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瞬間英作文とフレーズ暗記の違いとは?

瞬間英作文

瞬間英作文とフレーズ暗記って何が違うの?
どっちの方が効果的なの?
どっちをやるべきか知りたい。

今日はこんな疑問に答えます。

2つの学習法は一見やっている行為は似ていますが、得られる効果は変わってきます。

それぞれの効果を理解し、学習法を選ぶ際の参考にしていただければと思います。

本記事の内容

  • 瞬間英作文とフレーズ暗記の違いとは?
  • 長期的に見て、どのように学習を進めていけばいいか

それでは行きましょう。

瞬間英作文とフレーズ暗記の違いとは?


まず結論としては、以下となります。

それぞれの練習で鍛えられる頭の筋肉が違います。どちらに重点を置いて鍛えるかで、コミュニケーション時、パフォーマンスに異なる影響があると考えられます。

どういうことか、以下に詳しく見ていきましょう。

なお、瞬間英作文とフレーズ暗記の特徴を整理するにあたり、以下の6つの項目を順に見て行きたいと思います。

  • ① その練習で取り組む行為
  • ② 使うもの
  • ③ 脳内の情報処理の側面における効果
  • ④ 会話時のパフォーマンスへの効果
  • ⑤ この練習の長所
  • ⑥ この練習の短所

ではまずフレーズ暗記からです。

「フレーズ暗記」の特徴

① 練習で取り組む行為

すでに出来上がった英文や、決まり文句などを暗記する学習法です。

基本的には、出てきた表現を「丸ごと、そのまま」覚えていきます。

<例>
Excuse me. = すみません。
Long time no see. = 久しぶり。
I’m gonna keep trying hard. = 引き続き頑張ります。
What have you got to say? = あなたの言い分は?
I’m not so sure about that. = それについてはどうでしょうかね..
etc.

上記のように、「フレーズ」と「その意味」を1:1で対応させて頭の中に記憶していくような行為です。

特に意識的に分析したりしない限り、フレーズ内部の構造や文法まではあまり注目することはありません。

単語の暗記と、やることとしては似ています。

② 使うもの

シチュエーション別でフレーズがまとめられているテキストが一般的かと思います。

<例>
・レストランで使えるフレーズ集
・電話口で使えるフレーズ集
・初めて会った人に対して使えるフレーズ集
・議論などの話し合いで使えるフレーズ集
etc.

③ 脳内の情報処理における効果

「丸ごとフレーズとして覚えたものを、丸ごとそのまま記憶から引き出して使う」という処理が速くなって行きます。

もし、

  • フレーズ集を使って、繰り返し、フレーズとその意味を対応させて記憶する
  • それを実際の会話やアウトプット練習の中で頻繁に使っていく

ということがうまく回れば、そのような処理が鍛えられるでしょう。

「一旦覚えたものを、丸々そのまま記憶から引き出して来て使う」とは例えば以下のようなことです。

誰か友達と会って「久しぶり!」と言いたい時に、過去に覚えた、

【Long time no see.】

というフレーズ(固まり)を丸々このまま記憶から取り出して来て、そのままを口からポンと出す、という処理です。

特に単語を入れ替えたり、文構造を変えたりはしていません。

久々に人に会う場面で何度もこのような処理をしていると、回を追ってパッと楽に、かつスピーディーに【Long time no see.】という表現を、1つのカタマリとして瞬時に思い出して使えるようになってきます。

このように、自分の知識を素早く使えるようになる過程を「自動化」と言います。

そして今回は特に、覚えた言語項目をそのままシンプルに記憶から引き出して来て使う、という一直線的な言語処理です。

④ 会話時のパフォーマンスへの効果

もし上記のようなタイプの自動化を十分に促すことができれば、特に会話時の「流暢性」「スピード」がアップします。

流暢にスピーキングを続けていくには、

  • 「どんな文法・文構造や、単語で表現するか」ということばかりに意識を割いていくよりも
  • 「次に何をいうか」という内容やアイディアを先に先に考えていく

必要があります(Levelt, 1989)。
(↑なお、前者を「形式化」「文章化」「言語化」などといい、後者を「概念化」と言います。スピーキングの重要プロセスとなっており、詳しくは過去記事で。 » 参考:瞬間英作文で英語脳はつくれる?

