英語の音読でイメージが重要な理由【イメージするコツも解説】
「なんでそれが大事なの?」
「何かイメージするコツや方法も知りたい。」
今日はこんな疑問に答えます。
本記事の内容
- 英語の音読で「イメージする」ってどういうこと?
- 「イメージが重要」と言われる理由
- 英語の音読でイメージをするためのコツや方法
今回の「イメージ」というトピックは、音読で効果が上がるか、上がらないかを決める重要なポイントです。正しいやり方を理解し、しっかり言語習得を促せるよう学習して行きましょう。
それではいきましょう。
英語の音読で「イメージする」ってどういうこと?

音読はよく「イメージしながら読むことが大事」と言われます。
ただ、「イメージするって一体何よ?」と疑問に思う人もいると思うので、まずこれを確定させましょう。
結論から書くと、
イメージしながら読む = 1つ1つの文が表す『内容や事柄』をきちんとつかみながら読む
となります。
こうやって書くと、何かすごいことをやっているように思えますがそうではありません。普段、我々が日本語の文章を読むときも自然にやっていることです。
例えば今読んでいるこの記事も、内容を理解しながら読んでいると思います。目にする1文1文から、それが表す中身や事柄を理解しながら読んでいると思います。
それと同じことを、音読練習で、目の前の英文に対してもやる、ということです。
ではなぜ取り立てて、「音読はイメージすることが大事だ!」と言われるのでしょうか?
以下に詳しく見て行きましょう。
よく「イメージが重要」と言われる理由

これは大きく2つの理由があります。
理由1:音読中、ただ声を出すだけになってしまう場合が多いから。
1つ目の理由です。
文意も関係なく、内容を理解せず、ただ声を出して読んでいるだけだと、音読の効果は著しく下がってしまいます。
なぜ声を出すだけだと、効果が下がってしまうのか?
それは、このやり方だと、「言語を理解するために必要な処理」の、ほんの一部しか活用しないからです。
どういうことでしょうか。
リーディングに必要な処理スキル
音読練習は、リーディングスキルアップのために効果的な1つの練習法です。
(なお、「音声知覚」処理も合わせて鍛えた場合には、リスニング力にも貢献します。)
そのリーディングスキルは、以下のように①〜⑥の脳内の処理スキルによって支えられています。

また、各処理スキルの説明は以下の通りです。
- 目で見た単語を一旦頭の中で音声化し(←②)、単語の意味を認識する(←①)
- 文法的な分析も行い、節・1文単位でどんな意味になるのか認識する(←③④)
- 複数の文どうしの情報を整理しつつ、文章全体の要点をつかむ & 自分の持つ知識とも照らし、内容を解釈する(←⑤⑥)
(※より詳しくは、【仕組みから理解】理想の英語リーディング力とは?をご覧ください。)
リーディングに取り組むとき、脳はこのような情報処理を同時的に行い、理解をしています。
「声を出すだけの音読」で使う処理スキル
一方、ただ見た文字を音にする音読の場合。
基本的に、頭が取り組んでいる処理は②の音韻符号化のみとなります。
「意味」を全く考えてないので、①の単語認知も不完全といえ、個々の単語が何かを捉えていないので、当然、どんな文構造か、その1文がどんな意味なのか(③〜⑥)という処理もできていないと言えます。
以前、音読の目的・効果とは?【なぜ英語力アップに効くか理由も解説】という記事で、
ということを書きました。
ただしこれは、きちんと「目にした単語の意味や文法構造などを認識し、頭で処理したら」という条件つきです。
何も考えず、ただ見た文字を声に出しただけで、単語の意味が定着するということはありません。
また、各文の構造や、そこからわかる文意を無視して取り組んでも、リーディング中瞬時に文法構造を見抜ける、正しく文意を取れる、文章全体での意味が取れるようになる、ということもありません。
応用言語学者の門田(2012)は、これを以下のように表現しています。
私たちは、実際に「やったこと、処理したこと」を学習します。[中略] 「やっていないこと、処理していないこと」は、学習も記憶形成もできません。[中略]「処理なしに習得はありえない」
(pp.318-319)
「イメージする」ことで、いろんな言語処理を鍛える
そこで「イメージ」が重要になります。
1つ1つの文が表す内容や事柄をつかみながら読もうとすることで、当然、そこに使われている各単語の意味や、文法構造を頭で処理していかないといけません(主に①〜④の処理)。
また文章全体での内容も意識することで、⑤⑥の処理に取り組むことにもなります。
結果、処理したものは学習します。
「イメージしながら音読する」はそのための手段となります。
理由2:音読中、「日本語に訳す」になってしまうこことが多いから。
「音読はイメージが大事」と言われる理由の2つ目です。
音読中日本語に訳すことも、音読の効果が得られない要因になります。
いつも日本語に訳していると、いつまでも、
という手順から抜け出せません。
結果、リーディング中の理解スピードは落ちてしまいます。
また日本語に訳す過程で、どうしても自然な日本語にしようとする頭が働いてしまい、「返り読み」を誘発するきっかけにもなります。
これも理解スピードを下げる要因となります。
イメージを意識し、英文から直接文意をつかむ
ではなく、
とダイレクトにできることが大事です。
前者のように、いったん英語から日本語訳にしてしまうのは、英語と日本語の言語どうしがマッピングされている状況です。
(頭の中で、2つのものを関連づけて記憶することを「マッピング」と言います。)
そうではなく、
という、マッピングを構築しないといけません。
そのために普段から、「英語 → イメージ」と直接に捉える経験(頭の処理)を、意識的に積んでいくことが重要です。
音読中、日本語訳ではなくイメージで捉えようとすることは、このマッピングの強化につながります。
結果、リスニングやリーディングで、「英語→内容理解」と瞬時につなぐことができ、素早い理解につながります。
英語の音読でイメージをするためのコツや方法

