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シャドーイングのリスニングへの効果とは?

シャドーイング

「シャドーイングってどんな効果があるの?」
「聴いた英語をくり返すことに一体何の意味があるの?」

今日はこんな疑問に答えます。

この記事を読むことで、シャドーイングが持つ効果を詳しく理解することができます。

本記事の内容

  • シャドーイングとは何か?
  • シャドーイングの効果とは?
  • リスニングにどう効くのか?

この練習が狙っている効果の範囲をしっかりとおさえ、より根拠と自信を持って学習を進めていけるようにしましょう。

では行きましょう。

シャドーイングとは?

まず、そもそもシャドーイングとは何かについてです。

シャドーイング = モデルとなる英語の音声を聴き、それを2, 3語程度遅らせてモデルとまったく同じように復唱していくという練習法。

上記の通りです。

可視化すると、イメージは以下のようになります。

上記のように、遅らせて復唱していく中で、

・各単語の発音
・イントネーション
・意味の切れ目で挟まれる間合い
・リエゾンなど音声変化
etc.

なども含め、聴いた音を真似するつもりで口にして行きます。

このようなことが、同じスクリプトである程度楽にこなせるようになるまで、くり返し練習して行きます。

ではこのようなことをすることで、一体どんな効果があるのでしょうか?

シャドーイングってどんな効果があるの?

シャドーイングは、リスニングにおける「音を聴き取る能力」を鍛えるのに効果的です。

特にリスニングで、

「耳にしてすぐどんな語が使われているか分からない」
「耳にした英語が音のかたまりにしか聞こえない」
「音のことを考えているうちに置いていかれる」
etc.

といった状況や課題を解決するための、有効な1つの練習法です。

リスニングで、耳が音をキャッチしてから単語をすぐクリアに認識できるようになる、しかも、意識的に考えなくても自動的にそれをできるという状態を目指すための練習です。

どういうことか、詳しく解説します。

シャドーイングの効果:音声知覚の自動化

(※「音声知覚の自動化」は、シャドーイングの大きなメリットの1つとして門田(2015)によって著書の中で紹介されています。以下はそちらを参考にしています。)

シャドーイングは、リスニングにおける音の聴き取り、つまり「音声の知覚力」を向上させるものです。また練習を通して、時間をかけてではなく「スピーディーに」かつ「無意識的に」できるようになることを目指す練習法です。

なぜこのような効果が期待できるのでしょうか?

理由は、シャドーイングが、音声面「だけ」に学習者の神経を集中させ、音声処理にひたすら取り組ませるような練習だからです。

シャドーイング = あえて学習者を「音」に集中させる方法。

例えば、シャドーイングをする場合と、普通にリスニングで英文を聴く場合を考えてみましょう。

普通にリスニングするときは、その意味内容まで考えが及びやすいと思います。ですが、聴き取った音をすかさず繰り返さないといけないシャドーイングでは、音を意識することで精一杯になると思います。

これはシャドーイングが、「聴いた音をすかさず言い続けないといけない」ということを学習者に要求するものであり、学習者は音を聴くことに集中してないとついていくことができないからです。

音を聴くことに集中するということは、脳が「音声的な処理に集中的に取り組む」ということです。

負荷をかける × 繰り返す = スキルの自動化

特にはじめは、シャドーイングを実践するのは非常に大変です。

これは実際に聴いた英語の音と、頭にストックされている発音や音声に関する情報にギャップがあるためです。

人は聴いた音を自分の脳内の音声情報と照合することで認識しています。ですがもしそこにズレがあれば、その分照合に時間がかかります。シャドーイングでは、短時間でそのような脳内操作を繰り返していかないといけないので、頭にも負荷がかかりクタクタになります。

ですが、この「負荷」が大切です。

まだあまり慣れていない音声処理でも、それを何度も繰り返すことで、脳内の音声知識がネイティブに近いものに少しずつ書き換えられて行き、聴いた音をスピーディーにかつ無意識的に処理できるようになっていきます。筋トレで負荷をかけたままでその行為を繰り返していると、徐々に楽にこなせるようになって行くのと同じです。

このプロセスが「自動化」です。

音声知覚が十分自動化できると、英語を耳にしてから特に意識を割かなくても、脳が自動的にその音声処理を行い素早く英語の音を認識できるようになります。

シャドーイング中、意味内容を考えなくて良いの?

シャドーイングは音声に集中する練習、それによって自動化を促す練習とわかりました。

ですがシャドーイング中、例えば単語の意味や文構造、文の意味内容などについては考えなくていいのでしょうか?

このような疑問は、過去に私自身も持ったことがあります。

結論としては、それで大丈夫です。

理由は、意味内容まで「理解」しようとすると、純粋に聴いた音をそのまま口にするのではなく、聴けなかった箇所も頭の中で補い何となくで発音を行ってしまうからです。

例えば、以下のような文をシャドーイングするとしましょう。

He didn’t gave … enough money.

