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文字を見てシャドーイングしてもいいの?【文字=悪ではない話】

シャドーイング

Illustration by Dmitry Nikulnikov from Icons8

シャドーイングって「文字を見ながら」やってもいいの?
何も見ないと難しかったりするし…
でも「文字スクリプトは見ないでやった方がいい」というのも聞く。
どうしたらいい?

今日はこんな疑問に答えます。

シャドーイングは、主に「音声の知覚力」を鍛えるための練習です。
そのため、基本は耳だけを使って英語を口にしていきます。

ですが、慣れていない人にとってシャドーイングは難しいのも事実です。
「できないなぁ..」と困っている人は、補助ツールとして文字スクリプトの利用もぜひ考えてみましょう。

思いのほか練習が上手く回り始めるかもしれません。

本記事では、シャドーイングにおける文字スクリプトの役割と、それを使う際のポイントも解説して行きます。

本記事の内容

  • シャドーイングは文字を見ながらやってもいいの?
  • 文字スクリプトを利用する際の5つのポイント

では行きましょう。

シャドーイングは文字を見ながらやってもいいの?【文字=悪ではない話】

見ながらやってOKです。

耳だけで行うシャドーイングは、なかなか難しいものです。
そう感じている人にとって、文字スクリプトの利用はそこへの良い「橋渡し」になります。

シャドーイングは「音の聴き取り」力をアップする練習

シャドーイングは一言でいうと、「耳を使うことで、耳を鍛えていく」練習法です。
なので、基本的に「文字」を読むことはしません。

モデル音源がスタートしたら、耳だけを頼りに、

音を聞く → どんな音かを脳内で判別する(音声知覚) → それをマネして言う

という一連の処理を、ハイスピードで行っていきます。

こう言ったことを、あらゆる英文で難なくこなせるよう練習して行きます。
それにより、特にリスニングにおける「スピーディーかつ楽に、英語の音声を認識できる力」を身につけていきます。

これを「音声知覚の自動化」と言います(門田, 2015)。

特にこれまで「文字中心」だった人に必要なスキル

文字中心とはつまり「リーディング」です。

これまで「文字を読む」ことが中心で「音を聞く」ことが少なかった方にとっては、シャドーイングは半ば強制的に耳を使い、音声の知覚処理を鍛えていくための良い機会となります。

「文字依存」から脱し、英語を「音として扱えるようにする」ために効果的なトレーニング方法です。

ですが、音に不慣れなほど難易度は高くなります。

シャドーイングは、非常に要求度が高い練習法です。
そのため、「練習自体をうまくこなせないことがある」というのも事実です。

特に音の聞き取りにあまり慣れていない状態で、「スピーディーな音の処理」をド直球で要求するシャドーイングにいきなり取り組むのは、相当チャレンジングなことです。

「聞いた音をマネして行く」と言っても、そもそもどんな英語が発音されているのか聞き取れないし、言えるはずもない…
どんどん英文が流れてきて置いていかれるし…
結局何も言えない箇所が多くて虫食い状態…

こういったこともよく起きてしまいます。

これは、その人の音声知覚がシャドーイングで求められるスピードに追いついておらず、いわば「空回り」してしまっているような状態です。

「音声を知覚する」という行為自体にうまく取り組めていないので、いくら繰り返しても、なかなかその能力が鍛えられて行くことはありません。

挫折してやめてしまう原因にもなってしまいます。

「補助ツール」として役立つ文字スクリプト

そこで「文字を見ながらシャドーイング」の出番です。

メリット①:シャドーイングを遂行しやすい

文字があることで、それまで耳だけだとスルーしてしまっていたような箇所も、適宜文字をヒントに英語を言いやすくなります。

音の処理が心もとなくても、「そこがどんな単語か?」を目でちゃんと確認できるので、それがシャドーイング中のストレス軽減につながります。
途中で止まってしまうことなく、最後までシャドーイングを進めやすくもなります。

このように「一通り最後まで通せる」という状況をつくることは、シャドーイングの第一ステップとして非常に重要です。

何度も繰り返して練習に取り組くめ、その中で少しずつ自分のパフォーマンスを修正して行くことができるからです。
シャドーイングがまったく遂行不可能な状態では、このようなチャンスすら持つことが難しくなります。

では具体的に、自分のパフォーマンスの何を修正して行けばいいのか?