フレーズ集で覚えた【Long time no see.】などの表現というのは、単語を入れ替えたり文構造を1から組み立てたりする必要がなく、そのままこの表現を思い出すだけでしゃべることができます。

そのため、スピーキング中も「形式化」にあまり意識を割かなくて良いので、流暢に発話をしやすくなります。

⑤ この練習の長所

この意味でフレーズ集は即効性があると言えます。

もし覚えたフレーズを使う場面が巡ってくれば、あとはそれを思い出しさえすれば、発話することができます。

1回の「思い出す」という情報処理だけで、ある程度まとまった量の発話をすることができます。

それにより、先ほどの「概念化」の方にリソースが割きやすくなり、流暢もキープしやすくなります。

⑥ この練習の短所

ただ問題点としては、そのフレーズに合致する場面でないと、せっかく覚えたフレーズも使えません。

例えば、先ほど例にあげた

What have you got to say?
あなたの言い分は?

というフレーズは、「目の前の相手に、その人の言い分を尋ねるとき」にしか使えません。

例えば、目の前の相手ではなく、「三人称であるshe(彼女)の言い分を訪ねたいとき」は、上記のフレーズを使うことができません。そのときは、

What has she got to say?

のように、have→has に変え、主語も you→she に変えないといけません。

以下はもう少し極端な例ですが、例えば、

Please make sure you arrive on time tomorrow.
(明日、時間通りちゃんと来てくださいね。)

と言うフレーズを丸暗記したとします。ですが、

・お互いに明日の待ち合わせの約束をしている状況
・遅れず時間通り来ることが重要な状況
・もしくは、こう言って念をしておかないと相手は遅れる可能性があるような人

などの条件がある程度揃ってないと、せっかく暗記したこのフレーズをそのまま使うことはできません。

このように、決まり文句のような定型表現はそのままで使える場面が限られています。つまり、「汎用性が低い」と言えます。

もしそのようなことも構わず無理やり覚えた表現を使おうとしてしまうと、その場面に合わない不正確な発話になってしまいます。

「瞬間英作文」の特徴

①’ 練習で取り組む行為

瞬間英作文は「各ページでテーマとなっている文法ルールに基づいて、1から英文を組み立てていく行為」です。

例えば、「使役動詞」の瞬間英作文では、

S → V → させる相手(O) → させる行為(C)

と言う文法・語順のルールを使うことが1つの重要なテーマです。

この型を念頭において、

・終わったらあなたに知らせますね。
  → I’ll let you know when I’m finished.
・彼にその用紙に書いてもらって。
  → Have him fill in the form.
・笑わせないで。
  → Don’t make me laugh.
etc.

などと英文を1から組み立てていきます。

なおこのとき、フレーズ暗記とは違い、完成した英文は覚える必要はありません。

あくまで「文法ルールをもとに、文を組み立てる過程」を練習します。

それにより「単語は適宜その状況に合わせて入れ替えつつ、いろんな使役の文を1から作れるようになる」というスキルを身につけることを目的にしています。

②’ 使うもの

なのでテキストは、

・This is…
・Wh- 疑問文
・to 不定詞
・関係代名詞
etc.

といった文法テーマごとにページ割され、それぞれに10個の英作をして行く、と言うものが一般的です。

フレーズ集とは違い「文法操作の学習」が主眼となっているので、完成した英文については、そのまま日常で決まり文句として使えるようなものは少なくなっているかと思います。

③’ 脳内の情報処理の側面における効果

このような練習を繰り返していると、「その英文ルールに関する手続き・手順が頭に定着し、自分で文を組み立てる」ことが、スピーディーにこなせるようになります。

④’ 会話時のパフォーマンスへの効果

状況に合わせて、自分で一から表現をつくることができるので、特に込み入った複雑な内容を伝えたい場合でも、それを正確に伝えやすくなります。

言い換えれば、自分で英文をカスタマイズしてしゃべることができます。

⑤’ この練習の長所

一番のメリットは、その状況に応じて表現をカスタマイズでき、臨機応変にしゃべることができることです。

また、単語やフレーズ暗記は何百〜何万個も大量に知識を覚える必要があるのに対し、文法ルールは、基本的なものであれば多くても30-40個くらいで大丈夫です。

このように瞬間英作文は、「コアとなる少ない知識で、いろんな表現をクリエイティブに生み出していけるようになる」という頭の使い方を鍛えていく学習法と言えます。

⑥’ この練習の短所

一方で、こういった頭の使い方というのは英文をつくるのに時間がかかり、流暢性が落ちます。

語順や時制など動詞の活用、OやCのそれぞれに入る単語を記憶から引き出してきたりと、発話時の処理の工数が多くなりますので、頭への負荷もかかりやすくなります。

会話の最中に、目の前の英文を組み立てること(形式化)だけに多くの脳のリソースが取られてしまうと、次に何を言うか(概念化)を先回りして考えることが難しくなります。

あまりにその度合いがひどいと、目の前の1文(もしくは文の1部)を全部言い終わった後でようやく、「じゃあ次は何を言おうかな?」と考え始めるるようなしゃべり方になってしまいます。

