シャドーイングの声の大きさの使い分け【マンブリングのススメ】

Q. 「シャドーイングで声の大きさを変えるとどんな良いことがあるの?練習でどのように使い分けていけばいい?」
今回はこのような内容について見ていきましょう。
シャドーイングは、はっきりと声を出しながら行っていくのが一般的なやり方だと思います。ですが声の大きさを少し工夫することで、学習がより効果的になるかもしれません。
本記事では、そういった声の大きさの使い分けについて見てみましょう。
もくじ
- 小さい声のシャドーイングのメリット
- 通常の声のシャドーイングのメリット
- 実際の練習での声の大きさの使い分け
順に見ていきましょう。
小さい声のシャドーイング(マンブリング)のメリット

小さい声で行うシャドーイングは、「マンブリング」と呼ばれることがあります。
(mumble = 「つぶやく」「ぶつぶつ言う」といった意味です。)
マンブリングはどういった点で有効なのでしょうか?
私は「モデル音を聞くことに取り組みやすくなる」という点が、マンブリングの大きなメリットの1つではないかと思います。
どういうことか、詳しく見ていきましょう。
シャドーイングはマルチタスク
シャドーイング中はとにかく忙しくて大変です。
たとえば以下のように、複数のことを同時にこなしていかないといけません。
- モデル音を聞き続ける
- それを自分の口でも言う
- モデル音どおりに言えているか自分の発音をチェックする
このようなことを同時に、しかもタイムプレッシャーがある中でこなしていかなければいけません。
とくに練習の初期では、上記のような1つ1つ動作がまだあまりうまくスムーズにできません。慣れない動作というのは、きちんとこなそうと思うと多くの集中力や注意を要してしまいます。
そのため、シャドーイング中は脳がすぐに容量オーバーになってしまいがちです。
- 音を聞くことに集中していたら、自分の発音がうまくできない…
- 自分の発音に一生懸命になっていると、今度は音を聞き取れない…
- 音を聞くことも自分の発音も両方意識しようとすると、シャドーイング自体が続けられない… など
たとえばこういったこともよく起きてしまいます。
こういった症状もある一定の範囲なら良いのですが、できない箇所があまりに多かったり、まったく改善の兆しも見えないとなると、なかなか良い練習にはなっていかないでしょう。
そこでマンブリングです
そこで1つの工夫として、試しにぶつぶつと、ささやき程度に自分の声の大きさを抑えてシャドーイングしてみましょう。そうすると普通にシャドーイングしているときよりも、
・自分の発音の正しさ
といったことに、気を取られにくくなるのではないかと思います。
つまり「自分の発音については一旦あえて度外視し、音を聞くことだけに集中する」というようにします。
自分の口ではクリアに発音できていなくても構いません。その分音を聞く方に集中でき、「モデルスピーカーがどんな音で言っているのか」をより認識しやすくなるのではないかと思います。
自分の発した声でモデル音の聞き取りが邪魔される、といったことも少なくなるでしょう。
まずは「音を聞く」ことを大切に
そもそもシャドーイングの目的の1つとして、「リスニングにおける音声知覚力を鍛える」ということがあります。
このような動作に何度も取り組んでいくことで、音声を素早く認識する力(音声知覚)が鍛えられていくと考えられています。
» 参考:シャドーイングの効果とは?
ですが「音を耳にする → それがどんな音か認識する」という部分を抜かしてしまうと、その効果もあまり期待できなくなってしまうでしょう。やはり音をきちんと聞きそれを頭の中で処理するからこそ、音の知識が記憶されたり、音を知覚する処理力が鍛えられていくと考えられるためです。
そのためシャドーイングでは、モデル音がどんな音で言ったのかを耳で感じ取りつつ、それを自分でもマネしながら言ってくことが大切です。
ただいきなりそれが難しい場合は、マンブリングのような方法で、「まずは音を聞くことに集中する」ということも有効ではないかと思います。
通常の声のシャドーイングのメリット