音読でイメージすることが大事、ということがわかりました。
それでは、イメージしながら音読するにはどんな方法があるか、以下にそのヒントを解説します。
工夫できるポイントは大きく下記の5つです。
- 方法①:スクリプトの言語レベルの調整
- 方法②:題材は自分に身近な内容のものを選択
- 方法③:はじめは、声を出すだけでもOK
- 方法④:音読中、暗記に頼らない
- 方法⑤:普段から単語・文法の知識をイメージとしてストックする
順番に解説します。
方法①:スクリプトの単語・文法レベルの調整
音読で使うスクリプトは、辞書など何も調べなくても、90%以上は内容が問題なくわかるものを選びましょう。
わからない単語・文法が多発する文は、度々その問題の箇所に注意が取られ、内容の方にフォーカスしずらくなる(イメージしずらくなる)からです。
このようなものを選び、まずは内容やイメージを第一フォーカスに取り組みましょう。
とはいえ、不明な箇所は辞書・文法テキストなど調べてOK
数少ない不明な英語の箇所だけは調べるようにしましょう。
90%分かるスクリプトは、あらかじめしっかりと話の流れがつかめているはずです。
なので、問題の箇所を調べたときに「あっ、この文脈でこの意味を言いたいときは、この表現が使えるのか!」という関連づけ(マッピング)が脳の中で起きやすくなります。これは、言語習得において大変有効です。
そうやってストックされた知識は、単に単語帳や文法テキストから得たものとは違う、実際のコミュニケーションで使える「生きた知識」となります。
このように、
- 基本は内容や文意を理解する(イメージする)方に集中
- 何か問題があったときだけ言語的な側面に注意を向け、解決する
というアプローチが重要です。
このような言語学習の原理を、第二言語習得研究では、“Focus on form” と言います(Doughty, 2001)。
このバランスを大切に、そのために、90%は分かるスクリプトを選ぶようにしましょう。
そして自身のレベルが上がるにつれ、スクリプトのレベルも上げるようにしましょう。
方法②:題材は自分に身近な内容のものを選択
上記と関連しますが、スクリプトは身近なトピックのものを選ぶことで、内容がつかみやすくなり、イメージもしやすいです。
極端な例ですが、はじめは「現代社会における異文化交流の重要性」「資本主義論」といった、いかにもアカデミック的な、抽象度の高いトピックは避けた方が良いと思います。
それよりも、普段の実生活の中で目にしそうで、想像もしやすい身近なトピックから入るといいでしょう。
例えば、TOEIC Part 4では以下のような内容のスクリプトもあります。
・話している内容:テラス席のリノベが終わった。今後お客も増えるだろうから、もっと働きたいスタッフはシフトに書き込んで欲しい。
(公式TOEIC® Listening & Reading 問題集 3のPart4より)
このようなものは、設定や状況がイメージしやすく、さきほどの「〜論」のよなトピックと比べ、音読がしやすくなります。
なおTOEIC Part 4はリスニングです。リーディングよりもリスニングスクリプトの方が、使われる単語レベル、1文の長さや文構造の複雑さが緩和されるので、方法①の観点でも有効です。
ここではTOEICの例をあげましたが、これに限る必要もありません。
自分の生活や興味と関連が深い素材をまずは使い、イメージする感覚をつかんで行きましょう。
方法③:はじめは、声を出すだけでもOK。
一見今回の内容と矛盾するようですが、イメージするための『手段として』であれば、はじめはイメージを意識せず、声を出す方だけに集中するというのも有効です。
学習者の脳のキャパシティには限りがあるため、特に初めて取り組むスクリプトでは脳への負荷が高くなります。これにより、発音とイメージすることの両立が難しくなる場合があるためです。
特に発音へのリソースが取られやすいのが、
・またはappreciate vs. appropriate, consumer vs. customerといった、長めの単語。かつ似た単語が存在し、正確なスペルの認識が必要な単語
etc.
といった所です。
この辺りは、慣れてないうちは、スペルを凝視してしまい、発音する方に脳のリソースが取られると思います(もしくは無理にスピードをあげると、そこをスルーして不正確に単語を認識してしまうなど)。
先に音韻符号化を意識 → 慣れたらイメージを意識で音読
その場合は、一旦イメージは置いておいて、先に口に発音を慣らすようにしましょう。
それにより先に、音韻符号化を自動化します。
ある程度、無意識的に発音できるようになったら、脳にも余裕が生まれます。そうしたら、イメージも意識し、音読するようにしましょう。
方法④:音読中、暗記に頼らない
音読はくり返しの練習です。
くり返していると、どうしても内容を覚えてしまいます。
ですが、音読で文を読む最中に、前に覚えた内容をただ思い出す作業にならないように注意です。
あくまで鍛えたいのは、「目の前の英文を頭で処理し、それがどんな内容なのか理解する」ということだからです。
一旦暗記した内容をそのまま思い出す練習をしても、そのスキルは他の新しい英文を理解するときには使えません。
毎回はじめてその英文を読むつもりで
もちろん自然に記憶に残るのは、全く構いません。
ただ、イメージ化できるのは暗記した記憶からではなく、目の前の英文からでないといけません。
目の前の英文を無視して、思い出すことによって、文を読めてると思い進むのは避けましょう。
「毎回はじめてその英文を読む」つもりで取り組むと良いです。
はじめて目にするという前提なら、必ず目の前の英文を頭で処理して、そこから文意を取ろうとします。
それによりイメージも効果的に実践できるようになります。
方法⑤:普段から単語をイメージや概念としてストックする
普段の単語学習から、「イメージや感覚で捉える」ということをやっておくと、音読でも日本語を介さず読み進めやすくなって行きます。
単語はGoogleの画像検索が便利
例えば、以下です。

