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シャドーイングは同じ文章をやり込むべき?【マンネリ防止策も解説】

シャドーイング

シャドーイングは、ある程度同じ文章をやり込んでいった方がいい?
それとも、新しいものにどんどん挑戦して行った方がいいの?

今回はこんな疑問に答えます。

これからシャドーイングに取り組むという方、すでに取り組んでいる方にとっても、上記のような点は疑問に思いやすいポイントだと思います。

まず結論ですが、この問題について私の見解は以下の通りです。

  • 毎回違うものではなく、1つのスクリプトを集中的に取り組む
  • それをある程度スラスラこなせるまで仕上げる
  • そのようなスクリプトを1つずつ増やして行く

このように進めた方が、シャドーイングで期待した効果を得やすいのではないかと思います。

本記事では、なぜ1つずつスクリプトを仕上げるようにした方が良いのか、その理由について解説したいと思います。

また、とは言うものの、

繰り返してたら覚えちゃうし、あまり意味ないのでは?
初めて聞く英文でも聴き取れるようになるの?

といった疑問を感じてしまう人もいらっしゃると思うので、そういった点も合わせて解説します。

反復練習がマンネリ化してしまわないよう、どのように練習を進めていけば良いかについても見て行きましょう。

本記事の内容

  • シャドーイングは同じ文章をやり込んだ方がいい?
  • 覚えてしまうと意味なくない?
  • 新しい英文でも聞けるようになるの?

なお、私がこれまでに大学院で英語教授法(TESOL)を学び、英語指導にも携わってきました。今回も主観に寄り過ぎないよう学術的な文献も参考にしつつ、また自身の経験も踏まえつつ、私なりの考えを書いて行きたいと思います。

それでは行きましょう。

シャドーイングは同じ文章をやり込んだ方がいい?

繰り返しになりますが、結論としてはYESです。

シャドーイングの目的は、リスニング時の「音の聴き取り」を、スピーディーかつ無意識レベルで処理できるようにして行くことです。
(これは「音声知覚の自動化」と呼ばれ、応用言語学者の門田(2015)によって指摘されています)

この「自動化」を達成するためには、ある程度その脳内処理を「反復して」やり込んでいく必要があるからです。

意識的にその行動を取っているうちは、使い物にならない。

実戦のリスニングに対応するには、とにかく「スピード」が重要です。
次々と耳に入ってくる英文に対し、脳内でどんどん処理をかけて、さばいて行く必要があります。

そのために必要なのが、必要な脳内処理を「自動化する」ということです。

とりわけシャドーイングは、リスニングにおける「音声知覚」を自動化するよう目指すものです。
» 参考:シャドーイングの効果とは?【リスニングにどう効くかも解説】

音声知覚が十分に自動化していない例

例えば、以下のような流れで音声をつかんでいるようなイメージです。

(音が耳に入ってくる)
 /djəspíːkɪŋglɪʃ/
  ▽
(どんな音か少し考える)
「ドャ… スピーキングリッシュ…?」
  ▽
(音を認識)
“Do you speak English” かっ!!

このように「意識的な分析」を挟んで、ようやく何と言ったのかを判別できるような状態です。

これだと、どうしても理解するのに時間がかかってしまいます。
考えているうちに次の文がどんどんと流れてきてしまい、会話のペースにも置いていかれてしまうでしょう。

また、do, youといった機能語は、英語ではかなり短く弱く発音されます(weak form:弱形と呼ばれます)。そのような音は、そもそも「言語音」として認識できず、雑音としてスルーしてしまうということもあるでしょう。

これでは円滑に会話について行くことはできません。

一方、音声知覚が自動化している例

こちらは、以下のような状態です。

/djəspíːkɪŋglɪʃ/ を耳にする
 ▽
“Do you speak English” と即座に認識

上記のようなイメージです。
特に聞いた音について「今なんて言ったんだろう?」と思考を挟むこともなく、「気づいたら勝手にそう認識できている」といった状態です。

普段、我々が日本語を聞いているときも同じような状態だと思います。
よほど聞きなれない方言などでない限り、耳を凝らし分析的に考えなくとも、今相手が何と言ったのか言葉としてすぐに認識できるはずです。

このように「音声知覚が自動化」した状態とは、耳に入ってくる音を言語音として「瞬時に」かつ「無意識的に」認識できるような状態です。

音声知覚が自動化 → より「内容理解」に意識を割ける。

リスニングでやるべきことは、相手が伝えようとしている「意味内容やメッセージをつかむ」ことです。

具体的には、以下のような脳内の認知処理に取り組むことです。

・各単語の意味や文構造パターンを認識し、各文がどういう内容かをつかむ
・それぞれの文どうしの内容が、互いにどうつながっているのかをつかむ
・さらに次に来そうな文の内容や情報も予測していく
etc.

