シャドーイングで息が苦しいときの対処法【これで息を確保!】
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どうしたらいい?
何かいい対処法がないか知りたい。
今日はこのような疑問に答えます。
シャドーイングは、他の練習と比べてもかなりのハードタスクです。
遅れずついて行かないといけないため、自分のペースで間を置きながらしゃべることができません。
毎回必死になり「苦しい」状況だと、練習をやめる原因にもなってしまいます。
今回はこのような悩みが解消できるよう、苦しくなってしまう原因と対処法をまとめたいと思います。
本記事の内容
- シャドーイングで息が苦しくなる原因
- シャドーイングで息が苦しいときの対処法
ご自身の状況と照らしながら、ぜひ一度読んでみてください。
では行きましょう。
シャドーイングで息が苦しくなってしまう原因
以下のような状況になっているのではないかと思います。
- ①:そもそも発音時の「呼吸量」が少ない
- ②:ついて行くのが必死で、息継ぎしているヒマがない
順番に見て行きましょう。
原因①:そもそも発音時の「呼吸量」が少ない
英語では、発音により多くの呼吸を必要とします。
そのため、普段日本語をしゃべるときの呼吸のままシャドーイングをしていると、どうしても途中で息が足りなくなってしまいます。
このようなことが起きてしまうのは、日本語と英語の「呼吸法」に違いがあるからです。
日本語 vs 英語の呼吸法
- 日本語 → 胸式呼吸 or 浅い腹式呼吸(1回の吸う量は少なめ・小マメに何度も吸う)
- 英語 → 深い腹式呼吸(1回の吸う量は多め・回数は少ない)
上記の通りです(長澤(1986)を参考にまとめています)。
ちなみに、なぜ英語ではこんなに呼吸量が必要なのでしょうか?
1つは、英語は「強勢(ストレス)」によって文全体にアクセントをつけていく言語だから、ということが挙げられます(長澤, 1986)。
また、英語には「声帯を震わせずに発音する子音」が多く含まれます。そこに多くの呼気量が必要になるから、という理由もあります(李, 2017)。
このあたりは日本語とかなり根本的に異なる部分です。
この点を踏まえ、英語を口にする際は「しっかりと息を吸う」ことを意識的に行うことが重要です。
原因②:ついて行くのが必死で、息継ぎしているヒマがない
上記のように、英語にはある程度の呼気量が必須です。
にもかかわらず、シャドーイングでは、よく「息を吸うべきところをスルーしてしまう」という現象が起きてしまいます。
たとえば以下のような状況です。
このような場合は、「スピードに遅れてしまう原因が何か?」を特定し、それを潰していかなければいけません。
では、なぜスピードに遅れてしまうのでしょうか?
スピードについていけない理由(その1)
1つは、「そもそも時間のかかる発音で言ってしまっている」ということが可能性として挙げられます。
たとえば、at, ofといった前置詞、will, canといった助動詞などは、通常ネイティブはかなり「短く、弱く、ボソッと気持ち程度にしか」発音をしません。
もしこのような語も、他の動詞や形容詞などと同じように、「強く、たっぷり」と発音してしまっている場合には、必然的に遅れをとってしまうことになります。
ネイティブは、発話をするとき、「スムーズさ」や「英語らしいリズム」を維持するために、できるだけ効率的に口を動かしてしゃべろうとします。それによって、「1単語ずつ発音した時とは異なる発音(音声変化)」が度々生じます(小林, 2008)。
atやwillなどが、ほとんど聞こえないほど短く、弱く発音されてしまうのは、この音声変化の結果です。
他にも、どんな音声変化が生じるのかを知り、自分で口にできるよう練習していく必要があります。
スピードについていけない理由(その2)
またもう1つは「自動化」不足も挙げられます。
シャドーイングでは、
▽ それをもとに、どのように口の周りを動かして音を出すかを司令する
▽ 実際に発音する
といった、複数の脳内処理を、同時並行で、ストップせずにこなして行かないといけません。
ハイウェイで遅い車が1台いたら、後ろに何台もつっかえてしまうのと同じです。
シャドーイングでも、どこか1箇所で処理が詰まってしまうだけで、全体が大きな遅れをとってしまいます。
シャドーイング中、「えっと今の音は…」「こうやって口を動かして…」などと、意識的に考えているうちは十分に自動化しているとは言えません。
耳にした音に反射的に対応できるよう、仕上げていく必要があります。
シャドーイングで息が苦しいときの対処法
では以上を踏まえ、次は対処法についてです。
以下の3つを試してみましょう。
- ①:息継ぎポイントを確認、そこでしっかり息を吸うようにする
- ②:効率的な発音(音声変化)を身につける
- ③:ある程度は回数を繰り返す
対処法①:息継ぎポイントを確認、そこでしっかり息を吸うようにする
具体的には、以下のように進めると良いと思います。
- ステップ(1):事前にモデル音源を聴き、息継ぎポイントをチェック(英文スクリプトに印を打っておく)
- ステップ(2):シャドーイング中、印の所でしっかり息を吸うようにする
- ステップ(3):次の息継ぎポイントまで、息を吐きっぱなしで発音していく
以下、具体例を交えつつ見て行きます。
ステップ(1):事前に息継ぎポイントをチェック