(↑「…」はうまく聴き取れなかった部分です)

もし内容理解に多く依存してシャドーイングをしていると、前後の文脈(直前に話題に上がっている人は誰かなど)から、「…」がmeなのか、herなのか、usなのか、himなのか等を判断できてしまい言えてしまう可能性があります。

もしくは「…」のままでも、ひとまず全体の意味的には理解できているのでそのまま気にせずスルーして進んでしまう、ということも起こるかもしれません。

仮にherと予想で補って言えたとして、それが正解だったとしても、それは聴き取った音を頭で処理して言えているわけではありません。

「耳を使わずして、耳が鍛えられることはない」ということです。

練習だからこそ、推測には頼らない。

もちろん、実戦のリスニングでは、意志の疎通ができることが第一です。

上記のような推測や予測力も使いながら、音の聴き取りが不十分だった部分も頭の中で補い、相手の伝えたいことを効果的に理解していくことが大事です。

ですが少なくとも訓練の段階では、しっかり音を聴きとるということを意識的に行い、それによって音声知覚の処理力の底上げをしておくことが重要です。

そうでないと、いつまでも実践で多くを推測に頼る聴き方しかできないようになってしまいます。

シャドーイングで、音声知覚に頭の基本モードをセット。

このように、シャドーイングで鍛えたい第一ターゲットとなる目玉のスキルは「内容を理解する」ことではありません。

むしろ内容理解を積極的にしようとはしないからこそ、音を「ありのまま」しっかり聴こうとして良いのです。

リスニングでは、不十分な音声知覚を理解段階が補うことができる [中略] しかし、いつもこのような理解段階からの補償機能に頼っていたのでは、いつまでたっても知覚段階自体が鍛えられないで訓練されないままになってしまいます。シャドーイングでは、特に知覚処理過程に対する大きな負荷のおかげで、常に知覚処理にスイッチを合わせておく必要があり、その分音声知覚自体を鍛えることが可能になるのです。

(門田, 2015, pp. 88-89)

このように、シャドーイングは、

  • 学習者に聴いた音をすかさず復唱させるタスク
  • それによって、音声知覚面に学習者の注意を向けさせる
  • 音声処理に集中し何度も取り組むことで、音声知覚が自動化する

という練習法であり、聴いた音を瞬時に、かつ無意識的に認識できるようにしていくための練習法です。

シャドーイングはリスニングにどのように効くのか?

もう少し視野を広げて、シャドーイングがリスニング力のアップにどのように影響を及ぼしていくのかを見ておきましょう。

まず全体像として、リスニングというプロセスは以下のように進んで行きます。

上記のように、「リスニングスキル」と一言でいっても、

  • 音を知覚する段階(音声知覚)
  • そこからメッセージ内容を理解する段階(内容理解)

の大きく2つに分けられます。

では、この中でシャドーイング練習はどこに効き目があるのでしょうか。

ここまでの内容でお分かりだと思いますが、「内容理解」の手前に当たる「音声知覚」に主に働きかけます。

シャドーイングは、音声に対して基本の処理モードをセットし、音声処理をメインに取り組む練習のため、そこが鍛える第一ターゲットとなります。

ではここが鍛えられると、リスニング全体としてはどのような良い影響があるのでしょうか?

音声知覚の自動化により、より内容理解に集中が可能

シャドーイングをしっかり取り組むことによって、リスニング中純粋に文章の内容理解の方に集中しやすくなる、というメリットがあります。

シャドーイングを通して音声知覚をしっかり自動化することで、音の聴き分けに余分な意識が取られることが少なくなり、その分を「内容理解」の方に意識を向けやすくなるからです。

例えばリスニング中、聞いた音についていちいち「今なんて言った?」と神経を使って考えていては、内容の理解どころではないと思います。そうこうしているうちに英語は次々流れていってしまい、コミュニケーションにはなりません。

これは音声知覚の方ばかりに、脳内のワーキングメモリーが割かれてしまうことで起きる現象です。

ですがもし音声知覚が自動化し、耳が難なく音を拾い、無意識的に音の認識ができるようになれば、今聴いている目の前の文の意味合いやメッセージ内容を理解する方に、より意識を向けやすくなります。

また場合によっては、次に話される内容まで予測して備える余裕もでき、結果、全体としてリスニングがうまく回りやすくなります。

シャドーイング「だけ」では不十分?(※あえての注意喚起です)

上記のようにシャドーイングは、「理解」にも間接的に良い影響を与えてくれます。

ただし、やはりシャドーイングが第一ターゲットとして直接働きかけるのは、音声知覚のスキルです。総合的なリスニング力を鍛えるには、別途「理解」を促すための訓練をすることが妥当ではないかと思います。

もちろんこれは程度の問題でもあり、シャドーイング中、音だけに集中しているつもりでも、語彙・文法・意味的な処理にも取り組んで鍛えている可能性はあります。

ですが「内容理解」もしっかり鍛えていくには、やはりそこにフォーカスした練習も別途取り組んでいく必要があると思います。

例えば、もしシャドーイングと関連した方法であれば、内容の理解にも一緒に取り組む「コンテンツシャドーイング」(門田, 2015, pp.248-249)、もしくは、内容をしっかり理解しながら行っていく「音読」なども候補としてあげられます。

これらに適切な方法で取り組めることができれば、音声知覚面だけではなく、語彙や文法、意味的な処理面まで鍛え、全体的なリスニングの底上げにつながる可能性があります。

  • 今取り組んでいる練習がどこを鍛えるものなのか
  • 何を強みとしているのか

を把握し、バランスよくそれぞれの練習を取り入れ、全体のスキルを伸ばしてしくと言うことが大事です。

まとめ

以上、今回はシャドーイングの効果やメリットについてでした。

英語の「スキル」、リスニングの「スキル」と一言でいっても、それらは小さなスキルから成り立っている「組み合わせのスキル “Combinational skill” 」です(Johnson, 1996)。

今取り組んでいる練習がどこを鍛えるものなのかを考えつつ、バランス良くトレーニングをして行くことが大切です。

各トレーニングがどこに働きかけるものなのかを理解し、適切に学習を組み立てて行きましょう。

なお、シャドーイングの基本的なやり方については以下にまとめていますので、ご覧ください。


おわり


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【参考文献】
Johnson, K. 1996. Language teaching and skill learning. Oxford: Blackwell.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.