結果として、流暢性は落ちます。

フレーズ暗記で身につけた知識と比べ、複雑な意味でも正確に伝えられる力はつく反面、スピードは落ちてしまう頭の使い方と言えるでしょう。

「フレーズ暗唱 vs 瞬間英作文」まとめ

以上それぞれ見てきましたが、2つの違いをまとめると以下のようになります。

それぞれで、使う頭の筋肉(処理)も違えば、得られる効果も違います。

ではこのような違いを踏まえ、どのように学習を進めて行くのが良いでしょうか?

どのように学習を進めていけばいいか?【長期的な視点で書きます】

結論、どっちのタイプの処理力もバランス良く鍛えて、頭の中に発達させて行く必要があります。

ただ長い目で見て「英語の底力をつける」という意味では、一度、瞬間英作文のような練習を通して、

「ルールをベースに自分で文を組み立てる処理力」を意識的に鍛える

という手順を踏んでおいた方がいいと思います。

第二言語学習者にとっては、ここは自然には鍛えずらい部分の処理だからです。

学者のSkehan (1998)によると、臨界期(自然に言語を習得できる期間)を過ぎた第二言語学習者にとっては、意図的にこの文法ルールをベースとした英文の構造(← 統語構造と言います)まで注力するような学習をしない限り、脳が自然にはその処理に取り組むようにはならないとしています。

以下に具体例を挙げます。

第一言語と第二言語は習得プロセスが異なる → 文法は意識的に取り組んでおくことが吉

当然ですが、我々が日本語を、英語ネイティブが英語を自然に習得したように、第一言語習得の場合は生活をしているだけで必要な言語の仕組みが頭の中に自然にでき上がって行きます。

具体的には例えば、

day after day
 = 来る日も来る日も

という表現について見てみましょう。
(↑この例は、門田, 2012 を参照しています。)

英語ネイティブが初めてこの表現に出会ったときは、まず [day after day]というかたまりを丸々頭にストックして覚えます。

その後やがて、このかたまりの内部の構造が意識され、

X after X

のようにも頭の中にストックされるようになります。これにより、afterの前後に何か他の単語を入れて新しい表現を作ると言う体勢が整います。

そこまでできると、例えば以下の文は、タイガーウッズが子供の頃からひたすらゴルフの練習をしていたという内容のことを言っていますが、

All day long he hit ball after ball

と見ても、先ほどの「X after X」と言う形を応用し、内容をスムーズに理解できたり、自分で表現することができたりします。

他にもyear after yearなどの表現も、「X after X」という構造パターンを適用させて、必要に応じて自分でしゃべることができます。

そして使用頻度の高い表現(例:year by year など)については、これを再度一かたまりの表現として頭にストックし、思い出せばすぐに使えるような状態にしています。

ネイティブの場合、このような

  • ステップ1:はじめにかたまりで丸々覚える。
  • ステップ2:文構造を分析しより応用のきくパターンに変える。単語を入れ替えることで自由に表現できるようにしておく。
  • ステップ3:よく使うものについては再度かたまりとしてストックする。それをどんどん増やして行く。

といった言語習得のプロセスを、特に意識することなく自然にとって行くことができます(我々が日本語を身につける場合も同じです)。

ですが、第二言語学習者の場合はなかなかそうはなりません。

たとえday by dayというフレーズは学校で習って知っていても、ball after ballやそれ以外の ○○ after ○○ 系の表現は、あらためて新出表現として習わないと、理解できない、しゃべれないということが起きます。

「英語の文構造」は意識的に鍛えていくべきパート

なので、このような文構造(統語)的な操作は、自分で鍛えていかないといけません。

上記「X after X 」の例は副詞句でしたが、これが一文単位になっても同じです。

I’ll let you know when I’m finished.