たとえば、以下の0:00〜0:33までの英文で見てみましょう。
スピーカーが息を吸っている箇所に印をすると、以下のようになります。
(▼ → 深く吸うところ、▽ → やや浅く吸うところ)
呼吸ポイントの判断方法
イヤホンで聴くと、上記の位置で「スピーカーが息を吸い込んでいる音」が聞こえます。
英語はしっかり深く息を吸うので、お手持ちの音源でも聞こえるはずです。
また「意味のかたまりの境目」もブレスが来やすいポイントです(Brown, 1990)。
たとえば、「1文の始まり/終わり」は、当然意味の区切りになるため、深いブレスが来ます(上記▼は、すべてそうなっています)。
また文中でも、「句の境目」は意味の境目となり、よくブレスが来ます。以下の通りです。
・新しい修飾句が始まる箇所 → ▽to consider moving into…
・1つの修飾句が終わる箇所 → At the same time,▽
・長い名詞句のお尻 → India’s huge population of young people▽
ステップ(2):印でしっかり息を吸う
位置をチェックしたら、印入りのスクリプトを使って、実際にシャドーイングをして行きます。
特に▼では、普段日本語をしゃべる時よりもしっかりと息を吸いましょう。
(吸うときの音が自分でも聞こえるくらいしっかり吸いましょう。)
前かがみだとお腹まで息が入りにくいので、ある程度姿勢を正し、体をリラックスさせてやってみり合う良いと思います。
ステップ(3):次の息継ぎまでは吐きっぱなしで発音
たっぷり吸い込んだら、「次の息継ぎポイントまでは基本息を吐きっぱなし」で発音して行きます。
途中で小刻みに息継ぎはせず、「はじめにしっかり吸う → 次の息継ぎポイントまで吐き続ける」というように発音して行きましょう。
以下のようなイメージです。
(オレンジ色は、体内の呼気の量を表しています。)
上記のようなステップで、シャドーイングの中での息継ぎに慣れて行きましょう。
対処法②:効率的な発音(音声変化)を身につける
あとは、音源のスピードに負けず、しっかり息継できる時間を確保することが大切です。
シャドーイング中、特に「遅れてしまう…」という箇所については、ネイティブの省エネ発音による「音声変化」が関わっている場合が多いです。
実際のネイティブよりも、余分な音を出したり、長く発音してしまっていないかをチェックし、自身の発音を修正していくようにしましょう。
朗報:音声変化にはパターンがある
なお、音声変化がどんな時に起きるか、どのような音に変わるかという点は、ある程度決まっています。そのため、一度慣れれば、だいたいどんな変化が起きているか当てをつけられるようになります。
パターンについては以下の記事でまとめていますので、ご覧になってみてください。
英語の音声変化:6つまとめ【生じるときのルール + 例つき】
英語の音声変化には、どんなものがあるのでしょうか?本記事では、6つの音声変化(連結・同化・脱落・弱形・弾音化・声門閉鎖化)がそれぞれどんなものか、どんなときに生じるかというルールまで、例とともに解説。ナチュラルな英語の発話を聞き取りたい、自分でも話したいという方は必見です。
また、音声変化には「英語のリズム」の問題も深く関わっています。
このリズムについても、実はパターン化が可能です。
リズムがしっかりしてくると、発話のペースも作りやすくるため、こちらも合わせてご覧になってみてください。
英語の強弱リズムをつくる3つのルール
英語の強弱のリズムってどうなってるの?何かルールはある?と疑問の方向けです。本記事では、英語の強弱リズムをつくるポイントを、3つのルールにまとめて解説しています。リスニングでの聴きやすさ、スピーキングでの理解されやすい発音を身につけて行きたい方にとって、このリズムのルールは必見です。
対処法③:ある程度は回数を繰り返す
さて最後は、聞いた音を考えずともスピーディーにパッと口にできるよう「自動化」を進めることが、ポイントになります。
そのためには、ある程度の「反復練習」を積んで行くしかありません。
» 参考:シャドーイングは同じ文章をやり込むべき?
ですが「音をしっかり聞き、それを口にする」ということを繰り返していると、少しずつスピードについていけるようにもなって来ます。
スピードを低倍速に落としたり、短めの英文を使って練習をしてもOKです。
うまく負荷を調整しつつ、少しずつスピーディーに、楽にできるよう自動化して行きましょう。
息継ぎするところでしっかりと息継ぎでき、苦しくならずにシャドーイングをこなせるようになっていくと思います。
まとめ
以上、今回は「シャドーイングで息が苦しいときの原因と対処法」でした。
- 呼吸が浅くなっていないか
- 発音に余分な時間がかかり、息継ぎの時間をロスしていないか
こういった点について、ぜひチェックされてみてください。
おわり
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【参考文献】
Brown, G. 1990. Listening to spoken English. 2nd ed. Essex: Longman Group UK.
長澤邦紘. 1986. 英語スピーチ・コミュニケーションの展開(その1). 『茨城大学教育学部紀要』35, pp.65-80.
李春喜. 2017. 初めての英語発音指導. 『関西大学外国語学部紀要』16, pp.61-75.