上記のような画像は、Googleで、画像検索するといろいろと出てきます。
調べたら、簡単に単語帳の日本語の意味のところにイラストで書いておきましょう。
復習するたびにそのイラストを目にするようにし、その単語をイメージと直接結びつけて覚えるようにしましょう。
まとめ

今回は、音読でイメージが重要な理由、イメージで音読するための方法でした。
せっかく時間を割くので、正しいやり方で、最大限効果が上がるように取り組みましょう。
なお、音読の練習密度を上げるため、本記事で紹介した以外の練習テクニックについても詳しく知りたい方は、以下も合わせて参考ください。
» 英語音読の総まとめ【基礎知識〜実践テクニックまで網羅】
おわり
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【参考文献】
Doughty, C. 2001. Cognitive underpinnings of focus on form. In P. Robinson, ed. Cognition and second language instruction. Cambridge: Cambridge University Press. pp.206-257.
Educational Testing Service. 2017. 『公式 TOEIC Listening & Reading 問題集 3』東京:国際ビジネスコミュニケーション協会
Grabe, W. 2009. Reading in a second language: moving from theory to practice. Cambridge: Cambridge University Press.
Grabe, W. and Stoller, F. L. 2011. Teaching and researching reading. 2nd ed. New York: Routledge.
門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.
門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.