rowley, MA: Newbury House, pp.235-253.
Swain, M. 1995. Three functions of output in second language learning. In G. Cook and G. Seidhofer, eds. Principles and practices in applied linguistics: studies in honor of H. G. Widdowson. Oxford: Oxford University Press, pp.125-144.