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英語音読で難しい文を避けた方が良い理由【英文の選び方も解説】

音読

「英語の音読は、難しい文で練習しない方が良いと聞いた。」
「なんで難しい文は避けた方が良いの?」
「具体的な英文の選び方についても知りたい。」

今回はこんな疑問に答えます。

せっかく音読に取り組んでも、英文選びを間違えてうまく練習できなかったり、それでやめてしまうことも多かったりします。

今回は、難し過ぎる英文を避けて音読する重要性と、具体的なスクリプトの選び方についても解説していきたいと思います。

本記事の内容

  • 英語音読では難しい文は避けた方が良い?その理由とは。
  • 英語の音読で使うスクリプトの選び方と学習の進め方

なお、過去に私がイギリスの大学院で英語教授法(TESOL)を学んでいました。今回も主観に寄りすぎないよう、第二言語習得の理論背景などにも触れつつ書いていきたいと思います。

それでは行きましょう。

英語音読では難しい文は避けた方が良い?その理由とは。

音読する英文について、

  • あまり難しいものは使わない
  • 純粋に「理解する」ことに集中できるものを使う

ということは大切です。

また、その理由としては以下のような点があげられます。

音読は、ひたすら入ってくる英文にどんどん脳内処理をかけて理解していく行為です。それを繰り返すことで「理解に必要な脳内処理」を自動化し、英文をスムーズに読み進める感覚を掴んでいくためのもの。いちいち立ち止まって考えないといけないような難しい文では、この自動化やスムーズに理解して行く感覚を養って行くことができないからです。

少し長いですが、上記のようになります。
どういうことか詳しく解説します。

音読の目的 =理解に必要な脳内処理の自動化

音読は非常にシンプルに表すと、

文字知覚 → 脳内処理 → 理解

というサイクルをひたすら回して続けて行くような行為です。

なお、中間にある脳内処理とは、大まかに以下のようなものになります。

それぞれ簡単に説明すると以下の通りです。

文字を知覚
▽ 各単語の意味を想起する(語彙処理)
▽ 単語の並びから文構造パターンを見出す(文法処理)
▽ 1つの節・1文がどんな意味かを見出す(意味処理)
▽ 各文のを関連させ、文章全体の内容や要旨をつかんで行く
理解

(なお、この処理プロセスについては、門田(2015)Grabe(2009)等を参考にしています。より詳しくは、【仕組みから理解】理想の英語リーディング力とは?も参考ください。)

音読では、左→右に読むスピードに負けないよう、このような一連の処理サイクルを瞬時に回していきます。それによって理解に必要な脳内処理をスピーディーかつ無意識にこなせるよう自動化させていくことが狙いです。

これが「英文をスラスラ読める」といった感覚へとつがなっていきます。

難しい文では処理がうまく回らない

 
ですが、英文が難しすぎると、上記のような情報処理サイクルをうまく回すことができません。

ある特定の処理だけに多くの意識を取られてしまい、他の処理が犠牲になってしまうからです。

例えば、音読中、

「えっと、この単語の意味は…」
「ここの文構造は…」

などといちいち考えていては、意味を見出すことも一苦労です。

これは「理解に必要な脳内処理」の、

▽ 語彙処理
▽ 文法処理
ー Stop! ー

という最初の入り口の処理だけで多くのパワーを消費し、そこで止まってしまっているような状態です。

これでは、1文の意味を見出すことさえ時間がかかってしまい、それよりも広い文章全体の流れや内容をつかんで行くということは、さらに困難になってしまいます。

難しい文では、多くの脳内リソースを細部に取られる。

これは、人間が一度に情報処理に使える脳のリソース(ワーキングメモリの容量)が限られているのが原因です。

馴染みのない語彙や文法が多い英文になるほど、いちいち立ち止まって意識的に考えないと意味が取れません。そこに多くのリソースがつぎ込まれてしまい、「1文ずつ意味を取っていくのでやっと…」という余裕のない読みになってしまいます。

また、無理矢理スピーディーに読み進めようとしても、処理が追いつかないので語彙の意味や文構造などは無視してとりあえず声を出して読んでいるだけ、という理解を伴わない読みにもなってしまいます。