次のメリット②に続きます。

メリット②:「自分の英語音」と「実際の英語音」とのGAPを埋めやすい

文字情報をヒントにすることで、

  • 今何の単語が発音されているのか?
  • それはどんな音で発音されているのか?
  • といったことを掴みながら練習しやすくなります。

    意外と「この単語、自分が思っていた音と違ってた!」というケースは多いです。そしてそれが、シャドーイングを難しくしている根本原因の1つでもあります。

    門田(2015)では以下のように指摘されています。

    • そもそも音を聞いても瞬時に認識できないのは、「自分が知っている英語の音」⇆「実際のネイティブの英語の音」に大きくズレがあるため。
    • このようなズレがあると、「ネイティブの音声」を聞いても、頭の中で「自分の音声知識」と素早くマッチさせることができない。
    • 結果、音の知覚に遅れが生じてしまう。

    上記の通りです。

    音の知覚や認識力を高めるには、まずはこう言ったGAPを潰していくことが大切です。

    ですが、いきなり耳だけで行うシャドーイングでは、そのすり合わせがなかなか難しいものです。

    なので文字もヒントにしつつ、「この単語は、こういう音で発音するのか!」ということを、繰り返しの練習の中でつかんで行くことが重要です。

    「文字を見て自分が思い浮かべる音」と「実際のネイティブの音」があまり違和感なく一致するようになれば、かなりそのGAPも縮まっていることを意味します。

    そこまでになれば、その後スクリプトなしのシャドーイングに入っても、だいぶ取り組みやすくなるはずです。

    結論:文字スクリプト利用は、本格的なシャドーイングへの「橋渡し」として有効です。

    必要に応じて、文字を補助として使って行くことも重要だと思います。

    • ▽ 文字でしか英語を認識できない
    • ▽ 文字もヒントにしつつ、少しずつ耳でも認識できる
    • ▽ 耳だけで認識できる

    上記のように「段階を踏む」ことが大事であり、それを練習の中でいかにつくって行くかが大切です。

    シャドーイングが「できないなぁ…」というとき、難しいことを一足飛びでやろうとしていませんか?

    文字スクリプトも最大限活用しながら、うまくできるようにして行きましょう。

    文字スクリプトを利用する際の5つのポイント

    ここからは、シャドーイングで文字スクリプトを利用するときに意識した方が良いポイントや、注意すべきポイントについて書いて行きます。

    以下の5つです。

    ポイント①:慣れるにつれ「文字を読む」→「音を聞く方」へ意識シフトする。

    文字スクリプトも補助ツールとして積極的に使って行きましょう。

    はじめは「文字を読む」ことが主になってしまうかもしれませんが、それで大丈夫です。
    繰り返す中で、英文のペースを掴んで行きましょう。

    一方で、「耳を使えるようにすること」がシャドーイングの目的でもあります。
    繰り返していると頭に余裕ができてくるはずなので、少しずつ「音を聞く」方にもシフトしていくようにしましょう。

    大まかな練習の進行イメージ

    以下のように、回数を重ねるにつれて、シャドーイング中の意識を向ける先を、「目→耳」へと移して行くようにしましょう。

    • ▽ 第1段階:文字を頼ってシャドーイングする部分が多い。ただし、音を聞いてマネすることも少しは意識する。
    • ▽ 第2段階:慣れるにつれてより聞くことの方に注力。「音を聞いてそれを言える」という部分を増やしていく。
    • ▽ 第3段階:同上
    • ▽ 第4段階:基本は音を聴く方に集中。難しい所だけ、文字スクリプトをチラッと見つつシャドーイング。
    • ▽ 第5段階:完全に耳だけでシャドーイング

    上記の通りです。

    どこの段階に多くの時間を割くかは個人差もあると思います。

    特に音の聞き取りに慣れていない人は、第1〜4段階に多くの時間を割く必要があるでしょう。一方で慣れてくれば、第4, 5段階あたりから練習を開始するということも考えられます。