もしこの文を、一つの決まり文句、フレーズとしてただ覚えてしまえばそこで終わりです。

ですが、さらに分析的にこの文の底に流れている文の構造や型を捉え、

S → V → させる相手(O) → させる行為(C)

のような構造パターンを意識しながらいろんな文を自分で作る練習を重ねると、その文構造的な処理ができるようになってきます。

そしてこれが、第二言語を習得する上では非常に重要なステップと言えます。

その意味で、瞬間英作文のような文法ルールに準じて文を組み立てて行く練習は、学習者を文構造に意識的に取り組ませ、鍛えて行くための1つの方法と言えます。

特にこれまで、英語のテストを「暗記でなんとか乗り切って来た!」という人や「あまり文法的な視点で英語を見てこなかった」という人は、ここに意識的に取り組んで行くと良いと思います。

急がば回れが大事です。

ただ、おそらくそのような方がここでよく感じてしまうのは、ある種の「遠回り感」ではないかと思います。

日常の会話シーンに直結したフレーズの暗記とは違い、文法ルールや文構造を念頭においた英語の練習は、「コミュニケーションに直結している」という感覚を持ちにくいと思います。

おそらく「ことばを使っている」というよりは、学校の勉強に近い感覚ではないかと思います。

また、会話の時も、文法ルールを使う手順がしっかり自動化していないと、どうしても一回スピードが落ちます。

「なかなか思うように言葉が出てこない」という壁にも当たるでしょう。

ですが、前半でも見たように、ここを乗り越えようと頑張るメリットは

「自分の言いたいことを、状況に応じて細かい意味まで正確に表現できる」

ということです。

「コミュニケーションをとりたい」「自分が思うことを、誤解されることなく相手にちゃんとわかってもらいたい」と思っている方にとって、必ず自己表現をする上での助けになるはずです。

英文法は基礎から1つずつ積み上げれば、決して複雑ではありません。

今まで暗記した覚がない表現でもその場で自分でクリエイティブに作っていける、それによって豊かに自己表現できる、これを目指しましょう。

じゃあフレーズや決まり文句は暗記しなくていいの?

よく使うフレーズや決まり文句を記憶にストックしていくことも、会話の「流暢さ」を保つ上で必須です。

先ほどのネイティブの言語習得プロセスの例で、

ステップ3:よく使うものについては再度かたまりでストックする(例:year after year)

のように、最終的には「すでに出来上がった固定表現」も身につけて行くことが重要です。

このような知識も増やして行くことで、流暢性をキープしやすくなり、しっかりコミュニケーションが取れるようになります。

会話の中で自然に覚えるフレーズ的表現もある

例えば簡単な例で言うと、私は

Let me check.

という使役動詞を使った表現は、固定句として定着しています。

友達と外出しているときに、スマホで場所やお店を調べる場面、また外国人に道を聞かれる場面も何度かあったので、そのときに使うフレーズとしてすっかり定着してしまいました。

もはや、SVOCの型に則って1から組み立ててはいません。

コミュニケーションの機会を通して、そのような表現のストックをどんどん増やして行くことも大事です。

フレーズ集からストックする場合は「これは自分よく使うだろうな!」を基準に

このような表現は、フレーズ集も参考にストックして行くといいと思います。

ただし、逆に実際に使わないようなフレーズは、忘れてしまう可能性が高くなります。

その意味で、フレーズ集を買って使いそうにないものも含めてまず片っ端から全部覚えてしまおう、というのは効率が悪くなる場合があります。

まず普段の日本語で自分はどんな言葉、内容をしゃべっていることが多いか分析しましょう。

そこで使っている表現は、英語においても使う頻度や必要性の高い表現と言えます。

このような表現は、自然と使う機会も多くなるので、Item automatization(項目の自動化)も促進され、頭に定着します。

このような自分の生活の中で使う場面も想像できて、使うタイミングがある程度明確な表現については、フレーズ集を参考に、辞書的に引きながら暗記して行く価値はあると思います。

まとめ


以上、

  • 瞬間英作文とフレーズ暗記は鍛える頭の筋肉(処理)が違う
  • 長期的に見ると、文構造を意識する練習は取り組んでおくことが必要
  • それに取り組みつつ、フレーズ・決まり文句のような固定表現も使えるものを少しずつ増やして行くのが吉

という内容でした。

おわり


ーーー
【参考文献】
Levelt, W. J. M. 1989. Speaking: from intention to articulation. Massachusetts: MIT Press.

Skehan, P. 1998. A cognitive approach to language learning. Oxford: Oxford University Press.

門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.