音読は精読や英文解釈とは目的が異なる。

音読は、よく受験で扱うような複雑で難解な文を分析して訳していく、いわゆる精読や英文解釈といった勉強とは異なります。

精読や英文解釈は、語彙や文構造的な分析作業を通して「英文の正しい理解方法を知る」ための勉強法です。そこでは、1文ずつじっくりと正確に意味を取って行くことが重視されます。

これに対して音読は、ある程度正しい理解の仕方は知っていることを前提として、それを実戦で役立つよう「スムーズにできるようにして行く」ためのものです。

言語の分析よりも「理解する」という行為そのものに集中し、その行為自体を何度も繰り返すことによって自然にこなせるようにしていくための練習法です。

この意味で音読は、「座学的な勉強」というよりも「実技的な練習」といえます。

音読練習における難易度調節の大切さ

過度に難しくならないようにすることは、その練習で効果を得るためにはとても重要です。

これは英語に限らず、他のスキル習得においても同じです。

例えば、スポーツや楽器の練習で、先生が一気に10個近くのアドバイスや注意ポイントをあげ、「はい、やってみて!」と言ったとします。

おそらくやる方は、一度に意識することが多すぎてキャパオーバーになってしまい、うまくやろうにもぎこちなくなる、もしくはまったくできない、無理にやろうとして間違った型が身についてしまう、結局自分のやり方に戻ってしまうなど、いろいろなことが起きてしまいます。

音読は「理解している感覚」を持てることが一番大事

これは音読の場合も同じです。

声を出して読み進める中で、「理解して読めてる」という感覚をもてることが大切です。

語彙や文構造をいちいち立ち止まって分析しないと分からない英文を音読するのは、未知なギターコードが大量に入っている曲をいきなり丸々演奏させられているようなものです。

これでは音読中、「内容を理解する」ことに集中することはできません。

そして重要なことは、

私たちは、実際に「やったこと、処理したこと」を学習します。[中略] 「やっていないこと、処理していないこと」は、学習も記憶形成もできません。

(門田, 2012, p. 318)

という事実です。

もし音読中、

▽ 語彙処理
▽ 文法処理
ー Stop! ー

という処理に多くの意識を取られ、止まっているようであれば、そこから、

▽ 文単位での意味を掴む
▽ 文章全体での内容を掴む

といった処理ステージへとつないで行く脳の筋力を鍛えることはできません。

これを避けるため「純粋に内容の理解に集中できる英文」を使って音読することで、

文字を知覚
▽ 語彙処理
▽ 文法処理
▽ 1文単位での意味把握
▽ 文章全体での内容や要旨の把握
理解!

という一連の処理をどんどん回して鍛えて行くことが重要です。

そのような練習を繰り返すことで、「文字知覚 → 脳内処理 → 理解」までの流れが、無意識的にこなせるように自動化して行くのです。

音読が意味を持った練習になっていきます。

英語の音読で使うスクリプトの選び方と学習の進め方

では、具体的にどのよにスクリプトを選び、学習を進めて行けばいいのかを見て行きましょう。

大事なポイントをまとめると、以下の通りです。

  • 基本方針:常に「現状のレベルより少しだけ難しい英文」を使って行く
  • 選ぶ規準①:知らない語彙・文法が全体の1割以下
  • 選ぶ規準②:自分に身近なトピックかどうか

順番に解説していきます。

基本方針:常に「現状のレベルより少しだけ難しい英文」を使って行く

音読練習を進める上では、これが基本となります。

より具体的には、音読中、

  • 語彙・文構造など言語面よりも「意味内容」の方にフォーカスして理解できる
  • 仮に理解できない箇所があっても、文脈情報や一般常識的な知識である程度予想がつく

といったものを使うようにしていきます。

「インプット仮説」で知られる研究者のKrashen(1982, p.21)は、上記のような言語素材を “i +1” と表現しました。

“i” とは、その人のその時点でのレベルのことを指します。常にそのときのレベルよりも1段階だけ高いレベル、つまり “i+1” レベルのものに取り組むことが大事ということです。

Krashenは、このようなレベルの “Comprehensible input” 「理解可能なインプット」を大量に処理することが言語習得を促進させるとしており、現在このようなインプットの重要性については、第二言語習得研究の中でも定説となっています(白井, 2008)。