    また、より細部を詰めるため、その時々で「あえて前の段階に戻る」ということもあるかもしれません。

    状況により様々だと思いますが、大きな方向性としては、「目→耳」へと少しずつ意識の比重を移して行きましょう。

    ポイント②:文字テキストなしになっても、頭の中で文字を読み上げないように。

    なお、段階的に文字を除いていくわけですが、「頭の中に文字を思い浮かべてシャドーイングをしない」ように注意です。

    これだと、実質的には文字を読み上げているのと変わらなくなり、いつまでも音の知覚力は鍛えられて行きません。

    • 頭で文字を思い出す、だから言える → NG
    • 耳で音を拾う、だから言える → OK

    上記の通りです。

    もちろん少しずつで良いので、このようにできる部分を増やして行きましょう。

    はじめは、耳だけに頼るのが心もとなく感じるかもしれませんが、繰り返しているとだんだん慣れて行きます。

    ポイント③:どうしても音が認識できない所は、一度立ち止まって分析してみる

    文字を見ても、音がそれ通りに言っているようにまるで聞こえない..
    ゴチョゴチョっと雑音としてか認識できない。
    etc.

    このような場合は、そもそもネイティブ自体が、そのスペル通りには発音していないケースが考えられます。

    例えば、「a couple of」という表現。

    通常スペル通りに読めば、「 ア カップル オヴ /ə kʌpl ɔv/」のような音になるはずです。
    ですが、実際のネイティブの発音では、よく「ァカプラ /əkʌplə/」のような音になります。

    これは流暢に英語をしゃべる中で、以下のような「音の変化」が起きているからです。

    • coupleのお尻/l/とofの頭の/ə/の音が【連結】し「ラ /lə/」のような音に
    • ofのお尻の/v/は発音されず【脱落】
    • 結果「ァカプラ」のように聞こえる。

    (場合によっては、頭の「a」も落ち「カプラ /kʌplə/」のように聞こえることもあります。)

    このように英語は、「1単語ずつ」で発音するときと、複数の単語を「つならり」で発音するときで音がかなり変わります。

    こういった箇所は、いくら集中して3つの全部の単語を聞き出そうとしてもうまく聞くことはできません。
    (というより、そもそも音自体が発音されていません。)

    このような「音声変化」については、文字を見つつ「どう音が変わっているか?」ということを分析していくことが大切です。

    ただこの辺りの変化は、どんな時に起きるかと言った「パターン」や「ルール」が実は決まっています。

    こう言った知識も用いて、ネイティブがどんな音で発音しているのかをチェックして行きましょう。

    ▽ 分析した音を文字スクリプトに記入する
    ▽ それを見ながらシャドーイングをして慣れていく

    というのが基本的な流れになりますが、分析した音を確実に自分のものにしていく具体的な方法については、以下も合わせて参考いただくと良いと思います。

    ポイント④:どうしても英語のペースについていけないときは「リズム」もチェック。

    文字も見ながら、全部の単語をちゃんと言っていけてはいるけど、どうしても音源のスピードについていけない..

    このような場合は、しっかりと発音しなくても良い単語まで発音してしまい、遅れてしまっている可能性があります。

    このようなことが起きてしまうのは、英語と日本語の「リズム」に以下のような違いがあるためです。

    • 日本語 → 基本、全ての語を均等な強さで言う。
    • 英語 → 意味内容をしっかり持つ語は「強く、たっぷり」発音、それ以外の語は「かなり短く、弱く、ボソッと」言う。

    このあたりも、なかなかモデル音源を聞くだけでは気づきにくいところです。

    こういった「リズム」についても、文字スクリプトありシャドーイングの段階でしっかり確認して行きましょう。
    以下が参考になります。

    ▽ 文字スクリプトを使い、ストレスを置く語にアクセントマークをつける
    ▽ それを目印にしつつシャドーイングでリズムを取るようにする

    このように進めていくと良いです。

    ポイント⑤:その他、文字を入れてもシャドーイングが難しい場合の対処法

    この場合は、他の対策も含めて検討をしましょう。

    スクリプトの英語レベルが合っているか、スピードが速すぎないか等も総合的に考慮して対策していくことが大切です。

    上記のような対策も、シャドーイング練習への「橋渡し」となるものです。

    途中で挫折せずしっかりと成果をあげられるよう、うまく難易度を調整しながら工夫して進めて行きましょう。

    まとめ

    以上、シャドーイングで文字スクリプトを利用するメリットや、利用する際の5つのポイントでした。

    文字スクリプトは、うまく使うことができれば心強いツールです。

    ぜひシャドーイング練習の参考にされてみてください。

    おわり


    ーーー
    【参考文献】
    門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.