うまく意味内容を理解するためには、上記のようなことに意識を集中させることが必須です。

もちろんこれらは、音の聴き取り(音声知覚)が土台となっています。
瞬時に音を聴き取れないことには、そこからスムーズに意味理解につなげていくことはできません。

ですがリスニング中、音の聴き取りに一生懸命になり過ぎ、内容理解の方にほとんど意識を集中できないような状態では、うまくコミュニケーションを成り立たせることはできません。

ここに「自動化」の意味アリです。

リスニングの最初の入り口となる「音声知覚」については、無意識レベルでこなせるほどに自動化することで、ようやく相手が伝えようとしている「メッセージ内容」の方に集中することができます。

これについて応用言語学者のJohnson(2008, p. 103)は、以下のように表現しています。

The role of automatization […] is […] to free valuable channel capacity for those more important tasks which require it.

訳:自動化の役割は、脳内の貴重な容量を、それを必要とするより重要なタスクのために解放することだ。

ここで言う「より重要なタスク」とは、リスニングにおける「内容理解」に相当します。

シャドーイングは、音声知覚の自動化に効く練習法です。
それにより、リスニング中より多くの脳のリソースを、内容理解の方に割けるようにするための練習です。

自動化するにはどうしたらいいのか?

結論「反復練習」です。

身につけたい行為や行動を、意識せずとも身体が勝手に動いてくれるようになるほど、繰り返し練習していくことです。

スポーツの練習や楽器の演奏、車の運転など、あるスキルを身につける時には、必ずと言っていいほど「反復」という側面が含まれています。

野球であれば、バットを1回振っただけで練習を終えることはないでしょう。
車の教習でも、決められたコースを何度もグルグルと何度も回るはずであり、必要な運転スキルを身につけて行くはずです。

シャドーイングもそれと同じです。

その英文スクリプトに含まれる、英語のリズムや音の変化などにも注目し、

音を耳にする → それがどんな音か認識(音声知覚) → 口にする

ということを、1回だけではなく、何度も反復して取り組むことが重要です。

それによって、一連の処理サイクルが徐々に自動化していきます。

毎回のスクリプトを、ある程度スラスラこなせるまで仕上げる。

シャドーイングは、「音を聴く、それを自分の口でも言う」というマルチタスクです。
その上どんどんと英語も流れてくるため、待ったなしで「聴く→言う」を回し続けないといけません。

それによって、脳には大きな負荷がかかり、特に最初はついて行くのが相当しんどくなると思います。

ですが、この負荷が重要です。

認知負荷の高い処理に何度も取り組むことで、頭がその処理に少しずつ慣れて行きます。

楽にこなせるスクリプトを1個ずつ増やしていく。

負荷がかかる大変なシャドーイング → 反復練習で自動化 → 楽にこなせるように

毎回のスクリプトをこのように仕上げ、1個ずつ積み上げて行くことが重要です。

あらゆる英文で「聴く→音声知覚→言う」という行為をほとんど負荷も感じないくらいこなせるほどになれば、いざ本番のリスニングでもパッと脳が音声を認識できるようになっていきます。

シャドーイングにおいて、このような「反復練習」は上達に欠かせないプロセスと言えます。

よくある疑問①:覚えてしまうと意味なくない?

ここまで「反復練習が大事」と書いて来ました。
ここからは、同じ文章を取り組んでいるときに陥りやすい問題や、よく起こる疑問点について書いて行きたいと思います。

Q. 繰り返していたら内容も覚えちゃうし、、覚えたものを何回も言っても
意味なくない?

まずはこういった疑問です。

結論として、こういった直感は正しいと思います。
覚えたものを頼りにシャドーイングをしても、あまり効果は期待できません。

理由は、覚えて英語を上手く言えたとしても、シャドーイングを通して身につけたい「音声知覚」を行った結果として上手く言えているわけではないからです。

英文を覚える → 何となく言うことはできる。

シャドーイングで、何度も同じ文章を繰り返していると、

・実は音を知覚してない
・けど、どんな英文か知ってるから言える

ということが、起きやすくなってしまいます。

たとえば、先ほどの /djəspíːkɪŋglɪʃ/ の聴き取りの例で見てみましょう。

さっきも触れたように、doやyouといった「機能語」は、弱形としてかなり弱く短く読まれます。そのため、

… speak English

のように、雑音として耳が処理できずスルーしてしまう場合があります。

また後半の部分も、実はリエゾン(連結)を起こして、

/spíːŋglɪʃ/
(スピーングリッシュ)