一方マンブリングと比べ、こちらは以下のような点でメリットがあると思います。
- 英語の口の動きを鍛えられる
- 言えた or 言えないの判定がしやすい
英語の口の動きを鍛えられる
通常のシャドーイングでは、ある程度の声の大きさで、ハッキリと発音もしていきます。
発音に必要な口や舌の筋肉を動かすことになり、より発音のための動作が鍛えられていきやすいでしょう。
このあたりは、やはりブツブツとつぶやくだけのマンブリングだけでは、なかなか効果を期待しずらい所ではないかと思います。
言えた or 言えないの判定がしやすい
また、通常どおりの声の大きさでシャドーイングすると、自分の口から出された音は再度自分の耳に届き、それをまた自分で聞くことになります。
そのため、自分が正しく発音できているかどうかを判別しやすくなるでしょう。
マンブリングと比べ、自分の発音がモデル音のそれと近いかどうかを判断しやすく、より自分の発音を修正しやすいのではないかと思います。
実際のシャドーイングでの声の大きさの使い分け
ここまで「小さい声のシャドーイング(マンブリング)」と「通常の声のシャドーイング」のメリットをそれぞれ見てきました。
では練習の中で、これら2つのシャドーイングをどのように使い分けていけばいいのでしょうか?
いろいろとパターンはあると思いますが、ここでは例として以下の2つの場合を見てみましょう。
パターン①:先にマンブリングで慣れる → 通常のシャドーイングへ
まずは通常のシャドーイングに入る前に、マンブリングを入れるパターンです。
とくに新しい英文スクリプトにトライするときなどに、本格的なシャドーイング前の予備練習として使うと良いと思います。
マンブリングに取り組みつつ、まずはモデル音を聞くことに主に集中しましょう。
回を重ねていくとある程度音のパターンにも慣れてくると思います。
そうしたら少しずつ自分の口を大きく動かし、声の大きさも上げていくようにしてみましょう。
このときも、できるだけモデルスピーカーの発音を聞くことを大切にします。回を重ねながら少しずつで良いので、自分の口でもクリアに、そしてモデル音と同じ音で発音できるようにしていきましょう。
一気に自身のキャパを越えない
シャドーイングは難しい練習法のため、途中で挫折しないためにも、うまく難易度を調節しながら進めていくことが鍵になります。
マンブリングはその方法の1つですが、もし難しいと感じるときには積極的にレベルを調整しながら練習するようにしましょう。
» 参考:シャドーイングが難しくてできない理由と対処法
パターン②:通常のシャドーイング中、「音を聞けていない..」と思ったときにマンブリング
シャドーイングをしていると、つい言うことに一生懸命になり過ぎて、実は音をあまり聞けていない、といったことがよくあります。「音を聞きつづける」というのも意外と難しいものです。
そのように感じたら、マンブリングを試してみましょう。
ひとまず自分の声はぶつぶつ程度におさえてみます。その上で、いま一度モデル音を細部まで聞くことを意識してみましょう。
より余裕を持ちながら、音を耳から受け入れやすくなるのではないかと思います。
「この語はこんな音で発音されていたんだ!」「今までここを耳でとらえられてなかったな…」などといった、新たな気づきもあるのではないかと思います。そういった音も耳で拾いつつ、マンブリングをくり返していきましょう。
そのようにして慣れてきたら、また少しずつ自分の声の音量も上げて行くようにします。最終的にはできるだけ聞き取ったのと同じ音で、自分の口でも言えるようにしていきましょう。
それでも聞き取れない音が出てきたら
マンブリングで音を聞くことに注力してもなお、聞き取れない箇所が出てくるかもしれません。
「知っている単語が並んでいるはずなのに、モデルスピーカーがどんな音で発音しているのかわからないし、自分でもうまく言えない…」といったことがよくあります。
このような箇所は、モデルスピーカーが実際に発している英語の音と、自分が想定している英語の音との間にずれがあることが原因になっているかもしれません。
その場合、ただモデル音を聞いているだけでは克服しづらい場合もあるため、モデルスピーカーの発音を細かく分析しつつ練習していくことが大切です。これについては、シャドーイングの精度を上げていく方法【5つのステップで解説】も参考ください。
まとめ
今回はシャドーイングにおける声の大きさの使い分けについてでした。
いろいろなパターンを試しつつ、自分に合う効果的なシャドーイング法を見つけていきましょう。
おわり