この原則に則り、音読練習は以下のような流れを基本に進めて行くと良いと思います。

  • “i+1” の教材を使って音読を繰り返す
  • スムーズに理解できるまで自動化
  • さらに “+1” の教材を使って音読
  • スムーズに理解できるまで自動化
  • さらに “+1” の教材を使って音読
  • 上記の繰り返し

このように、階段を1段ずつ登る感覚で練習をし、最終的に目指すレベルまで達成することが重要です。

では次に、“i+1” の英文を選ぶ際の基準となるポイントを見ていきましょう。

規準①:知らない語彙・文法が全体の1割以下

1つ目のポイントです。

分からない語彙や複雑な文法が多いものだと、読み進めていても細部の分析に終始してしまい、理解にまで到達できないからです。

なかなかこれまで、英文を左→右にスムーズに理解する感覚を持てていない人は、中学レベルのものから始めていっても全く構いません。まずはこのようなものを使い、「言語的に分析する」のではなく、「自然に左→右に理解していく」という感覚を養っていきましょう。

自然な英文理解を助けるテクニック

また、このように難易度が下がり余裕があるうちに、英語の正しい読み方やテクニックを身につけておくことが重要です。

難しいものになってくると考えることが多くなってしまい、どうしても新しいスキルが入れにくくなるからです。

特に、日本語を介さず、英語を英語の語順で理解して行く」というスキルは、英語のスピーディーな理解のためには必ず必要となります。つまり「直読直解スキル」ですが、このような読み方も、音読の中で意識して取り入れつつ練習していきましょう。

これについては、以下の記事が役に立ちます。
よければ参考ください。

選ぶ規準②:自分に身近なトピックかどうか

自分に身近なトピックかどうかも、音読中の理解度合いに影響します。

人は誰でもこれまで生きてきた経験の中で身につけた、一般常識的な知識や、あるトピックに関する専門知識などを持っています。このような背景知識を「スキーマ」と呼びます(An, 2013)。

特にはじめは、

・自分のとはあまり関係のない分野のもの
・抽象的な哲学や文学、批評的な英文
etc.

は、関連するスキーマを十分に持っておらず、読む最中にそれを援用できないため、内容理解が困難になってしまう場合が多いです。

日常生活と関係があり状況がイメージしやすいもの、自分の興味のあるトピックが良いでしょう。

リスニング用の教材でもOKです。

このようなものは、日常場面を想定している身近なものが多く、リーディングに比べて、語彙・文法も全体的に優しい傾向があります。

まずはこのようなもので、しっかりコアとなる理解スキルを身につけ、自身のレベルが上がるにつれて、リーディング教材に入るのも良いでしょう。

さいごに

以上、音読では難しい文を避けたほうが良い理由と、スクリプトの選び方でした。

なお後半では、

“i+1” で1段ずつ階段を登って行くことが大切

ということについても触れましたが、これは逆に言うと、上達には「ある程度の期間と練習が必要」ということでもあります。

どうしても一定の時間はかかりますが、適切な方法で練習できると、自分ができている感覚も持ちやすく、やっていても楽しいものです。また、そのようなかたちで、無意識的に使えるほどに身につけられた言語知識やスキルは、実際の英語使用の場面で非常に強い味方となります。

焦らず、毎日1歩ずつ、そこを目指していきましょう。

おわり

参考:その他、音読の練習テクニックについて網羅できる記事。


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【参考文献】
An, S. 2013. Schema theory in reading. Theory and Practice in Language Studies, 3 (1), pp.130-134.

Grabe, W. 2009. Reading in a second language: moving from theory to practice. Cambridge: Cambridge University Press.

Krashen, S. D. 1982. Principles and practice in second language acquisition. Oxford: Pergamon Press.

門田修平. 2012. 『シャドーイング・音読と英語習得の科学』 東京:コスモピア.

門田修平. 2015. 『シャドーイング・音読と英語コミュニケーションの科学』 東京:コスモピア.

白井恭弘. 2008. 『外国語学習の科学: 第二言語習得論とは何か』東京:岩波書店.