のように実際は発音されているにも関わらず、その連結音 /kɪ/ の部分を音として認識できていない場合があります。

ですが、もし暗記に頼ってしまうと、こういった実は知覚できてない音の部分も、記憶で補い “do you speak English” という英語を言えてしまう場合があります。
(と同時に、多くの場合は上記のような弱形や連結は無視された、自分独自の発音になってしまっていると思います)

一応一通り英文を口から出せてはいるため、練習をうまくこなせているようには見えます。

耳を使うからこそ、耳が鍛えられる。

ですが、上記のような方法では「音声知覚力」をなかなか鍛えることができません。

「音声知覚」を鍛えるには、「音声を知覚する」という行為自体をしっかり実行して取り組む必要があるからです。

なのでシャドーイングでは、

音を耳にする → それがどんな音か認識(音声知覚) → 口にする

ということを、暗記によってショートカットすることなくしっかり取り組んで行く必要があります。

だからこそ、脳に意図した認知的な負荷がしっかりとかかり、反復することで、その処理力が鍛えられていきます。

私たちは、実際に「やったこと、処理したこと」を学習します。[中略]「やっていないこと、処理していないこと」は、学習も記憶形成もできません。

(門田, 2012, p. 318)

シャドーイングの鉄則

  • どんな英文か覚えているから、自分の口で言える → NG
  • きちんと音を聴いたから、自分の口で言える → OK

上記のように、とにかくシャドーイングでは「音を聴く」ことを最優先に練習することが大切です。

もちろん、同じ文章を繰り返すことで、ある程度は自然に英文を覚えてしまうことは問題ありません。

ですがあくまでも、「耳を使う→それを音マネして行く」ということを前提に取り組むことが大切です。

よくある疑問②:新しい英文にチャレンジして聞けるようになるの?

疑問の2つ目です。

結論はYESです。

ただし、以下のような条件付きです。

毎回のスクリプトで「将来、他の英文に触れたときでも必要になるであろう音声知覚処理」をしっかり自動化していくことができた場合。

上記の通りです。

想像してもお分かりの通り、学習目的でない限り、全く同じ英文を再度耳にする機会はほとんどありません。
(だからこそ、やはり英文を丸々覚えてしまうのは意味がありません)

大事なポイントは、

毎回の英文スクリプトから、「あらゆる英文に共通している音声的な特徴」を身につけていく

ということです。

たとえば以下のようなものです。

  • 音声変化:単語どうしの音がつながってしまう「リエゾン」や、あるべき音が消えてしまう「省略・脱落」など
  • リズム:それぞれの内容語〜内容語の間隔はだいたい等しくなる。一方、その間に来る機能語は短く弱く発音されるなど
  • イントネーション:一文の終わりでは語尾が下がる、疑問文は語尾が上がるなど
  • 意味の切れ目には、よくちょっとした間が置かれる

こういった音声的な特徴は、どんな英文でも必ずと言っていいほど頻発するものです。

毎回の英文スクリプトで、こういった「英語に広く共通する音声特徴」もしっかりと耳で捉えて行きましょう。

音をうまく認識できない箇所を1個ずつ潰して行く。

上手く聴き取れない箇所は、「自分が記憶している英語音」と「実際にネイティブが言っている音」の間にGPAがある場合が多いです。
さっき触れたような、音声変化や英語のリズムが、まだしっかりと身についていない可能性があります。

原因の特定、またネイティブはどう言っているのかしっかり音を聴いて分析もし、その後、自分でも同じように口でスラスラと言えるよう、自動化していきましょう。

それによって、新たに触れる英文にも威力を発揮してくれる、汎用的な知覚スキルが積み上がって行きます。

その場限りのスキルの積み上げにならないよう、以上のようなポイントを反復練習を通して自動化していきましょう。

さいごに

以上、今回は、シャドーイングで同じ文章に取り組む意味についてでした。

練習時の参考になれば幸いです。

おわり


ーーー
【参考文献】
Johnson, K. 2008. An introduction to foreign language learning and teaching. 2nd ed. Edinburgh: Person Education Limited.

門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.